大野木貴史
デジタル編集室 / 2005年入社


Theme 01
電子まんが雑誌を創刊、
相性の合うチームを組む
「ヤングアニマル」編集部に14年半在籍後、デジタル編集室に異動して電子まんが雑誌「黒蜜」を立ち上げました。紙の雑誌はどんなジャンルのまんがでも売れるチャンスはあるけど、今の電子雑誌は売れるジャンルが明確に決まっているので、ちゃんと狙いを絞って作るのが大事。ドロドロ系やちょっとどす黒い感じのまんがは売れるし、僕自身がヤングアニマル時代にサスペンスやアングラっぽいまんがが好きでよく作っていたこともあって、そこに特化したものをデジタルでも作ろうということで始めました。
電子まんがでは一風変わったお仕事ものや、医者や弁護士など一般の人に馴染みのある専門的なお仕事ものも一定の需要があります。電子まんがでネット炎上の題材をやったら読者との親和性も高いし、スマホやSNSは多くの人に普及していて共通感覚みたいなものがあるので、多少専門的なことをやっても読者は分かってくれるだろうと。それで、ネットトラブル専門の弁護士まんが『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』(原作/左藤真通 作画/富士屋カツヒト 監修/清水陽平)を企画しました。
原作、作画、監修のチームでまんがを作る際に一番大変なのは、どういうチームを組むか。各々のまんがの好みや人柄など、色んな面での相性が合うチームを作る、そういう人を探すのに苦労します。「他人事」チームにはほぼ初手で出会えたので、すごく幸運でした。クオリティやスケジュール、人柄の面で苦労が全くないので、本当に丁寧に1話1話を作るということだけに集中できています。専門的な内容なのでまんが家のお2人はすごい苦労してると思いますが・・・(笑)。読者をハラハラドキドキワクワクさせるように、良い意味で期待を裏切っていけるように作っています。
Theme 02
狙って作って、
狙って当てる
電子まんがは締切やページ数の制限が紙雑誌と比べてだいぶ自由です。制約のプレッシャーが軽いぶんクオリティ重視でいけるというのが、電子雑誌の武器だと思います。紙まんがだと打ち切りラインが1巻、2巻で判断されるけど、電子まんがは話数が貯まってからが売るタイミングなので、30話貯まったタイミングで大きくフェアをかけるなど売り方の違いもあります。
電子まんがは売れるジャンルが明確に決まっているので、そこを外さないことと、話数をしっかり貯めて、営業課や書店さんと連携をとってフェアをしっかり打つことが大事です。狙って作って、狙って当てる。売るための勝ち筋みたいなものがすごくしっかりあるので、それをちゃんと理解した上でそこに乗せて作る。狙っても売れない時もあるというのは紙も電子も一緒ですが、電子まんがの場合は売れる道が限られていて、逆にそれ以外は売れないからそこをやるしかない。割り切ってちゃんとやるっていうことも大事なのかなと思いますね。ただ、電子まんがは何度も施作で売るトライをしやすいというのも魅力です。
電子まんがは売れるジャンルが狭いけど、まだ気づかれていない死角みたいなものを探したい。時代が変わり求められる題材が生まれたらさっと拾い上げて、その題材の肝はどこなのか、どうエンタメと絡めれば面白いのか、そういうのをすぐやるのが電子まんがかなと思っています。
Theme 03
シンプルな動機で
動ける楽しさ
長らくまんが編集をやってきて、自分なりの編集技術に手応え的なものは感じています。せっかく身につけた技術なので人に伝えたいと思い、部の後輩相手や社内の講習会でネーム(まんがの下書き)直しについてなどの講義をしています。僕が思うものだから全員に当てはまるかどうかはわからないけど、何か1つ指針があれば、経験が少ない若い編集者にとって一番不安でエネルギーが要る1歩目も動きやすくなるんじゃないかなと。何より僕がやってみて面白いですし、続けて行こうと思っています。
今のところ将来像は模索中です。編集者に向けたまんが編集メソッドを語るYouTuberになりたいなと思っていたのですが、さっき言った講義を半年続けていたら満足感も出てきて熱が冷めてきました(笑)。40歳で15年以上まんが編集をやっていて、まだ将来像を固めなくてもいいみたいな、そういう会社員ってあんまりいないと思う。エンタメ系の現場っていうのはそういう自由さがありがたいですよね。
20代や30代前半の時は、面白いと思ったものにさっとアプローチしてまんがにできるとか、会いたい人に仕事の口実で会える、会って仕事にできちゃうというのが、めちゃめちゃ強いモチベーションでした。白泉社というのは、好きなことを本当に何でもやらせてくれる会社です。こんなに簡単に企画って通るものなのかってくらい、すごく通ります。シンプルな動機で動けるので、自分の欲求やワクワクに素直な人が来てくれたら、きっと楽しいと思います。

