#04

高村 亮

ヤングアニマル編集部 / 2011年入社

青年まんが 編集者の妄想

SCROLL

高村 亮さん

高村 亮

ヤングアニマル編集部 / 2011年入社

青年まんが 編集者の妄想

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RYO TAKAMURA RYO TAKAMURA RYO TAKAMURA

まんが家さんが描きたいもの
メジャーになる

入社して10年、『ヤングアニマル』編集部での仕事は一通りやらせてもらいました。年次が浅い時はグラビアやカラー関係のできるところをやり、2年目からは連載を立ち上げ、少しずつ自分の作品みたいなものが増えてきた感じです。

お世話になった方はたくさんいますが、自分のキャリアとしては、此ノ木よしるさんの『SE』が初めの大きな一歩でした。お声掛けしてネームをいただいて企画に出して、初めて連載が実現して。まんが編集で経験できることを、人から何か言われてとかじゃなく自分で進めていった最初の作品です。

作家さんと相談しながら、妥協なくしっかり作品作りをする。ちゃんとその手応えを持ってできた最初の作品が『ペリリュー-楽園のゲルニカ-』です。戦後70周年の戦争増刊に読みきりを載せたのがきっかけで連載化しました。立ち上げから完結、メディア化までできて、さらに今後の展開も楽しみ。まさに今の自分の名刺代わりな作品です。

まんが作りで自分の妄想がどうっていうのは、実はあまりないんです。もっと若い時は、自分の色んな体験を作家さんに話しながら作ることも多かった。編集者が企画を持っていく作品は多々あるし、まずはそこに憧れる。自分のクリエーター心みたいなものってある。でもみんなができるわけじゃなくて、自分はそっちじゃないんだなと途中で気づいたんですね。

そこからは、その人の描きたいものでメジャーになろうと。この形式だったら届くと思う、というように方向性を決めるほうが多くなりました。この題材だったらこの方向に振ったらいいかも、みたいなことを考えています。

唯一無二の立ち位置になれるんじゃないかな
唯一無二の立ち位置になれるんじゃないかな

唯一無二
立ち位置
なれるんじゃないかな

『ペリリュー』では、著者の武田一義さんとペリリュー島に取材に行きました。夜は真っ暗。海が真っ黒で波の音だけ。テレビもネットもない。ケータイで家族の写真を見るくらいしかやることがない。そこで戦争当時も、家族を思って写真を見たりしていたんじゃないかなと思いました。写真がくしゃくしゃになっていたとしたら、そこに絵を描ける人がいたとしたら、きっと描いてくださいと言ったはず。翌朝、武田さんに伝えて、吉敷が家族の写真を持って田丸に描いてもらうシーンにつながりました。伝えた考えが作品に反映されることはたくさんあって、まさに作家さんと一緒にまんがを作っている感じです。

プロデューサー型妄想みたいなことで言うと、『ペリリュー』は題材的に他ではやらないだろうなっていう考えはありました。例えば少年誌のまんがでは人が大勢死んだりするけど、「死のリアル」をやっているものは、そんなにないなと思っていて。でも『ペリリュー』では、人が死ぬっていうところが一つ一つハードにリアルに描かれている。唯一無二の立ち位置になれるんじゃないかなと。

『数学ゴールデン』(作・藏丸竜彦)同じです。数学という題材は、まんがはそれほど多くないけど、本自体は今すごく人気で売れているジャンル。その中で、昨今は全然流行っていなかった熱血キャラで、とにかく熱く描いているのが面白い。数学で熱血キャラでスポ根みたいな形で描いていけば、それも一つの特徴だし、今流行っていないもののカウンターという感じで見せ方が変わるから、勝負は全然できるんじゃないかなって。

どちらも堅いけど深い、ずっと調べがいのある題材です。一度気になったらとことん書籍を読み漁りたくなる。いわゆる沼みたいなテーマでやると、やっぱり作品になるなという実感がありました。だからしっかり取材をして、ネームを妥協なく練って、コミックスを作ってしっかり販促をする。アプローチ的には、『ペリリュー』で培ったことを『数学ゴールデン』に活かした形です。

『ペリリュー』も『数学ゴールデン』も、作家さん側になんとしてでも売れたいという熱い思いがありました。販促も含めてできることを全部やりましょうと話せたのもよかったですね。メディアからの取材や書店さんへの働きかけなど、柔軟に積極的に対応してくださいました。

担当作家さんの自己ベストを何本出せるか

担当作家さんの自己ベスト
何本出せるか

基本的には、作家さんの描きたいものを生かしながらどのように作品を作っていくかというのが自分の考え方です。その人の自己ベストを何本出せるかというのを目標にしていて、10本くらい作れたらいいなと。自分が担当している作家さんたちのベスト1というか、現時点での自己記録更新が10本できたら、ひとまずはちょっと満足かな。でもハングリーさも忘れず、新しい作品は常に立ち上げて、もっと大きなヒットをさせたい。そう思いながら仕事しています。

ヤングアニマル編集部は、いわゆるまんが雑誌で経験したいなと思うことを全部できる場所です。グラビアや記事もできるし、表現的なコードでこれはやっちゃダメというのがあるわけでもない。自分の好きなものができる。だから編集部員もタイプが全然違う。僕は最近は堅いのをやる感じになっているけど、ばんばん数を立ち上げる人もいれば、ギャグが得意でギャグまんがをやるという人もいます。

『ベルセルク』『3月のライオン』『ふたりエッチ』が一緒に載っている雑誌ですからね。ここをまとめるってなかなか難しいんですけど、それだけにすごく懐が深い。どんな好みや強みがある人でも、どこかでハマるものがあるんじゃないかな。きっと活躍できると思います。

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