中堅になって自分主導でやれることが増えてきた
入社後2年ほどヤングアニマル編集部におり、その後LaLa編集部に異動して9年目になります。僕は母や姉の影響で少女まんがをよく読んで育ちました。白泉社の少女まんがの伝統は、少女に「かっこよく生きていい」っていうロールモデルを提示しているところだと思います。読者を勇気づけられるようなことができるのは、白泉社の少女まんが編集者としての面白さです。
中堅になって経験値がたまってきたことで自分主導でやれることが増えたと思います。1つは田中メカ先生と北福佳猫先生のコラボまんがです。ある時、メカ先生からまんが原作をやってみたいと希望がありました。メカ先生の飄々としながらもドラマチックな原作と北福先生のキラキラした作画が融合したら面白いのではないかと思い二人をマッチングしました。お二方を長く担当させていただいて、それぞれの魅力を深く知っていたからこそできたことだと思います。
今作は単純にメカ先生にネームを描いていただき、北福先生に作画だけしていただくわけではなく、私を入れて直接3人で打合せをしながら作っていきました。それぞれアイデアを出し合い、最終的には北福先生が出したアイデアが原型となり、メカ先生がそれを膨らませ『知りたいふたり』という作品になりました。結果とても素晴らしい作品になり、特に後半の見開きはメカ先生のネーム力と北福先生の表現力の化学反応を感じられる名シーンになっていると思います。
“いちゃいちゃ”した電子増刊がヒット
もう一つ中堅になったからこそできたことは電子雑誌「いちゃLaLa」の創刊です。「ときめき」は少女漫画のとても大事な要素だと思います。そこで僕は「ときめき」の中でも特に「いちゃいちゃ」をテーマにした増刊を作ってみたいと考えました。元は「××LaLa」というシリーズ雑誌で「いちゃ」の他にも「BL」や「インモラル」など毎回違う題材を立てようと考えていたのですが、『いちゃLaLa』はとくに反応が良くvol.13まで続けています。
立ち上げ当初、「××LaLa」シリーズ雑誌は新人育成の場にしたい目的もありました。シリアスなテーマしか描いたことがない作家さんに振り切ったラブコメを描いてもらったり、意外な人にBLを描いてもらったりしたら、案外そっちが合うというのは結構あることなんです。作家さんの新たなチャレンジの場としても考えていたのですが、『いちゃLaLa』は本誌で描けない踏み込んだ「いちゃいちゃ」表現を描こうというテーマもあって、本誌で抑えていた描写を描くことで跳ねる作家さんや作品も多かったです。
『いちゃLaLa』掲載作の打ち合わせでは、作家さんに毎話、必ず見せ場を入れることを常々お願いしているのですが、画面でダイレクトにときめけるのって、やはり何らかの接触があって主人公がリアクションをとっている時なんですね。主人公がドキッとしていると、読んでいる方も一緒にときめけるのかなって。本誌で連載している作家さんたちからも、「いちゃいちゃを描きたい」という声が上がってきていますし、電子書店の感想コメントに「イチャラブを読みたくて読んだけど、LaLaらしさもあって良い」とあって、それがすごく嬉しかった。作家さんにとっても読者さんにとってもハッピーな場になっていってほしいです。
いまや僕、LaLa編集部の中で“いちゃいちゃの人”って思われている気がします。「いちゃいちゃ」が描きたかったら、「いちゃいちゃ」の作品を作りたかったら、僕に言ってください(笑)
風通しが良く好きなことができるのが白泉社の魅力
僕は今、LaLa編集部内で最古参から数えて3番目くらい。LaLaの文化の大事なところはしっかり伝えていったり共有していったりしなきゃいけないなと思っています。一方で、若手世代からも教えてもらうことが多いですね。よく最近の流行や若者の文化などについて後輩の社員に聞いたり相談したりしています。最近も後輩から得たアドバイスを基に、作家さんと渋谷に取材に行ってきました。
白泉社の魅力は、仲が良いところ。風通しがいい。他部署の若手同士で飲みに行ったりするし、理解があって話を聞いてくれる上もしっかりいる。『いちゃLaLa』も上が親身に相談に乗ってくれて、背中を押してくれるから作れたと思います。