宣伝編集部の告白 宣伝編集部の告白

白泉社のまんが作品は、ただ雑誌に掲載するだけではたくさんの読者に届けられません。作品の魅力を伝えるために書店やメディアに対してプロモーションを行う。その役割を担っているのが宣伝部です。入社3年目の山下葵は1年目から宣伝部に所属。これまでに『花とゆめ』と『MELODY』の宣伝担当として多くの作品の魅力を伝えてきました。アニメ化やドラマ化にも携わってきたキャリアから見る、その仕事の醍醐味とは。

置かれた場所で咲こう。

置かれた場所で咲こう。
置かれた場所で咲こう。

長い会社員人生の中で、やっぱり自分の好きなことを仕事にしないと続けられないだろうなって。「自分の好きなことはなんだろう?」と考えたら、まんがに携わる仕事がしたいと思ったんです。

私がはじめて全巻買い揃えた少女まんがは『LaLa』で連載されていた「会長はメイド様!」という作品でした。「夏目友人帳」も好きで読んでいましたが、どちらも白泉社の作品だとは意識していなかったんですよね。後になって、私の好きなまんがには白泉社の作品が多かったんだということに気づきました。白泉社は大きく分けるとまんがと絵本の会社なので、入社したらまんがに携われる可能性が高いかもしれない。他の出版社は小説や文芸などの部署もありますが、白泉社はまんがのイメージが強かったので入社試験を受けました。

入社後は1年目から宣伝部に配属されて3年目を迎えました。白泉社の配属発表は研修期間が終わる5月終わりくらいなんです。私は同期の中で最後に発表されて、私以外は編集部だった時点で「あ、編集部はないな」と思っていました(笑)。直近数年の配属状況から販売部配属なのかなと思っていたら、配属先はまさかの宣伝部。これは予想外でとてもびっくりしましたね。

どの作品のメディア化にも
携われるポジション。


ノーマークだった宣伝部。その仕事内容のイメージも湧いていなかったのが正直なところでしたね。実際に担当して思うのは、細やかなところから華やかなところまで幅広く担当する部署だということです。たとえば、書店用に宣伝物を送る場合、コミックスを目立たせるためのポスター、POP、販売台などを制作してお送りします。他にもWeb広告を出稿することも宣伝の仕事です。私の場合はSNS広告を配信したり、Webメディアにインタビュー記事や特集記事を組んでいただいたり、あとは電車のドアに貼ってあるステッカーや駅貼りのポスター、デジタルサイネージなどの交通広告の出稿もあります。

『花とゆめ』45周年のプロモーションでは、45周年を記念したコースタープレゼント企画の宣伝物を制作しました。対象商品を購入すると、6作品のうち1作品のコースターがくじ引きで当たるという内容です。Web媒体ではコミックナタリーさんに特集記事を企画していただいて、全9回の連載記事として7か月かけて定期的に更新しました。45周年の年表をつくって、たくさんの作家さんたちやまんが研究家の方にインタビューもしました。それから『花とゆめ』ファンの著名人からコメントを募集し、本当に素敵なページをつくってくださいました。

どの作品のメディア化にも携われるポジション

どの作品のメディア化にも携われるポジション

もうひとつは『MELODY』で連載中の「かげきしょうじょ!!」のアニメ化プロモーション。「かげきしょうじょ!!」をずっと好きだと言ってくださっているおかずクラブのオカリナさんのインタビュー記事、これもコミックナタリーさんに作っていただきました。私もインタビューに同行したのですが、オカリナさんの造詣がとにかく深すぎて、本当に好きで読んでくださっていることが伝わってきて、「すごくわかる!」と何度も頷きながらお話を聞いていました。

「かげきしょうじょ!!」はいろいろな方が応援してくださっている作品なので、アニメの製作委員会の方たちも、いかにして多くの人たちに知ってもらうかというところでまとまっていると感じています。書店、読者の皆様の応援にも後押しされて、私個人としても非常に前向きな気持ちにさせてもらっています。アニメ化発表のときにTwitterで検索しまくったら、ポジティブなコメントばかりで。本当に愛されている作品なんだなと伝わってきてワクワクしました。

私は『花とゆめ』と『MELODY』を担当していますが、それぞれの雑誌から発売されるすべてのコミックスが私の担当作品になります。編集部だと自分の担当作品がメディア化されなければなかなかそこには関われませんが、私は『花とゆめ』『MELODY』の作品という括りで、どの作品がメディア化されても携わることができます。そこがすごくいいところですね。点数も多くて大変ですが、「高嶺と花」の実写ドラマの現場にも伺えたりと、素敵な体験もたくさんしています。いろいろな場所に行っていろいろな人に会える。そこも宣伝の仕事の魅力だと思います。

