とある弁護士の本音のコラム

第2回 弁護士の探し方

探し方(1) 弁護士会と法テラスからの紹介

弁護士に相談をしたいと考えたとき、知り合いに弁護士がいるのであれば、とりあえずその弁護士に相談をしてみることができます。また、直接の弁護士の知り合いがいないとしても、弁護士を知っている知人がいれば、紹介をしてもらうということもできるでしょう。しかし、弁護士が増えてきた(2024年3月1日現在:45,855人 )とはいえ、弁護士の知り合いがいない方も少なくないのではないかと思います。その場合、どうやって弁護士を探すべきかという問題に直面することになります。

弁護士会であれば適切な弁護士を紹介してくれるのではないか、と考える方も多いのではないかと思います。たとえば、私の所属している東京弁護士会では「弁護士紹介センター」というものを運営しており、種々の分野に分けて弁護士の紹介をしています。居住地域の弁護士を紹介してもらうことができるというメリットはありますが、逆に自分から「この弁護士がよい」といった指名は難しく、また基本的には予約した相談時間に弁護士会が運営する相談場所に出向く必要があります。

また、法テラスで紹介してもらうということも考えられます。法テラスとは、正式名称が日本司法支援センターであり、法務省が所管しています。法テラスに法律相談を予約することができ、内容により当該弁護士が事件を受けてもくれます。ただ、相談担当の弁護士はその日に担当しているだけで誰が相談担当に当たるかは分かりません。そのため、特定の弁護士に頼みたいということであれば、法テラスでの紹介には向かないということになります。ただし、一定の要件を満たせば、無料での法律相談が可能というメリットがあります。

 

探し方(2) ネット検索

とりあえず気軽に調べられるものとして、ネット検索があります。相談したい分野や内容を入力して「弁護士」や「地域」といったワードを入力して検索すれば、一定程度弁護士がヒットするのではないかと思います。ただ、検索するだけだと、法律事務所のHPではそれほど詳しい情報が記載されていないこともしばしばで、どの弁護士がどういう事件が得意かといったことまでは調べることが難しいこともあるかもしれません。

そういった場合は、弁護士ポータルサイト(比較サイト)などを利用してみるのもよいかもしれません。ポータルサイトは「弁護士ドットコム」が最も有名ではないかと思いますが、最近は他にも色々とできており、たとえば「弁護士ナビ」「あなたの弁護士」「弁護士相談Café」「ココナラ法律相談」「弁護士相談広場」などがあります。こういったサイトでは、弁護士の対応可能な地域と、登録している弁護士が得意・扱っているとして申告する分野を絞って調べることができるようになっていることが通常です。相談したい分野を扱っているかどうかが検索した時点で明らかなので、調べる時間を短縮することができます。ただし、得意かどうか、どのくらい扱っているかというのは、通常あくまでも自己申告のため、実績の表示があるのであればその表示をきちんと見た方がよいでしょう。

なお、法律事務所についてクチコミ評価がされていることもありますが、事件の相手方本人などから低評価がつけられていることも相応にあるため、クチコミ評価は参考程度に見るべきだと思います。
 

探し方(3) オススメの方法

上記くらいが一般的な弁護士の探し方といえるでしょうが、私としては、「弁護士に弁護士を紹介してもらう」という方法をオススメしたいです。一般の方が、法律相談という短い時間で、その弁護士がどのような実力を持っているかを見極めることはほぼできないと思います。そして、いわゆるマチ弁は一般的な類型の事件についてはかなりの部分で対応することができるので、依頼をするかどうかは法律相談時に「話しやすいな」とか、「信頼できそうだな」といったところでしか選べないことが多いといえます。

他方で、通常の弁護士は、内容的にかなり専門的なものであり理解が十分でない場合や、相談事項に関するきちんとした知識を有していないと自分で判断できる場合、相談者にはそのことを素直に伝えることが多いと思いますし、そのような場合は自分で事件を受けることは難しいということも伝えることが多いと思います。その場合、相談者側から「誰か詳しい人がいれば紹介して欲しい」と話してみるとよいでしょう。業界内のことはやはり業界内にいる者が良く知っているのであり、弁護士内では「この分野であればあの弁護士がよい」といった共通認識が意外とあったりするものなのです。直接その弁護士のことを知らない場合でも、そのような弁護士がいれば名前を教えてもらうことができることは多いと思います。

そういった弁護士を教えてもらえれば、当該弁護士のHPなどを見て、問い合わせをしてみるとよいでしょう。

若手かベテランか

一般的に、若手弁護士に依頼をして大丈夫だろうか、と考える人は多いのではないかと思います。ベテランになってくれば、特に注力分野があるようなケースでは、類似の案件を多数こなしていることにより事件の見通しを想定できるようになったり、調べ物をしなければいけない部分が少ないため、結果として事件処理が早いといったことはあり得ると思います。その意味で、ベテランに事件の依頼をしたいと考えるのも分かるといえます。

たしかに、若手弁護士、とくに弁護士になったばかりの弁護士には経験が十分ではないこともあります。しかし、逆に試験に合格したばかりで知識も新鮮で、フットワークがよいことも多いですし、経験に関する部分は周囲の弁護士に教えを受けて一定程度補うことも可能で、若手であるから一概に信頼できないなどということは言えません。

私ももうすぐ弁護士18年目となり若手とは言えませんが(笑)、若手のときがあったのであり、その際に依頼をいただいた方々がいたからこその今があります。相談した際に若手であることから不安だということがあれば、そのことを率直に言ってもらい、その際どのような返答をするかによって依頼をするかを決めるというのもあり得る考え方ではないでしょうか。

コラム著者プロフィール
しみず・ようへい
2010年「法律事務所アルシエン」開設。
インターネット上の問題に早くから取り組み、先例的な裁判例が多くある。
著書・共著も多数。
漫画「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」監修を担当。