チャレンジの難易度も自由度も高い
青年誌はいわばまんが界の無差別級!
INTERVIEW
ヤングアニマル編集部/2015年入社 Y.Y
『花とゆめ』での経験を、『ヤングアニマル』で発揮


大学生の時、まんが家のたまごをサポートするNPOのインターンに参加し、プロのまんが家や編集者と関わる経験をしました。とはいえ実際の作品作りに関わることはなく、あくまでも外側からのサポートがメイン。もっと内側に入っていきたい、まんが編集者になりたいという思いが次第に強くなり、まんが編集部のある出版社に絞って就職活動を行いました。白泉社はその一つで、以前から『ヤングアニマル』を購読していたことを伝え、愛読者だからこそ思うアイデアなどを提案。熱意を認められたのか、無事入社することができました。
『ヤングアニマル』の編集者として社会人のスタートを切ると思いきや、最初に配属されたのは花とゆめ編集部。少女まんがをあまり読んだことがなかったため、配属当初は少し驚きましたね。その後、4年半ほどしてヤングアニマル編集部へ異動になったのですが、今思えば最初に所属したのが『花とゆめ』で本当によかったと思っています。『花とゆめ』は、デビュー前の新人作家を育てて一緒に成長する雑誌。それに対して『ヤングアニマル』を含む青年誌は、すでに連載経験を持つ作家に声をかけて作品作りを始めるケースが多いです。私は現在、『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』というまんがを担当しているのですが、同作品はまるよのかもめ先生のデビュー作であり、企画立ち上げから一緒に取り組んできた作品でもあります。新人作家をゼロから育てる経験を『花とゆめ』で積んでいたからこそ、焦らず、無理なく、先生の初連載に伴走できているのだと感じています。
また、『花とゆめ』では、『俺様ティーチャー』『スキップ・ビート!』『墜落JKと廃人教師』『ゆらゆらQ』などを担当しましたが、コメディテイストが強い作品が多く、自分がコメディ好きであることを自覚するきっかけにもなりました。その経験から『ヤングアニマル』でもギャグ要素を多分に含む作品作りに取り組み、現在の『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』に繋がっているように思います。
細かなこだわりが注目される度、企みの大成功を実感


『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』誕生の物語は、まるよのかもめ先生が『ヤングアニマル』のマンガ賞に応募してきた際、私が担当に就いたところから始まりました。このマンガ賞には、上から大賞・入選・準入選・佳作・奨励賞などがあり、基本的には佳作以上を受賞した作家と一緒に、雑誌に掲載する作品作りに取り組むという流れが通常です。まるよのかもめ先生は奨励賞であったため、まずは佳作を獲得できる作品を作り、引き続きマンガ賞にチャレンジしましょうと話していました。しかし、「ごはんモノはどうでしょう」という提案をもとに先生が描き上げてきた『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』のプロトタイプがとても魅力的だったため、マンガ賞への応募を飛ばして、一気に連載企画を立てることになったのです。
最初の打ち合わせから連載開始までに要した期間は1年以上。細かな調整を繰り返し、満を辞して第1話が掲載されたのは、2024年5月9日でした。どんな反応をもらえるのか緊張していましたが、なんと公開から間もなくX(旧Twitter)のトレンド1位に。想像以上の反響を受けて緊急社内会議を開き、隔月発行の増刊『ヤングアニマルZERO』での連載と並行で『ヤングアニマルWeb』にも月イチ掲載…という、異例の連載パターンに挑戦しました。また、5月9日までに連載を開始した作品を対象とする「次にくるマンガ大賞2024」への入賞を狙いたいと考え、先生の協力も仰ぎつつSNS等で投票を呼びかけたところ、“Webマンガ部門第8位”、スポンサー賞である“冷凍食品はニチレイ賞”の2つを受賞。連載形態の切り替えやSNS活用といった臨機応変な対応が、知名度と人気を高める起爆剤の1つになったのではないかと感じています。
ちなみに、同作品の中に出てくる「至る」というワードや、ネットの一部で“カロリースカウター”と呼ばれている総摂取カロリーの記載については、SNS等で注目していただく度、細かいところまでこだわってよかったなぁ、先生との企みが大成功したなぁ、しめしめ… と思っていますね。プロデュースがバチッと決まる心地よさは、編集ならではの醍醐味だと思います。
メディア化は作品の可能性を広げる貴重なチャンス


アニメやドラマなどメディア化の過程にも、我々担当編集は深く関わっています。連載開始から担当してきた『飯を喰らひて華と告ぐ』のドラマ化の際には、作家とドラマ制作会社との間に入ってキャスティングについて相談したり、脚本の調整をお願いしたりしました。2025年1月より放送開始の『Sランクモンスターの《ベヒーモス》だけど、猫と間違われてエルフ娘の騎士(ペット)として暮らしてます』のアニメ化に関しては、アフレコ現場に毎回伺い、作家の代弁者として監修をさせていただいています。
直近では『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』と「カレーハウスCoCo壱番屋」とのコラボ企画を仕掛けました。主人公が「CoCo壱」で某メニューを食べる話を掲載した後、店舗で実際に同じメニューが提供されるという企画で、SNSでも注目していただきありがたい限りです。メディア化や企業コラボレーションは、普段まんがを読まない方にも作品を知っていただく貴重なチャンス。これからも、まんがの世界では無差別級とも言える青年誌を舞台に、難易度も自由度も高いからこその面白さを感じながら、自分が挑戦したいと思うジャンルや企画にどんどん取り組んでいきたいと思います。
OTHER INTERVIEW

