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メルマガで情報発信する白泉社社員も!わりと裏話な告白!

大人気コラム 二代目白泉社e-net! 編集者が語る! 「少女マンガ」わりと裏話!?

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ヒデキは本サイトのどこかにも登場しています!

大人気コラム 二代目白泉社e-net! 編集者が語る! 「少女マンガ」わりと裏話!?

「ヒデキです...」


今月より本コラムの担当となりましたヒデキと申します。
どうぞお見知りおきください。


簡単に私のこれまでを紹介をしますと、「花とゆめ」編集部➡「別冊花とゆめ」編集部➡「LaLa」編集部と渡ってきました。少女マンガ編集部ばかりです。
「このままでは女性化するのでは…」という不安が生まれるや否や、昨春より電子書籍を扱う部署の末席を温めることとなり、電子書籍のイロハを我が身に叩きこんでいる日々です。


さて、話は昔日に戻りまして、少女マンガ編集部に放り込まれたヒデキですが、まず驚いたのは、編集部員は男ばかりだったこと。
女性もおりましたが、当時は男性6人、女性2人だったと記憶してます。
男過多の世界で少女マンガが作れるのか?
これが作れるのですねぇ。
「カラーページのピンク色とか、花のイラストとか、照れません?」


Q:「カラーページのピンク色とか、花のイラストとか、照れません?」

A:すぐ慣れます。


Q:「でも、キャッチコピーとかで女の子のセリフを真似たりするでしょ?
照れません?」

A:すぐ慣れます。


Q:「でも、懸賞の賞品で女子の服や持ち物を扱うよね?
照れません?…というか、犯罪っぽい…」

A:すぐ慣れます。
慣れますが、その時のために女性編集部員がいるわけですね。実際、女性の好みは女性に訊かないと分かりませんし。


「それなら安心だ。懸賞の賞品は女性が購入しているんだ♪」

…いや、お店まで買いに行ったのはヒデキでしたね…。下っ端ですから。
ネット購入があったらこんな苦労は…乙女の階段、のぼります。

「僕、○○○なんで」


さて、肝心の作家さんは女性です。当然、ひとつの疑問が出てきます。
「女じゃないのに、女性キャラの気持ちが分かるのか!」。
ごもっとも。
ヒデキもそれを一番恐れました。
何て返そう。
担当作家を持つ前に、いろいろ考えます。
熟慮の末の結論。それは、


「僕、乙女なんで」。


あながち嘘ではありません(?)。
しかし、これは作家さんが激怒か笑うかの賭けであります。
が、考え直す余裕はありません。
そして、ついに担当作家さんとの打ち合わせ。
「ボクオトメナンデ」。
リピートしすぎて、もはや、反論フレーズはただの文字列と化しております。
女子キャラクターの心情について云々という場面、ヒデキ、少々否定的な見解を述べます。
さあ、来い。どうだ。どうだ。
?……一向に例の反論は来ません。「それも一理ですね」という反応と共に、穏やかに打ち合わせは進み、やがて終わりました。
あれ? いいの? 男意見ですがOKですか?
そうなんですね。作家さんは、僕が男か女かなんてことは大して気にしてないのですね。
いや、気にしつつもそこは割り引いておられるのでしょう。
作家さんは、ああでもない、こうでもないと、独りきりでテニスの壁打ちの如く毎日自問自答されているのですね。ですから、まず知りたいのは、自分以外の人間はどう思うか、なのですね。性別ばかり気にしていたのは僕だけだったのか…と、帰り道に寄ったファミレスで、パフェを肴に反省の新人ヒデキなのでした。お酒、飲めないので。

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「実録・絶対にやってはいけない差し入れ」


暖かくなってきましたね。ヒデキです。花粉症です。涙目です。
バレンタインデー➡花粉➡ホワイトデー➡お花見…と、カカオと花の往復書簡みたいな今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
花より団子。
甘いモノ、元気出ますよね。
スイーツのそんな機能、私たちも仕事で使います。
そうです、作家さんへの差し入れです。
作家さんは頭を使います。お話を、あーでもない、こーでもないと繰り返して、ようやくまとめると、次は作画作業です。「シャー、シャシャシャ…」というペンの音のみが響く、あれです。
「カリカリカリカリ…」でも可です。
寝食を忘れる、とはまさにこのこと。クリエイターのサガでございます。
そんなとき、我々凡人はただ見守るだけ。お産のときに産婆さんが決まって口にする「こんなとき男は何も出来ないんだからね! どいたどいた!」の場面が思い出されます。お湯くらい沸かしますから! あっちっち。
…と、ヤケドが関の山のところ、私たちに出来る数少ないアシスト。
それが、スイーツの差し入れなのです。
作家さん、喜びますねえ。
不眠不休、同じ姿勢、同じ部屋、同じメンツ、締切の不安…。
そんなときのケーキ! 和菓子! ゼリー!ですから、気持ちがアガるのも分かります。
こちらも嬉しくなります。
となると、時には奮発して、高いモノを差し入れようとします。凡人のサガです。
ある日、とある高級ケーキをザギン(=銀座)で購入したヒデキ。作家宅へ向かいます。
「いつもの3倍くらい高級だよ! 喜ぶかな!」と興奮のうちに到着。はい、どーぞ! どう? 凄いでしょ? これ、ザギンの有名店ですよ…あれ、反応イマイチですね。何か嫌いなものでもあります?…何気なく理由を探るヒデキ。すると、


「いつもと違うもの食べて、美味しいと思います?」


え?
ええ?
そうなの?
違うから良いんじゃないの? ダメなの?
衝撃です。
敗北感を極力顔に出さず、その日はスゴスゴ退却のヒデキ。
モヤモヤを抱えながら数週間、また差し入れの日がやってきました。
今度は、その作家さんが日常的に召し上がる、ごくフツーのゼリーです。購入先は近所のスーパー。腑に落ちないままゼリーを渡しますと…。
「これこれ! これですよ!」
前回とはうって変わったリアクション。ええ、そうなの? 同じで良いの?
帰り道、真っ暗な車窓に映った自分の顔を眺めていると、ふと気づきました。


五郎丸選手です。


いや、似ているとかではなくて。


ルーティンです。
決まりごとです。
カレーを作る、飽きるまでゲームをする、掃除をする…などなど。
ちゃんと仕事をこなすためのプロセスなのですね。
その作家さんにとっては、地元のごくフツーのゼリーがテンションを上げるためのルーティンフードだったのです。
ヒデキが持ってきた高級ケーキは、単にペースを乱すモノ。いつも通りが大事。
クリエイターの気分は難しい…。気を利かせたつもりが裏目でした。涙目です。
花粉症、治らないかな…。

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よくある新人の問題行動


今年も咲きましたね、桜。
さくら、と聞くと、「おい、まくら、さくらを取ってくれ」という、映画「男はつらいよ」の一場面を思い出すヒデキです。「おい、さくら、枕を取ってくれ」と言いたかったおいちゃんです。
春眠暁を覚えず。


さて、桜が咲くとまもなくスーツに身を包んだ新入社員の登場です。
これから一年間、毎日が初めてのことばかり。緊張です。
電話の取り次ぎに慌て、業界の専門用語に振り回され、原稿の扱いに手汗をかく日々。
いま思い出しても冷や汗と脂汗で2キロは体重が減りそうです。
こんなダイエットがあったとは。


ヒデキが入社した頃は、新入社員が当時の社長から上海蟹をご馳走してもらえるイベントがありまして。
神保町の、とある中華料理店で堪能しました初上海蟹。学生時代はとても食べられません。
蟹の身の豊潤な旨味、蟹味噌の濃厚な味わい…さぞ、美味しかったでしょうなあ…。


え? 「でしょうなあ」って、覚えていないの?


