Kodomoe編集長の告白 Kodomoe編集長の告白

『kodomoe』編集長を務める近藤多喜子は二児の親でもあります。今も子育て真っ最中。その経験は育児情報誌のコンテンツづくりにも活かされています。少女まんが誌『LaLa』の編集者として13年のキャリアを積んだ後、書籍部を挟む形で、『kodomoe』編集部に配属され編集長に。少女まんがと子育ての経験はどのように活かされているのでしょうか。

私たちの仕事は、誰かの心に届く


入社してからは『LaLa』編集部ひと筋。担当した作家さんのことはみなさん、リスペクト&愛で溢れています。右も左もわからない私を育ててくださったなかじ有紀先生はじめ、本当は全員への感謝を語りたいのですが(笑)。なかでも田中メカ先生は、新人から担当して、初めてコミックスを出した作家さんなので、やはり特別ですね。投稿作を読んだとき、まだあら削りな中にも、非常に心うたれるものを感じて、担当に付かせていただいたんです。田中先生は天才だったので(←担当編集は本気で思うものです)、とんとん拍子でデビューが決まって、最初は読切だった「お迎えです。」の読者アンケートも良く、連載に繋がっていきました。私も新人だったので、情熱だけが先走りがちでしたが、お互い試行錯誤しながらも、一緒に高みを目指して頑張れたのは幸せでした。田中先生の魅力がこれでもかとつまった「キスよりも早く」がヒットしたときは、本当にうれしかったです。

「お迎えです。」は2016年に実写ドラマ化されましたが、きっかけはプロデューサーの方が昔、作品を読んでくださっていたからだったんですね。「キスよりも早く」が好きで、白泉社をうけた社員もいて。そういう話をきくと、自分の関わった作品が、読んでくれた人の心にちゃんと届いていたんだ、とジーンとします。と同時に、時の流れも感じましたが(笑)。この仕事は、そんな喜びが待っているので、最高ですよ。

「図書館戦争LOVE&WAR」も思い出深い作品です。私は有川ひろ先生の作品が大好きすぎて。特に『図書館戦争』を読んだ瞬間、どうしてもまんが化したい!と稲妻が走りました。出版元にアタックしたところ、有川ひろ先生が白泉社の作品を好きでいてくださったこともあって許諾をいただけました。まんがを描けるのは弓きいろ先生しかいない!と思って、口説いたときのこともよく覚えています。もちろん弓先生も原作にドハマりしてくれて「やりたい」と言ってくださいました。とはいえ、あくまで候補の一人だったんですが、有川先生がまだ新人だった弓先生を選んでくださったときは「やった!」と。弓先生が『図書館戦争』の世界を見事に体現してくださったおかげで、有川先生からの信頼も厚く、ネーム直しが入ることもほとんどなかったと思います。「一念岩をも通す」と申しますか、この仕事は「やりたい」ことをとにかく「やってみる!」ことが大事ですし、醍醐味だと思います。もし失敗しても、会社は「経験(成功への種)」として受け止めてくれるので、大丈夫ですよ!

私たちの仕事は、誰かの心に届く
私たちの仕事は時間が過ぎても読者に届く。

自分の知りたいことが企画になる

自分の知りたいことが企画になる

『LaLa』編集部から書籍編集部に異動して、絵本の編集に携わりました。白泉社はまんがだけでなく、錚々たる絵本作家や小説家を輩出していて、絵本の名作も出していることを、このとき実感できました。書籍部在籍中に産休・育休を取得し、復帰後も時短勤務や看護休暇などの制度を活用しています。今はベビーシッター割引券など福利厚生もますます充実していて、大変助かっています。編集者は時間の融通が利きますし、夫も白泉社の社員なので、お互い助け合いながら子育てしています。

『kodomoe』創刊のタイミングでkodomoe編集部へ異動しました。育児誌だったので、これ幸いと、自分の悩みを企画にぶつけていましたね。例えば、我が子の言葉が遅いのが心配だったら「子どもの発達」をテーマにしたり、つい子どもに感情的になってしまうから「怒らない言葉がけ」の特集を組んだり。親の悩みは共通なので反響がありました。まんが編集の場合、作家を支えて、作品をどうプロデュースするかを考えますが、情報誌の場合は編集者自身が企画を立て、原稿を書いたりもするので、読者から「救われた」「役に立った」と感想が返ってくると嬉しいですね。まんが誌とは違ったおもしろさがあります。


