とある弁護士の本音のコラム

第4回 法律相談に関する疑問あれこれ

(1)相談料は?

法律相談は有料で提供されていることが通常です。相談料は弁護士によって異なりますが、5,000円(税別)/30分というのが多くの弁護士が採用している相談料だと思われます。

この相談料は、過去、弁護士会が報酬基準を定めており、法律相談料を「30分あたり5000 円~」としていたことに由来しています。この報酬基準(以下「旧報酬基準」とします)は、公正取引委員会から独占禁止法の定めるカルテルに該当するとの指摘を受けたことから廃止されていますが、現在も多くの事務所(とくに中小規模の事務所)でこの旧報酬基準に準じた報酬基準が用いられています。

もっとも、弁護士によって初回相談料を無料としている場合、特定の分野(たとえば借金問題など)については相談料を無料としている場合がありますし、法テラスでは一定の要件の下で無料での相談が可能になっています。

また、自動車保険・火災保険・傷害保険等の特約として弁護士費用特約が付いている場合や、ネットトラブルを補償する少額短期保険などに加入している場合は、対象となる事故等の被害に遭って弁護士に相談する場合、相談料が保険で賄われます。相談前に保険に加入しているかについても確認しておくとよいでしょう。

 

(2)服装は?

スーツやきちんとした服装で行かなければいけないと思っている方もいるかもしれませんが、通常、そのようなことはありません。ドレスコードを定めている法律事務所は聞いたことはないので、基本的にどのような服装で相談に行っても問題はないといえます。

ちなみに、弁護士はスーツ、又はジャケパンなどの服装をしていることが多いとは思いますが、弁護士の方でも特に服装についての決まりがあるわけではないため(事務所によっては服装に関する規程を設けているところはあるでしょう)、来客予定がない限りカジュアルな服装で仕事をしているということもしばしばあります。また、裁判所に行くとしても、裁判所でも服装について定めがあるわけではないので、スウェットで出廷したとしても文句を言われることはありません(刑事事件については苦言を呈される可能性はありますが…)。

近時はテレワークが広がったこともあり、比較的緩めなビジネスカジュアルやオフィスカジュアルくらいの服装で仕事をしている弁護士も増えている傾向があるように思います。

 

(3)手土産は持って行った方がよいの?

法律相談時に手土産を持参される方はそれなりに多くおり、ありがたく頂戴するのですが、手土産は持参しなくても全く問題ありません。手土産がなかったといって不利益に扱われることや不機嫌になるようなことは皆無ですし、逆に手土産があったから有利な回答をしたなどということもあり得ません。

 

(4)アポなし相談は可能?

相談予約をせずに、いきなり法律事務所を訪ねて法律相談をしようとする方がいます。そのような場合でも対応している弁護士もいるとは思いますが、対応を断っている法律事務所がほとんどではないかと思います。法律相談をしたいということであれば、事前にアポイントをとってからにするべきでしょう。

弁護士がアポなし相談を断ることが多い理由は、外出等のために事務所に在所していないということが外向きの理由として掲げられていることが多いですが、実際にはセキュリティの問題と利益相反(りえきそうはん)の確認の問題があるからと思われます。弁護士の仕事は相手方があることが多く、相手方からは逆恨み等を受けやすいといえます。逆恨みに基づいて事務所に訪問してきて業務妨害をされるという事例は過去から沢山発生しており、素性の知れないアポなし相談については、このリスクが排除できないことから断るという方向になります。

引用元:https://twitter.com/noooooooorth/status/1207433039963254785

 

また、弁護士は「相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件」については職務を行うことができないとされており(弁護士法25条1号)、紛争当事者双方からの相談を受けることはできません。一般的に「利益相反」(「コンフリクト」ともいいます)の問題と言われますが、アポなし相談の場合、相談者の素性が知れないので利益相反が生じてしまうおそれが出てきてしまいます。利益相反になると、すでに受けている事件に関しても辞任しなければならないことになり、依頼者に迷惑がかかることになるため、これを避けるためにもアポなし相談は受けることが難しいといえます。

なお、弁護士が一人だけの法律事務所なら、名前をその場で聞けば利益相反の有無は確認できるかもしれませんが、複数人が所属している事務所では事件の当事者に関する情報をその場で確認して対応していくということは現実的に困難です。

 

(5)相談予約で注意することは?

相談予約をする場合は、弁護士側からすれば利益相反の確認という意味合いもあるため、自分の氏名はきちんと伝えることが必要です。匿名での相談をしたいという方もいたりするのですが、利益相反の確認の必要から受け入れられないことも多いのではないかと思います。また相談予約の際は、どういった分野の相談で概略はどういうことか、紛争の相手方がいるならその情報も入れておくとベターでしょう。

どういう形で予約を取れるかは法律事務所や弁護士によっても異なっています。電話で予約を受け付けてくれるところ、メールフォームからの問い合わせに限るとするところ、LINE相談が可能なところ等、様々です。いずれにしても弁護士側が決めている相談方法に基づいて相談をするのがよいでしょう。

また、相談可能な日や時間が表示されている法律事務所も多いので、その表示にしたがって相談予約を入れるようにしましょう。多くの方は、病院や普通のお店で時間外の対応を求めるなどということは通常はないと思いますが、法律事務所ではなぜかそのような対応を求められることが多くあります。土日祝日や夜間の相談を希望するようであれば、それを受け入れている法律事務所もあるので、そういった事務所への相談をするべきでしょう。

コラム著者プロフィール
しみず・ようへい
2010年「法律事務所アルシエン」開設。
インターネット上の問題に早くから取り組み、先例的な裁判例が多くある。
著書・共著も多数。
漫画「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」監修を担当。