覚えていないのです。その時の蟹の味も会話の中身も。
なぜ、そんな大事なことを忘れる!? お叱りごもっとも。
紹興酒。
紹興酒がついてくるのです、上海蟹に。
そしてヒデキはお酒が飲めません。
しかし、新入社員が社長の盃を拒めましょうや。いや、無理。任侠道にもとります。
おひけぇなすって。固めの盃いただきます。
結果、乾杯からの爆睡であります。社長の隣で。
同期のみんなに訊きたい。どんな味だったの。社長は怒ってたの。
新人の問題行動。爆笑問題ならぬ爆睡問題です。


新人は上司を映す鏡だよね


美食な研修があれば、会社らしい研修もあります。
雑誌作り・マンガ作りの心構えなど、有難いお話を編集長から伺う研修ですね。レクチャー。「去年と全く同じ話をしているんだろうなあ」などと不遜な態度は1ミリもとっておりませんよ! いやはや、先輩殿、勉強になります!……ぐー。
あれ?


「ヒデキくん、顔洗ってきなさい」


…やってしまいました。午睡、いや、誤睡でしょうか。
蟹も無い、酒も無い、言い訳無用な惰眠を貪ってしまったのです。
ちなみに、注意されたのが後の配属先の編集長だったりするからたまらない。
爆睡問題、その2。


マンガ編集は仁義なき戦い


さて、無事に正規採用されたヒデキの生活は昼夜逆転。
作家さんは大抵夜型なので、基本的に寝た日に起きる生活となります。
さらに、原稿の進みの遅い作家先生の仕事場へ詰めるようになると、帰れません。
ベッドで寝るなどもってのほか。椅子に座って眠ることも不可です。原稿、進まなくなりますから。ジッと監視。もう、目がチッカチカやで。
印刷に間に合わない不安と睡眠欲との戦い。ストレスで逆に眠れません。
あれ? じゃ、いいのか。って、違うから!
「上海蟹はこの時のための寝だめだったのか…」
それも違うから。
社長ごめんなさい、もう寝ません。編集長もごめんなさい。顔洗っても眠いです。
マンガ編集は仁義なき戦い。
「眠いなあ…。まくら、さくら取ってきて」…朦朧としたヒデキの夜は更けていくのでした。

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家事に連休は関係ないのにねえ


新元号、始まりますね。
令和。
「高輪ゲートウェイ」みたいな元号だったらどうしようと思っていたヒデキです。


で、10連休ですって、奥さん。
家事に連休は関係ないのにねえ。
そんな時は、奥さん、マンガですよ、マンガ。
白泉社の名作・良作・人気作がお求めやすくなっております。


しかし、連休前、マンガ雑誌編集部には「ゴールデンウイーク進行」という地獄の制作日程があるのですね。
長い休みのため、通常の作業を前倒ししなくてはいけないのです。
当然、作家さんも原稿前倒し。


死ぬのなら
ペン入れだけは
済ませてね


という一句があるほど(フィクションです)。


もちろん、「合併号」という裏技もあります。
が。
ヒデキが在籍した頃の「花ゆめ」にはそんなものありません。


「いつも通り」。


え?


「いつも通りだから」。


……はい。


さあ、大変だ。
以前も書きましたように、マンガ雑誌というものはマンガだけで成り立っているものではありません。
懸賞、読者ページ、全員サービス等と、純粋なマンガ以外の企画ページが結構あるのですね。
しかも、「花ゆめ」は連休中の発売号が創刊記念号!
いつもより気張らなくてはいけないのに、いつもより早くやれって!
この時期に創刊したのは誰だ! 責任者を呼べ!…ってな話です。

こんなコーナー作ったのは誰だ!


恨み言を言っても仕方なし。
後回しにしまくって「もう終わったっけ?」と錯覚すら覚える読者ページ「花むし」に着手です。

ヒデキ、虫はダメなんですが。


SNSが無い時代、読者との数少ない接点のひとつが読者ページ。
作品の感想、キャラクターの似顔絵、お悩み相談などのハガキが結構な数届きます。
それをヒデキの独断と偏見と疲労度によって、採用・不採用が決まります。
はい採用、はい見送り、はい採尿、あれ。
順調に片づけていき、最後の砦「お悩み相談」。
勝手に始めたはいいものの、いつも答えに時間が掛かるコーナーです。
なぜなら、ヒデキが扮するキャラクター″ボブ″と、ウサギのアシスタントが漫才しながら答える造りなので、手間が掛かるのです。
こんなコーナー作ったのは誰だ! 責任…(以下略)。


1時間経過。うーん、他の仕事をするか…。
2時間経過。うーん、他の仕事をするか…。
もうすぐ終電。うーん、帰るか……ではなく!
どうしよう、終電が出ちゃう…あとはここだけなのに…うーんうーん…出ちゃった……あ!
思いつきました。

火事場のバカヂカラ。

でも、なぜあと5分早く思いつかないの。


読めば数十秒の小さな読み物。
皆さんのお手元の「花ゆめ」には、そんな小さな苦労がページの分だけ詰まっています。


そして、今年の花ゆめです。


では、後輩たちの今年の頑張りも見てみましょう。
最新号の「花ゆめ」は創刊45周年!
500ページの特大号ときたもんだ。
これは労作です。
みんな、お疲れ!
終電逃しまくったでしょ!
体力の限界【(c)千代の富士】だったでしょ!
人気キャラクター勢揃いの表紙が素晴らしい…なになに、「10-11号合併号」。
合併号…。

がっぺいごう…。


新しい時代が始まります。

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白泉社にやってくる勇者、なわけで。


梅雨の季節ですね。
「雨が降ったらお休み」の働き方改革を提唱したいヒデキです。カメハメハ。


しかし、雨どころか槍が落ちてきても白泉社にやってくる勇者がいます。
マンガ家志望者、いわゆる「持ち込み」です。
抑え切れない表現欲求をマンガに仕立てて、生業にしていけるのかを問うてくる人々です。

情熱の炎。

あちち。

その熱量に煽られることなく、冷静に才能を見極める業務——持ち込み対応。
若手社員の大事な仕事のひとつです。


が、持ち込みさんは同時に読者でもあったりするわけで。
厳しいことも言いづらかったりするわけで。
でも、無理に持ち上げてもその人のためにならないわけで。
これ以上は、さだまさしが聞こえてきそうだからやめるわけで(「北の国から」より)。
ともかく、プロのマンガ家と対峙するわけではないのが難しくもあり面白くもあり、という業務なのです。

底知れぬ才能の片鱗を感じさせる瞳を持つ少女!……ではなく


ヒデキもやりました。
記念すべき持ち込み第1号。
雨の日に現れたのは、一見平凡ながら眼鏡の奥に底知れぬ才能の片鱗を感じさせる瞳を持つ少女!……ではなく。


子連れママ。


え?


小さな女の子を連れてます。


先輩、こういうケースってよくあるんで…?……と振り向いても誰もいません。
昼前なので。
編集部と一般社会との時間差は約3時間半。
これはインドと日本の時間差に相当します。ナマステー。


とにかく玉稿拝見。
ふーむ。
ふーむ。
…これは、ある視点から解釈したら面白いと言えなくもなくもなくもなな……舌噛んじゃった。


正直、絵もキャラもお話も要要要練習。
そもそも子育てをしつつ、今からプロを目指せるのかな…逆ならともかく…。
でも、その意気込みは買いたい。
しかし、この人は読者。
直接的な物言いをして、購読をやめられたらどうしようと思うと、言葉が遠回りに回ります。
窓の外はしとしとぴっちゃん。スーツの下は嫌な汗。ヒデキの心は涙雨。
母親の隣でじっと待つ女の子の視線が痛い。こっち見ないでぇ。
もう、単刀直入に言おう。読者をひとり、いや、ふたり失うかもしれないけど。
先輩ごめんなさい。

「顔洗ってきなさい」編集長からの金言


と、そのとき、なぜか早めに出社していた編集長(前々回登場「顔洗ってきなさい」編集長)が、「ちょっと失礼」。
???のヒデキをよそに、問題点をズバズバ指摘。
ハラハラしますが、当のお母さんは不思議と納得の様子。
結局、それから10分ほどで母娘は帰っていきました。
あらら。
編集長曰く「言うべきところはズバッと言わなきゃダメだよ」(←5割優しい言い方に変換済)。
なるほど。

