HAKUSENSHA
PRODUCERS
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#02
LaLa編集
2015年入社M.E
“好き”を“売れる”へ結びつける 徹底した分析で作家をサポート
I N T E R V I E W プロデューサーインタビュー
才能を見つける喜び、この世界で最初に見る喜び
まんが編集の主な仕事は、打合せやネームへのフィードバックを通して、まんが家が表現したかったものが伝わる形になるようサポートすることだと思っています。また、少女まんがというか『LaLa』の場合ですが、まんが家がデビューする前からサポートする風土があります。具体的には、「LMS」で担当についてデビューまでのサポートをし、その結果「LMG」でデビューを果たした後も引き続き担当編集としてサポートを続けるというものです。それぞれのまんが賞について説明させて頂きますと、「LMS」とは「ララまんが家スカウトコース」、「LMG」とは「ララまんがグランプリ」のことで、LMGは2024年のリニューアルを経て投稿数が増え、“少女まんが作家の登竜門”として改めて注目していただいているところです。実は私もこのリニューアルに携わっていて、長い歴史を持つスクールを時代に即した賞にしたいという思いから、応募要項・方法などの大幅な見直しを図りました。他にも「ラララボ!1dayハイスピードマンガ賞」という一日限定のコンテストがあり、こちらはよりラフに投稿できる点と結果発表の早さが特色です。こうした「LMG」や「ラララボ!1dayハイスピードマンガ賞」は、私たち編集者が全ての作品を読ませて頂き才能の輝きを見落とさないよう全力を尽くす、まんが編集の大切な仕事だと感じています。
私が現在担当している連載作品は、冬夏アキハル先生『転生悪女の黒歴史』、糸加先生原作・白藤圭先生作画『魔導書令嬢〜伝説の魔導書を修復したら最強の精霊が味方になりました(クールな王弟殿下がなぜかいつもそばにいます)〜』など4作品。過去には千桜都マルミ先生『つが恋〜後天性Ωの運命〜』、響ワタル先生『琉球のユウナ』などさまざまな作品を担当させていただきましたが、連載の立ち上げからであったり最終回であったりメディア化であったりと、多様なフェーズで作品に関わる過程でプロデュース力が磨かれた側面もあると思います。そして、作品担当だけでなく他にもさまざまな業務がありますが、やっぱり担当する作家から面白いネームを送って頂いた時が、一番やりがいを感じますね。面白いとリアルに鳥肌が立つんです。発売日が待ち遠しかった経験がある人なら分かるんじゃないでしょうか。この世界で誰よりも早く、大好きなまんがの続きが読めるなんて最高だと思いませんか? 最高ですよ。
作家の“好き”を“売れる”に結びつけるのが編集者
『月刊LaLa』連載中の『転生悪女の黒歴史』は、2025年10月からアニメ放映している作品です。
私はアプリゲーム化もした(※現在サービス終了)冬夏アキハル先生の前作『アイドルDTI』も担当していたのですが、先生のことを天才だと思っていたので、次回作はアニメ化するほど売れないとおかしいのでは!?という気持ちがありました。そうして新連載の打合せを重ねた先の2018年5月上旬、先生から「まったく萌えなかった」という一言とともに数本のネームが送られてきました。読むとその中の一つが15ページしかないのにめちゃめちゃ面白かったんです。すぐに先生に電話して、「面白すぎるので続きを描いてください!」と熱弁したのを覚えています。5日後には続きを描き足した50ページのネームが完成したということで読ませて頂いたのですが、またしても面白くて。「これは世の中に出さなければ……!」という確信のもと、読切選考に提案。編集長からは「面白かったよ」と3回連載を提案され、2018年『月刊LaLa』10月号から3号連続で掲載することに。結果としてありがたいことに1話目から大きな反響をいただき、コミックス1巻が即重版となったのも後押しとなり、連載継続が決定。ホッとしたと同時に、連載に向けた準備に追われる緊張感も味わいました。
編集と作家の関係性は、人と人なので組み合わせの数だけ違うと思いますが、私と冬夏アキハル先生の場合、最初の打合せで好きなゲームとまんがの話で意気投合し、それ以来打合せではお互い何が好きで何を面白いと思うのかについていつも話していた記憶があります。『転生悪女の黒歴史』の構想段階でもそれは同じで、先生が好きそうな小説やまんがをピックアップしては送りました。特に当時人気 になり始めた“なろう系”と先生好みの“嫌われ”はいくつも送りましたね。そうして生まれたのが自作の嫌われキャラに転生してしまう『転生悪女の黒歴史』です。アニメのオープニングで「冬夏アキハル」の文字が映し出されたのを見た時、『転生悪女の黒歴史』の主人公イアナじゃないですけど、「あの時の想像が現実になった!」と、感慨深かったです。
育児を通して変わったこと、活かせていること
編集者は忙しすぎて育児と仕事の両立が難しいんじゃないか、と思う学生さんは少なくないと思います。しかし、白泉社には私を含めて現在複数の育児中編集者が在籍しています。私も育休を取得していますし、在宅勤務などの制度を活用しています。制度だけでなく、子育て中の社員に配慮する雰囲気もあるので、学生の皆さんも安心してくださいね。
子どもを育てるようになってから、自分の中でさまざまな変化が起きましたが、一番の変化は時間への意識だと思います。子どもが突然体調を崩してしまえばその日の予定は立ち行きませんから、基本的に超先回りをするクセが付きましたね。また、1つ1つのタスクの優先順位も、より意識するようになった気がします。
現在の目標は、作画と原作を分けたコンテストを開催すること。絵を描くことが大好きな方、ストーリーを考えるのが大好きという方に、自分の“好き”に全振りしてまんが作りに取り組んでもらえれば、より多くの作品が生まれるんじゃないかと思うんです。誰にも負けない「好き」があるのって凄いことじゃないですか。それを「作品」という形に変えて世界に送り出すための一つのきっかけとして、コンテストを開催できたらと思います。