もちろん、まんが編集としての経験も役に立っています。少女まんがで培った妄想力を生かして!?グラビアを撮ったり。特集のテーマをわかりやすく伝えたいときは、まんがを描いてもらったり。また、前編集長が、コンテンツビジネス部やマンガラボ!と一緒に「マママンガ賞」という育児まんが賞を立ち上げました。受賞者がkodomoe webで連載し、webの人気コンテンツになっています。

『kodomoe』 は、毎号描きおろしの絵本付録がつきます。親も子も一緒に楽しめるのが雑誌の売りです。付録の冊子は軽いので、子連れのお出かけにも持ち運びしやすく、読者に好評です。また、作家さんにとっても、多くの人に手にとってもらえるよいプロモーションの機会となります。単行本として発売するときには、読者の反響を元に、さらにブラッシュアップすることもできます。
絵本がすばらしいのは、親から子へ、孫へと世代を超え、ずっと長い間読み継がれていくところです。白泉社には、まだまだ絵本編集者が少ないので、絵本を作りたい!と入社してくれる方を熱望しています。

一人だけでも、
だれかの心に刺さればいい

一人だけでも、だれかの心に刺さればいい

現在は『kodomoe』編集長として、料理や手づくり企画をくむときは、「苦手な私でもできるか」ということを意識しています。創刊当初は「理想の暮らし」も特集していたのですが、読者の皆さんから「そんなに時間はかけられない」「そんなに高い服は買えない」など感想やご意見をいただくうちに、実情が掴めてきました。今のママパパは、育児に家事に仕事に……と、本当に忙しい! みなさんの肩の荷を少しでもおろせて、「役に立つ」情報をお伝えしようと心がけています。

日本のママたちは本当に完璧ですごいです。育児だけでなく、料理も家事もこなすがんばりやさんです。なのに、「自分は全然できていない」と落ち込むことも多いんですね。でも海外では外食が当たり前だったり、夕食はパンやチーズ、ハムを切るだけだったり。そこで「家事をやめよう」という特集を提案しました。また、まんが家のかねもと先生が「世界一役に立たない育児書」という、理想通りにいかない子育てエピソードをSNSで描いていて、とても共感したんですね。お願いして雑誌に描き下ろしてもらったところ、大反響。webメディアやワイドショーにもとりあげられました。これらの特集が話題になったことで、昔の自分と同じ悩みを抱えている人たちが、まだまだたくさんいることを実感しました。『kodomoe』は、子育てで模索していた昔の自分を想定して、一人でも多くのママパパたちの気持ちがラクになったり、助けになる雑誌を作っていこうと思っています。

まんが編集も同じですが、昔の自分、今の自分が読みたいものを作りたい!でもいいと思います。ぜひ、自分の癖(へき)をいかんなく発揮してください。きっと共感してくれる読者が待っています。

迷ったときは「自分」に立ち返ろう。

あなたに告白したいこと。

私は白泉社しか受かりませんでした。そういう意味では、就活にはやっぱり企業との相性があるので、あまり思い詰めずに臨んでください。もし白泉社に入社したら、自分が「読みたい!」「やりたい!」と思うものにぜひ挑戦してほしいですね。なんでもやらせてくれるのが、白泉社のよいところです。新しい世界を作ってくれるのを楽しみに待っています。

迷ったときは「自分」に立ち返ろう。

新人の私だけパスタを食べてしまい……。

編集長の今でも日々失敗しています。新人のとき、モデル撮影で、新しいカメラマンさんを紹介していただいたんです。その方と初めて打ち合わせをするときにすごくお腹が空いていたので、私だけパスタを頼んで、カメラマンさんは遠慮してコーヒーだけ。コーヒー一杯のカメラマンさんの前でパスタをもりもり食べる私……。大変申し訳なかったと反省しています。今は、新人のときよりは、空気が読めるようになったと信じたい……。