向こうも人生賭けた真剣勝負なわけなんで。

そこに読者という立場は無いわけなんで。

余計な優しさはかえって傷つける…そんなドラマみたいな台詞を思い出したら、さだが聞こえてくるから以後割愛なんで。
気づいたら、外の雨はやんでいました。


今日も会社の受付には持ち込みさんの姿が。
人生賭けた大勝負。
ふと、あの時の女の子を思い出します。


お母さん、持ち込み終わって帰るとき、泣いてなかったかな。

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悲喜ゴモゴモな『校正』というオシゴト


七タですね。
彦星と織姫。
子供の頃は「1年に1回しか会えないなんて!」と純情きらりなヒデキです。


…と、ここまでに「誤字」が1か所あります。
答えは「タ」の字。
「七夕」が「七タ」になってますね。「夕」と「タ」。
個別に比較すると分かりますが、流れの中で見ると見逃します。
そんな誤字・脱字(「誤植」と言います)を探し出すのが「校正」という作業。出版社っぽい。
キャラの名前、実在の人物名、専門用語から、値段、「てにをは」まで、目に入る文字は全て間違いない・違和感ない状態にしておきます。
通常は3人がかりで確認します。それでも発生するのが誤植。
新人ヒデキも緊張しました。
校了紙(こうりょうし)という紙束で校正を行うわけですが、問題が無ければ「責任校了」というハンコを押します。「これでOK」という意味です。

このときのためらい。

押した瞬間に誤字が生まれそう。
生命保険に入った瞬間に事故に遭いそうで保険に入れないみたいな。
分かりますか。

見本誌が届いたときが一番○○○!?


が、ドキドキはその日で終わらず。
だって、本になるのはこれから。
「印刷所から見本誌が届いた時が一番嬉しい」などと、編集部密着のドキュメンタリー番組でよく耳にしますが、ホンマでっか。


もちろん、大抵は問題無しです。
んが。
やはり年に何回かは「あ…」という瞬間があるのです。
タイムマシン作って! デロリアン号はどこですか!という瞬間が。


ちなみに、これは活字のみに起こるものではないのです。

「描き文字」という名の凶器


ご存知のように、マンガには「描(か)き文字」という特殊な文字が存在します。
「ザワザワ」「誰、あの子?」「マジでー!?」といった、作家さんが自分で描いた文字です。これがなかなか厄介。
例えば教科書の中の年号や漢字の間違い、町の看板の文字やテレビの中の字幕。
油断すると絵として認識してしまうのです。
草野球の場面で、作家さんの描いたスコアボードの得点の合計が合わない…という例も。
見つけてよかった!
印刷に間に合うのかは別問題ですが。


もうひとつ難しいのが「作家さんの個性」というもの。
作風に繋がる台詞回しは、声に出すと違和感無いのですけど、文字にすると「う~ん」となったり。
これ、読者に「ミスってる」と思われないかな…。
もちろん、作家さんと相談です。

んが。

この手の表記こそ、作家さん本人の「センスの核」に触れるものなので、すんなり修正とはいきません。
土下座外交の末、直ったりそのままだったり。はあ。

文字変換って便利ですよね~


…と、ヒデキも酷い語字・脱字を沢山やっているのだろうなあ、とお思いの方もおられるでしょうが、実はそれほどでも。
それは、ある先輩が、まさかの大誤植をやってしまっているからかもしれません。反面教師。
どの程度かと言えば、世紀の、いや性器の大誤植と言えば、おのずと察せられるでしょう。少女マンガですよ?

検索しないで~。


さて、ここまでで誤字が1か所あります。
え? 3つあるって…?
じゃあ、もっとありますね………デロリアーーン!

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こんがりサマーなヒデキです。


夏といえば高校野球!…の予選です。@神宮球場。
炎天下、半裸のおじさんたちに混じって観戦です。
北京ビキニは取り締まられても、神宮半裸はオラオラ自由主義。
俺サマー。


気になるのは、ブラスバンド>選手・応援団。
選手が一所懸命なのは分かります。だって、甲子園行きたいし。
応援団が一所懸命なのも分かります。だって、応援したいし。
でも、ブラスバンドの目標は甲子園ではなくコンクールですよね?
いわば副業なのに、選手並みの運動量と汗。

このモチベーションはどこから来るのでしょう。


そんな、情熱の嵐(by西城秀樹)に揉まれながら、インドアで情熱を燃やす人たちを、ふと思い出します。

ゆめが花さく、真夏のマンガ教室


夏休み、マンガ家志望の若者たちを招待して作品造りをレクチャーする「マンガ教室」なるものを少女マンガ編集部は開催します。
プロの作家さんを講師にお招き。
若者は15人くらいでしょうか。
明日のデビューとあさっての連載を夢見て集結です。
「おらおら、つまらん話を聞かせたら、いつでも席を立つけんね。わてら、一生の問題やさかいに」という、なぜか関西系な気迫と、憧れの作家とお話ができる緊張とをヒシヒシ感じます。


しかし、そんな緊張も自己紹介まで。
マンガ制作について質疑応答が始まると場も和みます。
プロとアマチュアの差はあっても同好の士。悩むところはみな同じ。
ペン先の話。
キャラクター造りの話。
バイトとお金の話。
みんな通ってきた道、これから通る道の話ですから。


次に本日のメイン、講師陣による作画披露。
実は講師陣が最も緊張する場面。
そもそも作家さんは独りきりで描いてる方ばかり。
何十人もの初対面女子、衆人環視での作画はまずありません。
でも、作家さんも少し嬉しそう。

デッサンガ~、胴長ガ~、背景ガ~!!


その後は各自の「最新作」を編集部員が批評する時間となり、人によっては空き時間も。
それが2人になるとイラストの描き合いになります。
この様子を見る度、ヒデキはいつも「この人たちは本当に絵を描くのが好きなんだなあ」とある種の感動を覚えます。


僕ら、お話造りなら手伝えます。
キャラクター造りも助言可。
が、絵は描けません。
彼女たちのほうが遥かに上手く描きます。

けど、ヒデキら編集部員は容赦なくダメ出しです。

「デッサンが…」「胴長」「背景無さすぎ」…。br何サマー。


が、そんな教育的指導にも耐え、必死に真っ白な原稿を埋めます。
マンガが好き、絵を描くのが大好き。
「描くことに飽きない人がマンガ家になれる」という話を聞いたことがあります。
白球を追う高校球児と、白紙を埋めていくマンガ家の卵。
ヒットを求める気持ちはどちらも同じ。
好きの果てにいいことあるといいですね。


そんな情熱の少女たちのことを思い出していたら、試合はサヨナラ満塁ホームラン。
沸き立つ球児と応援団とブラスバンド。
いいことありました。


マンガ教室と掛けて高校野球で勝つと解く。
そのこころは?

