HAKUSENSHA
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#04
ヤングアニマル編集
2021年入社I.Y
まんがを描いているどなたにでも 会いに行けるのが青年まんが編集者
I N T E R V I E W プロデューサーインタビュー
『ヤングアニマル』で“28年ぶり”の女性編集者
私は子どもの頃からまんがが大好きでしたが、恋愛を主軸にした作品にはあまり親しんでおらず、好きな少女まんがは『花とゆめ』と『LaLa』のものばかりでした。『夏目友人帳』や『暁のヨナ』も昔からずっと大好きです。小説やまんがの編集を志望して入社した前職の大手出版社では、最初の配属がメディア系で希望と異なっていたこともあり、転職を決意。白泉社の面接で、『花とゆめ』『LaLa』に加えて男性向け雑誌にも興味があると伝えたところ、ヤングアニマル編集部への配属が決まりました。
ヤングアニマル編集部に女性編集者が入るのは、なんと“28年ぶり”とのこと。どんな雰囲気かと少し構えていましたが、実際にはアルバイトから担当役員まで多くの女性が在籍しているうえ、作家も半分ほどは女性。性別によるハードルやギャップを感じる機会はほとんどありませんでした。むしろ「あなたが面白いと思うならやってみなよ」と背中を押してくれる先輩・上司が多く、固定観念にとらわれずに一人ひとりの意見を大事にする風土があると感じました。
まんが編集の仕事は大きく分けて3つあります。連載中の作品を進めていくこと、コミックス(単行本)を制作すること、そして新たに連載を立ち上げることです。特に3つ目については、白泉社の少女誌が新人作家を育てる文化が強いのに対し、青年まんがは他誌で連載中の作家に声をかけることも多いため、社内ではヤングアニマル編集ならではの面白さがあります。
「女子中学生だった頃の自分が絶対好き」が決め手
1月からTVアニメが放送開始する『拷問バイトくんの日常』のスタートは少し変わっていて、もともと作者の次見やをら先生が同作のもととなる2コマまんがをSNS等で毎日発信しているのを見かけ、「まだ商業化していなかったらうちで連載しませんか?」と連絡したところ、話が進んで連載に繋がった作品です。白泉社ではSNSでバズった作品を見つけて書籍化することはあまりやってこなかったのですが、同作品のネタの“キャッチーさ”、キャラデザの“みんな好き感”が良く、「今の自分も好きだし、何より女子中学生だった頃の自分が絶対好き!」という直感が決め手となり、お声がけすることにしたのです。連載化にあたり、2コマの単発ネタを4コマのストーリー仕立てに変更してもらい、現在の形式になりました。
『拷問バイトくんの日常』次見やをら/著
全員が「いいね」と思えるストーリーに方向づける
『描くなるうえは』高畑弓/原作 蒲夕二/作画 最近TVアニメ化が発表された『描くなるうえは』も、立ち上げから携わった作品の一つ。原作の高畑弓先生・作画の蒲夕二先生コンビの前作の後半から今の副編集長と一緒に担当してきて、「たくさんの人に愛される作品を目指す」「ラブコメでいこう」というところから企画をスタートさせました。高畑先生が長年温めていた“高校生男女がまんが家を目指す”というネタにすぐ決まり、何度も何度も打ち合わせを重ね、現在に繋がるものすごくピュアなストーリーが仕上がっていきました。
打ち合わせをするうえで大事にしていたのは、4人全員が「いいね」と思えるストーリーに方向づけていくこと。一人の直感で押し進めるのではなく、その場にいる全員がキュンとしたり、感動できる話であれば、読者にも広く刺さるはずと考えたからです。ヒロインをギャルにしようという話が出た時には、特に高畑先生がバラエティ番組やSNSでギャルのことをたくさん研究してくれて、「今のギャルらしさってメンタルだよね」という結論に行きついたりと、キャラクターの掘り下げも行いました。
アニメ化で感じられる編集者の醍醐味と難しさ
アニメ化のようなまたとない機会を得て、作品に関わる方が増えても、作家に直接関わるのは基本的に編集者だけです。二人で世に送り出した作品を認めてもらえる、大きなコンテンツになっていくのを一番近くで見守れる喜びは、編集者の特権だと思います。また、アニメに関わる方たちが作品やキャラクターを大事にしてくれたり、理解しようとしてくれている姿も感慨深いものがあります。
アフレコ現場への立ち会い、脚本やキャラデザのチェックなど、アニメ化によって実務が増え、忙しさも増していきます。そんな中で一番気をつけなければならないのが、作品と作家を守ることです。普段自分たちは作品をつくる側ですが、アニメでは他の方がつくったものを監修する側になるため、作家と二人三脚で育ててきたキャラクターやストーリーの捉え方、作品へのこだわりなどを、どう伝えればより理解してもらい、作品づくりにいかしてもらえるのか、悩むこともあります。その分、世に出ていったアニメが誰かに喜んでもらえた瞬間の嬉しさは格別です。これからもより作品と作家のためになる道を探っていきたいと思います。
小さい頃からの憧れの作家をはじめ、世の中でまんがを描いているどなたにでも会いに行けるのが青年まんが編集の面白さ。また、どんな人をターゲットにしたどんなまんがでもつくることができるのも青年まんが編集の醍醐味だと思います。自分の企画で勝負したい、難しいことにも挑戦してみたいという方、ヤングアニマル編集部でお待ちしています。