アニメのアフレコ現場にも数回ですがお伺いしました。「フルーツバスケット」のアフレコ現場で声優さんのお芝居を生で見られた経験はとても貴重でした。本当にすごい声優さんたちが出演されているので、そこに立ち会えたときは「これは夢……?」かと思うほどに感動しました。いろいろな人たちと出会えて、作品にかける熱量を感じられる。それもやりがいのひとつになっています。

会社を俯瞰して、
Win-Win-Winを担う。

会社を俯瞰して、Win-Win-Winを担う。

雑誌ごとに連絡会議というものがあって、そこには編集長、副編集長、販売担当、デジタル担当、コンテンツビジネス担当、宣伝担当が参加します。いろいろな部署がチームとして関わる会議なので、そこでは部署を横断した話ができます。また各雑誌に宣伝担当がいるので、宣伝部内の連絡会議では他部署の情報も共有されます。絵本や書籍の話も聞けるので、会社全体を俯瞰的に見ることができます。そこは宣伝ならではかもしれませんね。社内のコンテンツに関しての情報が集まりやすいなと感じます。

宣伝部はとても自由な環境です。自分の裁量で決められて、上長からも「それはだめだよ」と言われることはほとんどありません。思いついた企画を関連部署と相談しやすい雰囲気があり、部署間のやり取りもスムーズで、やりたいことがやりやすいと思います。ただ予算はしっかり管理する。自由だからこそ自分自身も管理して仕事しないと、誰も管理してくれません。いつも苦労していますが自己管理も仕事として大事だと思います。もうひとつ、私の場合は『花とゆめ』と『MELODY』がまったく読者層の異なる雑誌なので、作品ごとに最適な宣伝方法を考えて、それも自分で管理してやっていくことが大変です。ある作品で当たった宣伝方法は他の作品では参考にはなっても必ずしも当たるわけではなくて。その見極めもしっかりしなければいけないんです。

宣伝はニーズとニーズを合わせる仕事です。まんがを読みたいと思っている人はたくさんいると思うので、そこにちゃんと伝えるべき作品を伝えることが宣伝の役割です。そうすれば作家さんに還元できるし、読者の皆様におもしろい作品を届けられるし、会社の利益にも繋がる。そのWin-Win-Winの大事なところを担っているのだと思います。

今で言えば、「かげきしょうじょ!!」のアニメが2021年に始まるということで、アニメをたくさん見てもらいつつ、もっともっとコミックスを売りたいですね。アニメをきっかけに多くの人に作品を届けたい。あとは『花とゆめ』に若い作品がたくさん出てきているので、新作をどんどん売り伸ばしていきたいなと思っています。2020年12月から2021年2月に発売されるコミックスを2冊買っていただくとプレゼントがもらえるという企画もやっていて、そのプレゼントのうちのひとつは全ページに描き下ろしのまんがかイラストが載った小冊子なんです。いち読者として欲しいと思うプレゼントなので、これまで『花とゆめ』を支えてくれた作品を押し出しつつ、その作品の読者に新作の第1巻を読んでもらうためのきっかけをつくっていきたいですね。

今はやりきって、あとは運に任せる。

あなたに告白したいこと。

私は香川県の大学から白泉社に入社しました。遠方だったので、就活は金銭的にも時間的にも体力的にもかなり大変でした。でも、現にこうやって地方から出版社に入社することができています。最終面接は全然うまくいかなくて。記憶がなくなるくらいにテンパって落ち込みましたが、ご縁があって白泉社の一員になることができました。いま思うと、白泉社は私に合っている会社だったんだなと思います。もしかしたら、他の出版社では今みたいに働けていなかったかもしれません。

未来に何があるのかわからないので、どんなことがあってもくじけずに。そのときにできることを全力でやりきって、人事を尽くせば自ずと天命は向こうからやってくるはずです。やれることはやったら、あとは運に任せる。そんな思いきりがあってもいいのかなと思います。宣伝部の後輩も沖縄の大学出身なので、大学の地域が内定に左右することはないです。白泉社はそんなふうに開けた会社だと私は感じています。

今はやりきって、あとは運に任せる。

このPOP、つくってなかった……。

複数の雑誌全体の宣伝担当なので、宣伝業務が同時進行で重なってしまったら大変です。毎月のように書店にPOPを送らなければいけないのに、「あれ、この作品のPOPをつくってない……」って発覚したことがあって。明日までにモノがないと間に合わない状況だったんですけど、印刷所の方になんとか相談して対応していただきました。複数の雑誌の宣伝担当をしていると作品の点数も分量も多くなるので、業務内容に抜けや漏れがでることもあります。『花とゆめ』と『MELODY』、そしてそのコミックスは発売のタイミングが違うので、あまり仕事を区切れずに大変なこともありますが、経験を積み、仕事を自己管理して頑張りたいです。