必ず「こうか」はあるでしょう。


効果と校歌。
えへ。

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名作誕生へつづく、おバカな一夜のお話


9月。
セプテンバーラブ。
ヒデキです。


9月になると、編集部に長居するヤングヒデキを思い出します。YMCA。


長居にはワケが。


この時期は、半年に一度の長編作品向けのマンガ賞の締切があるのです。
さらに、10月も新人大賞という年に一度のビッグな賞の締切が。
昭和の歌謡界さながらの年末の賞レース感。


で。
受賞者は選ばれた数人ですが、その下には何百という投稿者がおります。
つまり、何百という原稿を読まなくてはいけません。

誰が?
新人のヒデキですね。

丑三つ時、ひとりぼっちで番町皿屋敷よろしく、連日徹夜で1本読了、2本、3本………あ、同じの読んじゃった……ではなく。
編集部内で何班かに分かれて、投稿原稿も何十本ごとに分けて受け持ち分を読むのです。
合理的。


といっても、ひとり50本 and more…!
さらに、プロの完成品ではありません。ここ大事。
投稿原稿はアマチュアのお手製。
台詞は手書き。人によってクセが違います。
誤字脱字もあるわけで、脳内補完が止まらない。
脳梗塞、いや脳高速(by高田文夫)状態。
中には、デッサンがちょっと…の作品もあるわけで、キャラが二重に見えてきたり。
魔球か。

頭のいいひとは気づいちゃうかも♪


心身を酷使して絞った作品。次は現役作家さんに審査して頂きます。
生原稿は1本。審査員の作家さんは5-6人。
コピー祭りです。
1本30-40ページの作品を審査員分、候補作は約10本。
豊年祭りです。ソイヤソイヤ。
コピー用紙、OK。人手、OK。お神酒もOK……こら。


手間が掛かる最大の原因は「台詞が絵の上に載っているから」でして。
見たことありませんか? 背景やキャラの上に台詞が載るアレ。
この手の原稿は、絵の上にトレッシングペーパーを掛けてそこに文字を書いているので、まんまコピーすると絵が見えません。
となると、台詞部分のコピーをとり、余白を付けてハサミで切りとり、絵柄の部分をコピーした別紙に糊で貼り1枚完成………伝わってます?
とにかく人数分を作成しなくはいけません。
頭のいい人はこの辺りで気づかれたでしょう。


深夜、マンガ賞担当の先輩+後輩3人で、ひたすら切り貼り。
が、なかなかさばけない。

「お母さん、アメリカって遠いの?」
「黙って泳ぎなさい」

…という小噺が頭をよぎる丑三つ時。ヒーハー。
外も白み始め、どうにか残り1本まで漕ぎつけたチーム・マンガ賞。
と、そのとき、後輩組のひとりが呟きました。


「見本を1本作って、それを人数分コピーしたらよかったのかなあ」


あ。


そうか。


なんで全部手作りしていたんだ。


「今、それを言うな!!」と絶叫の担当先輩。
顔は大爆笑ですが。


その後、意地の手作業で全てを貼り終えたヒデキたち。ヒーハー。


こうして、作家さん審査、最終選考、受賞作発表、担当編集付き、よみきり掲載、そして連載へと繋がります。
名作誕生へつづく、おバカな一夜のお話でした。


作業終了にあたって担当先輩がボソっと。
「次の担当者には、この改善策は黙っていような(笑)!」


多分、僕たち以外はすぐ気づきますよ。

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「あの人に会えたら…」妄想ゲーム


10月ですね
10月1日は「都民の日」。都内の公立校はお休みです。
思い出されるのは、その休日、ぼーっと観ていたTVに流れた「松田聖子さん、ご出産」のニュース。
結果、神田沙也加さんの誕生日=10月1日と覚えてしまったヒデキです。
風立ちぬ、聖子2世の聖誕祭。


かつては、「花とゆめ」懸賞ページのモデルに、ミポリンこと中山美穂さんや、栗山千明さんを起用したとか。
かつては、ドラマ「スケバン刑事」放映時の南野陽子さん(二代目麻宮サキ)が出演した歌番組に、当時の「花とゆめ」編集長が立ち会ったとか。
かつては、「パタリロ!」の魔夜峰央先生と激似!ということで、タモリさんにコメントを貰いに行ったとか。


しかし、ヒデキが新人の頃の「花とゆめ」では、そんな機会はほぼ皆無。
「あの人に会えたら…」妄想ゲームで自らを慰めます。

松本幸四郎に似ていると言われるけど、本当かな?


とはいえ、メディア化だなんだで色々な方と接触できることはあるわけです。
テレビのイメージ通りだなあ、という方もいれば、なんか違う…な方も。
一丁前に芸能人に慣れ始めたころ、ふと思い出しました。


「そういえば、自分は松本幸四郎に似ていると言われることがよくあるけど、本当かな?」


何だ急に!?でしょうが、これ、長年言われてまして。


あ、ここで言う松本幸四郎さんは先代です。今の2代目松本白鸚さんです。
更にいえば、染五郎さん(当時)にチョイ似とも…。
周り声ほどにはピンと来ていなかったのですね。
直接対面することができたら納得するのか。
しかし、マンガ業界の片隅でひっそり暮らす身に、当代一級の役者さんに会える機会などあるはずも……と思っていたら、ありました。あるんだ!?


それは、とある白泉社作品をCD付きの名台詞カルタにしようという企画。
脇役ながら存在感のあるキャラクターの声に誰を当てようかとなっていたとき、「…松本幸四郎さんかなあ…」と誰かの一言から、ダメ元でオファー→まさかの快諾→突撃収録ということに。よく思いついたね!?
ということで、えっちらおっちら、当時、幸四郎さんが公演中だった劇場まで乗り込みましたよ。

「こりゃ松本家に養子入りだわ」


ご本人の準備中、ロビーで待機するヒデキたち。
顔面相似形の相似具合、とくと拝見! ふがー!…の意気込みはヒデキのみ。
と、そこへ現れたのは、幸四郎さん!……の奥様です。
あわわわ、と、とにかくご挨拶。
「こちらはどこそこの誰それ…」と紹介するうちにヒデキの番に…と、顔をチラ見されるやクスッと微笑。
その瞬間、すべて納得。

「ああ、似てるんだ」


ご家族のリアクションが持つ説得力たるや。
もっとも、ヒデキの後ろで誰かが変顔していたのかもしれませんが、ここは思い込ませて頂きます。


収録本番でご本人と対面も、もはや他人とは思えないヒデキ。
「こりゃ松本家に養子入りだわ」…収録そっちのけで妄想働かせるヒデキ。
え、奥様、ダメですか?
家に似た顔が増えたらややこしいだけ?
ごもっとも。


“三面怪人ダダごっこ”も妄想ゲームとさせて頂きます。

大人気コラム 二代目白泉社e-net! 編集者が語る! 「少女マンガ」わりと裏話!?

来年東京でやるアレです


11月ですね。
ヒデキです。

秋まっさかり。
秋>秋川雅史>千の風……ではなくて。
秋>スポーツですね。
今年はいつまで経っても暑かったので、ようやく体を動かしたくなる頃合いになりました。
となると、運動会。
となると、アレ、アレ、何でしたっけ、五つの輪っかが目印の、世界国別対抗運動会。
来年東京でやるアレです。

体育の日も元は10月10日。
開会式を記念しての設定でしたね。
皆さん、覚えてますか。

今は無き旧国立競技場。
ヒデキは行きましたよ、国立競技場最後の日の特別イベント。
往年のサッカー選手が試合をしたり、ブルーインパルスが飛んできて1964年の雰囲気を再現したり、最後はグラウンドに降りて裸足で芝生を味わったり。
気持ちはアベベ。
皆さん、覚えてますか。

そんなヒデキは大河ドラマ「いだてん」視聴率3.7%の中のひとり。
少数派を超えた極少数派。
文字通り「大河の一滴」(by五木寛之)。
運動会が東京へやってくる様子をウオッチングです。

ナショナルイベント、みんな、お待たせ! 食いつくよね~♪


この「国民的行事」(3.7%だけど)、一応雑誌の編集部に身を置くなら、触れないわけには行きません(3.7%だけど)。
ヒデキの若かりし頃も、長野だったり、アテネだったり、シドニーだったり。
そのたびに懸賞やらカラーページやら、時には新人のよみきり提案にスポーツネタを絡めます。
ナショナルイベント、みんな、お待たせ! 食いつくよね~♪

スルー。

ちょっと?

ノーリアクション。

またこの展開!?

新人ヒデキ、何度目かの見込み違い。
いや、まあ、免疫ついてきましたけどね。
パンチドランカーとも言います。

にしても、読者からのリアクションが薄い。
読者どころか、作家さんも微妙。
時事ネタが好きそうな作家さんに「柔道、金メダルですね!」と振っても、

「はあ、そうですか。それより、このネームですが…」
「…………コピー取ってきます」。

いや、このネームは超欲しかったものですよ。
何か月、いや何年待ったことか。
それこそ4年待ちました、いや待ち過ぎたのかもしれません。
でも、金メダルなんですが。1位なんですが。
このイベントに興味無い人もいるのか…。
ヒデキもそこまで夢中ではないですよ?
けど、少しは盛り上がるじゃないですか?
明日のテレビとか大騒ぎですよ?

