ヤングアニマル編集部 谷口 貴大
ヤングアニマル編集部 谷口 貴大
作家の一番の理解者でいる「自信」と「責任」

仕事は自分で作る

ずっと音楽をやっていて、他人に何かを伝えることが好きでした。出版も世の中の人々に何かを伝えられる、影響を与えることができる仕事だと思って志望しました。情報誌とか週刊誌ではなく、エンターテインメントの仕事がしたくて、まんがが中心の白泉社に入社。配属されたヤングアニマル編集部はとても自由な雰囲気で、「やりたいことがあれば、自分でやっていい」と。基本は教えてもらいましたが、ある意味放任主義で、自分にとってはすごくやりやすい環境でした。新人の編集部員は先輩の持っている仕事を引き継ぐのが普通ですが、僕はそれが嫌で(笑)、他の人の仕事をもらうのではなく自分でどんどん仕事を作って、物理的に引き継げない方向に持っていこうと。新しい作家さんを探して、自分で新連載を立ち上げようとがんばっていました。

新しい作家を
獲得する秘訣

作家さんを探す方法は主に2通り。1つが新人作家さんの持ち込む作品を見て、アドバイスしながら育てていき、連載に持ち込むやり方です。新人作家さんの持ち込みは毎日のようにあります。いちばん若い編集部員が持ち込みの担当をすることが多いので、新人時代はこのパターンの出会いも多いですね。
もう1つが他誌に描いている作家さんに連絡を取って、「うちで描きませんか」と交渉する方法。お会いして、作家さんにこの編集者とだったら面白いまんがが作れそうだなと思ってもらえたら、第一段階は成功と言えます。
まずは作家さんと会うことが大事なので、入社2年くらいまでは月に2人の新しい作家さんと会うことを自分へのノルマにしていました。作家さんには、作品への愛を盛大に伝えると喜んでくれる方もいれば、逆に引いてしまう方もいて。とにかく経験を重ねながら、作家さんを口説く方法を探っていきました。

編集部の鼻を明かす!?

涼川りん先生も、他社で描いていた作家さんでした。涼川先生は、普通とはちょっと違ったキャラクターを、とてもコミカルに嫌味なく描けるところがすごく魅力的でお声掛けしました。それで「あそびあそばせ」を立ち上げたんですが、最初は編集部内でも面白さがあまり理解されなくて悔しい思いも。でも単行本化されてしばらくして、ある女子高生が「あそびあそばせって漫画が面白すぎてやばい。腹痛い。」ってツイートしたことが大きな転機に。それがその日のうちに7万リツイートされて、あっという間に在庫がなくなり重版がかかることに!ちょうどその頃、アニメ化のお話もいただいて。ほら、このまんがはやっぱり面白いんだ、見たか!って(笑)。自信も持てましたし、正直すごくうれしかったです。

作家の味方は
担当編集者だけ

僕には「作家さんのいちばんの理解者は自分だ」という自負があります。同時にそれは責任でもあります。だからこそ、ぶつかることもたくさんあって。作家さんは当然ながら作品を主観的に見ているもの。僕には編集者としての目と、さらに一読者としての見方があります。違和感を覚えたときは、意見が対立したとしても、はっきり伝えるようにしています。その厳しさも含めて信頼関係。いいまんがが作れればそれでいいと思うので。
ただ、対立することがあったとしても、作家さんの味方は担当編集者だけだとも思っています。だから会社の人は全員敵だ!と思うくらいの気概で仕事しています(笑)。
作家さんの信頼を得るのに必要なのは、「こいつヤバイ奴だ」と思わせることですね。とりあえず記憶に残る。無茶苦茶酒を飲むでもいいですし、べらべらしゃべるでもいいですし、こいつ変だなと思われることを目指してます。

伝統に固執しない
変わっていく

まんが家さんだけでなく、原作者さんとの縁をつなぐのも仕事のひとつ。いま、マンガParkというアプリで配信している「虐殺ハッピーエンド」は原作者の宮月新先生との、前作「シグナル100」に続く2作目のお仕事です。今回は、これまでにないものをやりたいですね、と打ち合わせを始めて、出来上がったのが「虐殺ハッピーエンド」。タイムループ・サスペンスもので、一般的なタイムループってそこから抜け出すには何かいいことをするのが条件になることが多いと思うんですが、この作品は主人公が人を殺さないと同じ日が繰り返され、明日にならないという過激な設定です。アプリのまんがは、雑誌とは求められるものが少し違っていて、エログロ、バイオレンスの方が人気を集め、1話完結型の方が好まれると聞いて。そういうアプリのロジックに合わせて、今までやってこなかったジャンルや作り方を工夫してチャレンジしています。

僕の面白い!が
みんなの面白い!に

僕が面白いと感じたものを、みんなも面白いと思ってくれることがいちばんの喜び。「あそびあそばせ」がアニメ化されるのもいろんな人が面白いと思ってくれた結果です。しかし、アニメ化は1つの目標ですが、ゴールではありません。大事にしたいのは、まんがが売れること。あくまでその手段としてのアニメ化だと思っています。
今の時代、これまでにないまったく新しいものを作るのは難しいと思います。でもサムシングニューは作れる。0から1を作るのは作家さんですが、その1を10にするのが編集の仕事。その方法の1つは、サムシングニューの掛け算・足し算の要素の中に新しい組み合わせを入れることだと思って実践しています。何か1つ、小さなことでも目新しい要素を入れて変えていく。常に何かを変えてやろう!というスタンスでこれからも仕事をしていくつもりです。

就活生へのメッセージ

自己PRは、その先まで考えて

自己PRをするときには、自分が出来ることのアピールだけ、今だけのことに留まらず、白泉社で何ができるのかという、その先まで考えて伝えると説得力が増しますよ。

先輩紹介
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