「みんな違ってみんないい」


十人十色とはよく言ったものです。
五つの輪の色よりも、三つのメダルの色よりも多いのが人の価値観なんですねえ。

花とゆめ、いや、白泉社マンガの読者は、その他大勢の国民とは違う嗜好で生きている。
3.7%って、弊社の読者のことかと錯覚するほどに。

さらに、少女マンガというジャンルでも、非恋愛だったり、恋愛でも同性同士だったり、およそ美少年とはいえない国王がイケメンを振り回したり。
王道とも定番ともちょっとズレてる。
「みんな違ってみんないい」
雑多な価値観の認め合い、それこそ世界運動会を越える相互理解だったり。
4年に一度?
いえいえ、毎月、いや2週間おきでにそれは味わえますよ。
白泉社のマンガ雑誌で。

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新人ヒデキシリーズ 年賀状編


12月ですね。ヒデキです。

元日から積み上げた2019年も終了間近。
しかし、365日をこなして、直ぐリセットは少々虚しい。
1月でも12月でもない折り返しの1日ください、サンタさま。
別名、空白の1日(by江川卓)。

で、歳末=年賀状です。

年賀状減少の昨今ですが、かつての(今でも)少女マンガ編集部では作っておりました、作家さんと取引先に向けて。
もちろん、新人ヒデキも担当です。
以下、手順と必須要素のご紹介。

(1) イラスト(編集部員の似顔絵は固定)
(2) 名前と肩書(会社員なので)
(3) 一言メッセージスペース(手書き用の空欄。忘れがち)
(4) 干支でダジャレ

「今年モーよろしくお願いします」(丑年)


気になるのは(4)ですが、一応順を追います。
まずはイラストの発注です。似顔絵資料用に先輩部員のご尊顔を撮影。
皆さん、いつになくキリッとなりますが、笑ってはいけない。絶対に笑っては…!
写真を作家さんに渡してイラストの打ち合わせ。各人の趣味やクセを反映します(←「会社員」としてのセンスが問われるところ)。
この時、(4)のダジャレも考え始めます。
ダジャレって?
ありますよね、「今年モーよろしくお願いします」(丑年)とか。
マンガの編集部ですからね。出来には細心の注意です。
が、自己ボツの連発で時が過ぎ。
ひねり過ぎた挙句、伝わらないものばかり。
結局、「今年モー」的なイージー作品に落ち着き。
苦い思い出となります。

督促とダメ出しが代名詞の編集者が表わせる小さな人情


イラストも上がり、一言メッセージの空欄も確認。
これ、案外重要で。
当時でも宛名面はプリンター、裏面は印刷所。
となると担当編集者の直筆部分は皆無なわけです。
小さじ一杯の人間味。
督促とダメ出しが代名詞の編集者が表わせる小さな人情、それがこの空欄なのです。
忘れると先輩からどやされます。
わいの人情どないするんや。
僕にもその人情ください。

「これ、足りなくないか」


さて、年賀状は完成。
年末進行も終わる頃、皆さん、ぽつぽつとハガキを手に取ります。
すると、ある先輩が、

「これ、足りなくないか」

???
昨年分に増量!という、通販番組のような発注しましたよ、ハガキ。
誰かが多めにキープしている…という台詞を飲み込み、

「補充します!」

まずは裏が白い年賀ハガキの確保です。
が、クリスマス後の世間にはそう残っていません。
しかも、1枚2枚ではなく。
コンビニを駆け回って掻き集め、なんとか必要分を揃えて編集部のコピー機!…ですが、印刷中に別の人の作業で止まったりするのはお互いにストレスです。ああ。
で、24時間営業のオフィスサービスショップへ。
これで安心…と思いきや、連続印刷が上手くいきません。
1枚1枚、ハガキを手で差し込む作業が発生です。ああ。
誤植王の先輩にも手伝って頂きます。
ようやく印刷が終わる頃には年が明け…いや、夜が明けそうに。
が、これでなんとか元日の到着は間に合います。
めでたしめでたし。
この後、編集部に戻って通常業務ですが。ああ。

翌年、大事な大事な手書きスペースを作り忘れることに、この時点では思いもよらないヒデキでした。

よいお年を。

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新年恒例の「作家さんと仲良くしましょう」会


明けましたね、2020年。ヒデキです。

齢をとると1年が秒。
去年のお正月なんて1週間くらい前にやったよう…あ、それは今年のか。
加齢による認知症。

さて新年。
白泉社は1月が終わるころに新年会というものがありまして。
何だ、普通の社内イベントじゃないか、とお思いでしょうが、これは日ごろお付き合いのある作家さんをご招待するもの。
正式名称を “新年作家懇親会”。
文字通り「作家さんと仲良くしましょう」な会です。桜は見ません。念のため。
特に、普段会えない遠方の作家さんは、これを機会に上京して頂き、日ごろのお礼と今後への激励を、という趣旨であります。
都内のホテルで、美味しいお食事とお酒。福引もあるでよ。
どんどん食べて、どんどん飲んで。
招待客は数百人。
お酒に酔って、人にも酔って。ういー。

作品のキャラのお面を着けてもらえれば…


通常は電話で打ち合わせのため、作家さんと初対面のケースも少なからず。
顔と名前が一致せず、ご自分の作品のキャラのお面を着けてもらえれば…何度思ったことでしょう。
もちろん、原稿が終わらないやら体調不良やらで来られない方も。
それが続くと、初対面なのに「…異動で担当が替わります」。
ハローグッバイ。

そして一次会もお開き、さー解散…とはならない。
なぜ?
だって、担当作家さんと全然話してないし!
会えてさえもいない。
実写版「ウォーリーをさがせ!」も、赤白ボーダー着てないから発見不可能。
結果、二次会です。

ヒデキ、すでに廃人


ヒデキが新人の頃の一次会は新宿。が、周りにお店が無いので、二次会は六本木へ大移動。
「西部警察」を彷彿とさせる、タクシー数珠繋ぎで予約したお店へ直行です。
が、その場のノリで参加人数が増えたりすると、緊急のお店探し。
「食べログ」も無い時代、真冬×深夜×慣れない革靴でのお店探しに疲労困憊。
皆さん、やっと着席。
ヒデキ、すでに廃人。
仲良しの作家同士で盛り上がるチームもあれば、担当編集者のもとに集うチーム、サイン帳にお互いのイラストを描き合うチーム、と楽しそう。
よしよし。
今は存分に笑いあいましょう。
明日からはまたライバル。
夏のマンガ教室の時とも似ていますが、あの場はほぼ同じキャリアの人間ばかり。
いわば同期。
しかし、ここはバラバラ。
デビューしたばかりの人、やっと読み切りが載った人、初めての単行本が出た人もいます。
それぞれの人生すごろく。
明日、ここからどこへ歩いていくのか、それとも立ち止まってしまうのか、もしくは跳ねるのか。
1年後、どこにいようと一所懸命マンガを描き続けてくれれば…カラン(グラスの氷の音)……え? 三次会?…カラオケ?…はいはい。
何度目かのお店探し。
入店、アルコール注入、一曲歌って、トイレでリバ…(割愛)、アルコール注入、一曲歌…(リピート)。
午前6時解散。
すでに二日酔いのような頭と目に朝日が…いてて。
11時からは宿泊した作家さんと打ち合わせ祭り。
帰るべきか、それとも…。
そして、ヒデキは途方に暮れる。
人生すごろく一回休み…たい。

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気分はバカ殿。「台湾」大名旅行


2月ですね。ヒデキです。
2月といえばバレンタイン。
絶賛受付中です、奥さん。

一年で最も寒い2月。
が。
台湾で開催された「台北国際書展」という出版物のフェアは熱気ムンムンでした。
10年くらい前でしょうか。
ヒデキも当時の担当作家さんがご招待を受け、同伴。

台湾はこの時二度目。
一回目も同じようなフェアでの招待です。
豪華な中華料理は美味しいし、屋台のお粥も美味しい。
豆乳は苦手だったのに、

「ウソみたいだろ…飲めるんだぜ…」 (「タッチ」より改変引用)。

しかし、何より気分を高揚させてくれるのはアテンドの方々。
通訳のほかにも、色々世話を焼いてくれます。
くるしゅうない。
気分はバカ殿。

そんな大名旅行のピークはサイン会。
ネットも発達していない時代。
本人を見られる貴重な機会です。
一所懸命覚えたと思われる日本語で、作家さんへ想いを伝える現地読者。
慣れない日本語をゆっくり声に出す様子は、「泣かない男」ヒデキを落涙させるに十分でありました…。

日本のマンガを愛してくれてありがとう


サイン会も順調なので、作家さんの付き添いを代わってもらい場内見学へ。
すると、後ろから声を掛ける少女。
逆ナン!? …と発想したヒデキは、バカ殿継続中です。
そなた、齢はいくつじゃ? 
手元を見ると、担当作家さんのサイン済み色紙。
読者でござったか。して、御用の向きは? なに、サインが欲しい?…え、僕の…?
どうも担当編集のサインをご所望のようです。
しかし、僕は裏方。
作家さんがゲストで、担当編集はおまけ。
ですから、サインはご容赦…と現地の言葉で返せるわけもなく。
どうしたものか…と迷っていると、

「サイン、お願い」

あどけない、と表現したくなる日本語です。
この子のお願いを無下に出来ようか。
日本のマンガをずっと愛してもらうためでもあります。
「先生、裏を失礼しますよ…」と、裏返した色紙に、小学生の頃、同級生の小峰くんに考案してもらったサインをサッと。

「ありがとう」と笑みを湛える少女に照れ笑いで返すヒデキ。
いえ、日本のマンガを愛してくれてありがとう。

さて、と振り向くと、今度は少年が色紙を差し出し、

「サイン」

その後、何人の読者からサインを求められたことでしょう。
アイドルはやめられないと歌ったキョンキョンを思い出します。
作家さんともども、台湾が大好きになったのは言うまでもありません。

張り切り過ぎての家老


そして10年ぶり2度目の台湾が2月なのでした(冒頭へ戻る)。

美しい思い出を胸に意気揚々と、バカ殿、入国であります!…のはずが絶不調のヒデキ。

日本で何を食べたのか。
張り切り過ぎての家老、いや、過労か。
サイン会当日になっても、うーん…な状態です。

が、サイン会が始まり、作家さんのサインを貰ってニコニコ顔の少年がこちらへ来るや…

「サイン」

みるみる顔に生気が戻るヒデキなのでありました。
ありがとう、台湾。

アイドルもやめられないでしょうが、もっとやめられないのは台湾、ですね。

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カンヅメシステム発動です!


3月ですね。
花粉症のヒデキです。
マスク品薄につき、顔面晒しての荒療治。
逆に治ったりしませんか。
人生、賭けです。
大抵負けですが。

春のある日、次こそは…に賭ける若きヒデキは、深夜の編集部で都内のホテルへ電話の鬼と化していました。逆コールセンター。
ははあ、これは「カンヅメ」用のホテル探しですね。

カンヅメとは、もちろん缶詰のことで。
進行が遅れている作家さんを、編集部近くのホテルや旅館に缶詰のごとく閉じ込めて原稿に集中してもらうアレです。
皆さんも映画などでご覧になったことでしょう。

もちろん、喜んでカンヅメに入る作家さんは稀です。
編集部も手間とお金の問題があります。
しかし、状況が許さない場合、平成でも希少部類に入るカンヅメシステム発動です。

自殺志願者と思われている…?


白泉社でも「せざるを得ない」作家さんが約おひとりいらっしゃいました。
ご本人も集中したい段階か、「よし、やりましょう」と快(?)諾。
が、ひとつリクエスト。
「窓の開く部屋をお願いします」
ああ、空気の入れ替えは大事ですよね、分かります。手配します…となり、都内のホテルを当たりますが、これが難しい。冒頭の電話魔ヒデキです。

作家さんが泊まる部屋ですからグレードは落とせません。
しかし、そのようなホテルに限って窓が開きません。
部屋が高層階なんですね。
事故防止です。

「もしもし…シングルを」
「はい、すぐにご用意できます」
「…つかぬことを伺いますが、部屋の窓は開きますか…?」
「?」
「いえ、空気の入れ替えをしたいので、窓が…」
「はあ…」

怪訝。
けげん、と読みます。

自殺志願者と思われている…?
時計を見ると、深夜1時。
電話の時間をちょっと間違えましたかね…。
失職、借金、離婚で行く末を案じた男が最後の贅沢にと、一番高い部屋に泊まってルームサービスでラスト晩餐をとった後は窓からダイブ…!という動画がホテルマンの脳内で再生1万回でしょうか。

結局、いくつか当たって低層で窓が開くところに決定です。

万歳! 予想以上の成果です!!


その後は日参。
うっかりすると、いつもの仕事場へ向かってしまい、慌てて電車を降りる羽目になったり。
「ミネラルウォーターが欲しいですねえ」と聞けば、編集部近くの酒屋で段ボールひとつ分購入し、タクシーで届ける大晦日があったり。仕事納め。
そもそも見張っているわけではないから、カンヅメとは違うんだよなあ…と口にすると、複雑な気分になるので、心にフタをしたり。

しかし、その甲斐あってか、あれれ? 少しずつ進んでますね、先生…?
宿泊日数は敢えてカウントしませんが、目標分は達成できたようです。
万歳!
予想以上の成果です。
大晦日に働いた甲斐がありました。
安堵しつつチェックアウトです。
いやー、ネームが上がって良かった良かった。

お?

ネーム?

上がったのはネームで、原稿ではない…?

そうです。
作画はこれから。
やり直しの可能性?

十分あります。
人生、賭けなんで。


はっくしょん!

花粉症の荒療治は失敗のようです。

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下っ端ヒデキについに後輩ができた!


4月ですね。
ヒデキです。

4月と言えば新入社員ですが、会社に行きたくても行けない世の中じゃポイズン、ということなので、無事に今年の新人くんたちと対面できるのでしょうか。

振り返れば、ヒデキは数年間編集部で下っ端で。雑用の日々で。
薪割り、飯炊き、子守りetc…それは「おしん」の世界だって。

が、そんな、ザ・下積みも終わりの日。
そうです。後輩が入ってきたのです。
万歳!
しかも、慶応ボーイ。
どんだけスマートでお金持っていてチャラいヤツなんだろう。
偏見を固く持って待ち構えると…。

「よろしくお願いしまぁすっ」

あれ。
挨拶の中の小さい「あ」と「つ」が気になります。
少年のように元気がいいといえばいいのですけど、え、少年…?
しかし、チャラい感じもない。
偏見崩落。
予想の斜め上のため、しばらく静観です。

観察していると、元気がいいだけテキパキ動きます。
懸賞撮影の手伝いだったり、持ち込みの対応だったり。
それは結構なのですが…

「あいた!」

「開いた」ではなく「あ、痛!」
動く分だけ、どこかをよくぶつけるようです。
こう書くと微笑ましく聞こえますが、その瞬間、微妙な空気になる編集部。
笑うほどではないし、スルーするにはよく聞こえるし。
抜けない学生気分…とも違う、何、この感じ。
先輩が小さく試される日々。
「こいつ…やべーぞ…」

誰もいない編集部から妙な音が…!?


ある日、早めに出社すると、誰もいない編集部から妙な音が聞こえます。

ふん!ふん!ふん!

恐る恐る覗くと腕立て伏せをする彼の姿が。
しかも、仮配属中なのでスーツ姿です。
単に体を鍛えるのが好きなだけらしく。
ヒマだったのでやっていたようですが、微妙な空気になるわけです。
「こいつ、やべーぞ…」

こんなムードメーカーもあったのか。

しかし、やたら記憶力はいい。
数字にも強い。
後輩顔のくせに、後輩の面倒見はいい。
そして、作家に愛される。
作家側が彼のことを珍獣やペットや玩具と思っているか定かではありませんが、良好な関係を築けていたことは事実。
もちろん、ヒット作も出します。

同じ部署にいたのは5~6年でしょうか。
それから幾年月が流れ。
昔ほど顔を合わせることもなくなりました。
お店に財布を忘れることはしょっちゅうの彼でしたが、今も忘れているのでしょうか。
まだ「あいた!」と叫んでいるのでしょうか。
先輩後輩問わず、今でも合気道技を掛けて困惑させているのでしょうか。

先日、財布の中を掃除していたところ、出てきたのはバッティングセンターの無料券。
当時、彼が獲得したものです。
ヒデキ何回目かの誕生日にプレゼントされたのでした。
貰い物は捨てられないヒデキ。
財布の中で眠り続けた無料券はさすがにボロボロ。
迷った挙句、もう一度財布へ戻しました。

二人でゴハンもしたことのない間柄ですが、定年の日にでもバッティングセンターを奢ってあげましょう。
何本でもヒットを打つがいいさ。

けど、老後に同居するシルバーテラスハウスの提案だけは勘弁してぇ。

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少女と幼女×三十路三人衆(男)=通報案件!?


連休感覚ゼロのヒデキです。
リモワのため仕事も休日も自宅にて。
職住混在。

そんな編集業も、PC上だけでは出来ない仕事がありました。
グッズプレゼント、対談、アフレコレポート等のカラーページもの。

しかし、やがてネタが尽き。
何を考えても既視感、氣志團、キラー・カーン。

そんな折、当時100万部を誇る幼年誌が目に留まり。
「この雑誌、週末にイベントやるらしいですよ」
チームを組むA先輩、B先輩も加わり「視察するか」。
ですね。
それはパクり…はい、そこ私語禁止!
「向上心」と言いましょう。

さて、当日。
会場の幕張メッセを目指します。
片っ端から吸収しまっせ! まずは作戦会議…ぐー。
危うく駅を寝過ごすところでした。

が、会場へ近づくにつれ猛烈な違和感。

家族連れ。
少女と幼女。

対して、こちらは三十路三人衆(男)。

明らかにアレですよね。ロリ的な。
通報案件。
ヒデキなどは寝不足で目が千葉…いや血走り。
誤解率120%。
なのに、入場できたのは、潔く社名を名乗って入れてもらったからでしょうか(記憶不鮮明)。

ここは舞浜駅? 夢の国?


さて、現場…うお、何、このキラキラ!
読者の子供たちの元気、楽しそうなゲーム、豪華な付録展示、これでもかと貼られたポスター、 etc。
舞浜駅? 夢の国?
そんなキラキラがヒデキを圧倒します。
作家さんもアイドルみたいな神対応。
担当編集相手のトークも冴えます。
というか、編集部員もなんでそんなに喋れるの。おかしいでしょ。

1時間ほどで退場の三十路衆。

ランチを兼ねて反省会です。
「…参考に…?」
「……」


前日は徹夜、圧倒されて帰りの電車旅は2時間。
体も心も重い。

馬に夢 託す三十路の 〇〇〇〇!?


と、そこへ競馬好きのA先輩が、

「よし、タクシーで帰ろう!」

え? 1万円くらいしません?
「今日は競馬やってるから、直近のレースを予想する。当てたらそれで払う。ハズれたら割り勘!」
あ、面白いですね、それ! やりましょう!
俄然、活気づきます。
早速、乗車。いやー、タクシーって快適。
A先輩は早くもネットで勝馬投票券購入。
あとは結果を待つのみですが、あれ、この人、常に万馬券狙いじゃなかったっけ。
月曜日は大抵苦い顔して出社だもんね…割り勘かあ…とお財布の中身を確認していると、発走です。
タクシーのラジオで競馬中継開始ですが、どの馬が勝てばよいのか。
が、A先輩の顔を見れば伝わります。
そう…そう…そのまま、そのまま! いけ、いけぇぇぇー!!!!

職場で見たことのない顔、というヤツです。

気を飲まれていると、

よっし!!!!

というガッツポーズ。
「万馬券だ」
え、勝ちました!? タダですか!? やったー!!!
3人、今日イチの笑顔です。
ああ、なんて楽しいんだろう。

遥か先の東京のビル群は、西日を浴びて銀色にキラキラ。
梅雨晴れの東京湾もキラキラ。

カラーページのネタは無いまま。
現実は変わらないままです。
が、月曜日は何とかなる気がしてたまらない。

馬に夢 託す三十路の 花とゆめ

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リモートワーク。サボりの誘惑…


在宅勤務のヒデキです。
リモートワーク。

パジャマで仕事の罪悪感、もとい在宅感。
傍にテレビやベッドがあると大変です。
サボりの誘惑。

高校3年生の頃、とある作家が書いた「受験の心得」的な本を読んだところ、

「先ずベッドを片付けろ。必ず横になって勉強が進まない」

とあり、ホントかよ、と読みながら寝落ち。
一睡即ち一浪。

てなことを思い出す在宅勤務。
さすがにいい齢ですからねえ。在宅勤務中に寝ることはないですなあ、ぐー…読み込みが遅いPC画面のグルグルを眺めていると睡魔が。
自宅即ち戦場。

今でもマンガ編集部では常設のツールです


そんなコロナショック。
しかし、ネットやスマホがあって良かったですよ。
これが無いまま在宅勤務に入ったら大変。
でも、FAXが大活躍かもしれません。

そう、FAX。

もはや20世紀の遺物感も出てきましたけど、今でもマンガ編集部では常設のツールです。

ネームや下絵を受け取って、直接書き込みができる便利さ。
耳に残る「ピーガーー」という受信音。

待ちに待ったネーム…! 今夜この受信音が鳴らなかったら、明日、編集長が来るや否や悲報をお伝えしなくてはならない。
まさに、福音。

しかし、安心するのは早すぎる。
なぜなら、FAXでは全部来るか来ないか最後まで分からない。
「10枚まで来た…その調子…よし、20枚!…あと10枚…9、8、7、6…6……6…ん…?」

ピーーガー……―しーん。
マイガッ!!

…は、よくあること。
紙が無くなっただけでありますように…という期待は、ほぼ裏切られます。
正直美しいとは言えないFAXの受信音ですが、この時ばかりは、いつまでもどこまでも響いて欲しいわけなんですねえ。

「このネーム、いとをかし」


FAXは社外でも活躍。

編集部のFAXはもちろん業務用。
上質紙を何十枚もストックできて、印刷も早いのです。
これが自宅となると、そこは家庭用。
コンパクト第一なので、大抵は感熱紙使用。
ロール型のツルっとした紙に絵を転写していくのです。
上位機種ですと自動的に一枚ごとにカットしてくれたりするのですが、当時ヒデキが使っていた機種はそれが無い。
どうなるか。
巻物。
何メートルにも渡る戯画絵巻。

時代劇さながらに、右から左へスライドさせて解読です。
「このネーム、いとをかし」
ヒデキも、いとおかし。

自宅ならまだマシで。
同じことが、出張先や旅行先で発生すると思いねえ。
ホテルの部屋までFAXを貸してくださるなら上々。
フロントで「代わりに受け取ります」などとなった日には目も当てられねえ。
延々吐き出される、(一般人には)殴り書きにしか見えないネーム。
戸惑いを隠せないホテルマンの顔が瞼の裏に浮かぶねえ。
これが、まあ、学園モノならよござんす。
エロマンガだったら……素人さんを驚かせちゃあいけねえよ。

やさぐれました。

今では家電量販店でも隅っこのFAX。
栄枯盛衰は言い過ぎか。
祇園精舎のピーガー音。
ネーム未完の理(ことわり)有り。
はい、ここ試験に出るぞ! そこ寝るな! ヒデキか!
オンラインでは、パジャマは下だけにしなさい。

FAXは消えても、消せない在宅感。

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リトルヒデキ、まさかの降臨!?


在宅勤務で太ったかと思いきや、2キロ減のヒデキです。
やはり週イチ絶食は効果ありそうですよ、奥さん。

しかし、毎日PCと向き合いメールを送り、チャットをし、エクセルをいじっていると、気づきます。

「あれ、今日誰とも喋ってない…?」

…じゃないよね!?
なんで「一人暮らしあるある」を演じてみたの!?
そうじゃなくて、最近「人が書いた文字を見ていないなあ」でしょ?

そう、それ。
今や、「アド街ック天国」で「この町のこれは!というものをお書きください」でしか見ないもんね、手書き。
よく分かったね。
キミ、もしかしてヒデキ?

絶食は、しばしば幻覚を引き起こします。

衝撃! 第三の目の覚醒方法とは…


そうなんです。
手書きの文字を長らく見ていないことに気づきましたよ、奥さん。

マンガ編集の業務のひとつに、「写植指定」というものがありまして。
ざっと言ってしまえば、作家さんが書いた台詞を、単行本などに載る活字に整えるため、写植の業者さんへ文字の大きさや種類などを伝える作業です。

作家さんの手書き文字、これがまさに百人百様でありまして。
折り目正しいものもあれば、殴り書きのようなものもあり。
草書体のようなものもあります。

で、困るのは読みにくい字かというと、それは慣れるんです。
解読不能ということだけは分かりますレベルだったのに、3回ほど写植指定で鍛えられると、「…読めた…!」となるのですね。
薄目で見ると見えてくるのです(半分本気)。
見え過ぎると細かいところが気になり、かえって分からなくなるので、ぼんやりさせると良いというわけです(半分本気)。
心眼。

見ようと思うな、思えば見えぬ。

美空ひばり「柔(やわら)」みたいになってますが。
井上陽水「夢の中へ」も可…いや、どうだろう。

手書き文字「困ったこと」ベスト3 !?


個人的に、当初戸惑ったのは「話し言葉」で。
「てにをは」が省略されたものが活字になると、助詞を足したくなるのですね。うずうずと。
が、年下の女性作家さんに「今の若い子はそう言いますよ」と言われると、はあ、そうですか、とならざるを得ず。
文字として読もうとするからダメなんだ、音として読むんだ!…音として読む、って何。 音読? 
それは違う…のですが、試しに音読してみたところ、スムーズに頭に入り。おお。
五感を使って血肉化する大切さを学びました。
役者気取り。

で、本当に困るのは「詰め込み過ぎ」。
フキダシからハミ出さんとするほど書き込まれた文字・もじ・モジ・門司。
書くほうはフリーハンドですから、いくらでも大きさを変えてしまう。
そこをヒデキたちが細かな改行やサイズ調整などで必死に均すのです。
果たせるかな、上がってきた写植をみると…ハミ出てる!
緻密な計算に基づいたのに何が間違っていたのか……む、文字サイズ:11と書いたのに12に見える…。
なんてことはない。
ヒデキが悪筆なだけでした。
メールだったら間違いなかったのに!

手書き文字を見なくなったのは、悪筆者の要請だったか。

我が身発と
知らず知らずの
ノスタルジー


字余り。

大人気コラム 二代目白泉社e-net! 編集者が語る! 「少女マンガ」わりと裏話!?

チキンナゲットと青春の苦い記憶


とあるハンバーガーショップで、チキンナゲットのキャンペーン。
必ず実食の男、ヒデキです。
15個が…え!こんなにお安く!?
ちなみにソースはマスタード一択。

「15個かあ」…一個一個数えるうちに、ふと思い出す、アシスタント集めのこと。
あの頃、ひとり集めるのにどれだけ苦労しただろう。
強引マイウェイな展開やで。

マンガ原稿を制作するにあたって、欠かせないのがアシスタントというのはご存知でしょう、奥さん。
連載の忙しさ。
トーンを貼ったり、背景を描くなどという作業まで、とてもひとりでは出来ません。
マンガ家友達2~3人に手伝ってもらうのが基本形。

が、いつネームが上がるか分からない特S級の作家さんの場合は様子が異なります。
編集部で手配です。

この日に3人必要かな…と、急遽お願いした初顔のアシスタントさんに、「すみません…ネームが遅れているので、とりあえず明日は結構で…」
ドタキャンです。
そのお怒りごもっとも。
早めに分かっていれば、その日に他の仕事を入れられたわけですから。
若いヒデキの計算違い。
青春は苦い。
マスタードは辛い。

デスカ星人の大襲来


自分の新人から→他の編集部員の担当から→他の編集部から→作家さんの紹介からの紹介からのアシスタント探し。
連チャンが可能な人を確保できないときは、あちこちに声を掛けてのシフト組みです。
コンビニ店長や。

そして掻き集めた精鋭集団。
数日間、同じ釜のメシ、ひとつ屋根の下での共同生活です。

最初の2日くらいは、意気軒昂、冗談も出ます。
夕飯は何にしよう、キャッキャウフフ♪
やはりカレーでしょう、キャッキャウフフ♪
ヒデキならリンゴとハチミツ、キャッキャウフフ♪

が、3日目を過ぎるあたりから、

「今回の原稿は全部完成するんですか…」
「いつ終わるんですか…」
「締切延長(=帰れない)はあるんですか…」

デスカ星人の大襲来です。

そんなことは、僕が聞きたい!
…という地球人の台詞を飲み込み、なけなしの小ネタで場を和ませたり。

太鼓持ち…幇間……社会へ出て実感する言葉は多い。

ペンが走り出すと、一体感が生まれる!


それでも、原稿完成という同一目標を持った同志。
作家さんのネームが完成し、ペンが走り出すと、倦怠と険悪を越えて一体感が生まれます。

ここベタ、〇〇さんお願い!
ヒデキさん、消しゴムかけて!
△△さんは花瓶描いて!大至急!
××さんは車とビル!
サザンはオールスターズ!
丑三つ時に飛び交う謎指令。

みんな、頑張って…!
一番頑張って頂きたいのは作家先生…なのですが、何と言いますか、自分自身の原稿ではないのに、焦る気持ちや、完成させたい気持ちがどこか尊い。
専業兼業はさておき、みんなマンガ家。
一枚の原稿への誠実さ。
東の空が白み始め始発の音が聞こえ、もう印刷所へ走らないと…となっても、むしろ粘るのはアシスタントさんだったり。

そんな苦労もラストページ。
みなさん、お疲れさま。
今日のところはさようなら、また来月。
解散。

15個あったナゲットもすっからかん。

また、イチからです。
原稿もアシスタントも。

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「全員参加」の社員旅行


暑さ寒さもヒデキまで。
どうも、彼岸です。
暑くて変換間違えちゃった。
手間なので今回はこのまま彼岸でいきますよ、奥さん。

世の中は相変わらずリゾート、いや、リモート。
暑くて変換間違えちゃった。

まあ、人によっては、自宅で好きな恰好、好きな音楽、好きなお菓子…で仕事ができますから、リゾートもあながち間違いではない。

【強弁】…無理な主張

そんなリモート勤務後に自室の片付けをしていた彼岸(=ヒデキ)ですが、古い写真を発見。
…おお、これは社員旅行の…。

すでに「出社」自体が懐かしソングに分類され始めた2020年下半期。
「社員旅行」などは生粋の死語。

「社員で?…家族でも友達でもないのに…!? キモっ!!」てなものでしょう。

が、白泉社でも15年くらい前まで「全員参加」で社員旅行を敢行していました。
全員ですよ、奥さん。
部署ごとに業務のピークというのはバラバラ。
もちろん、その合間を縫って日程が設定されるわけですけど、どうしたって参加の難しい人は出るわけです。
さて、どうするか。

「何が何でも来る」

【強引】…無理に物事を行うこと

全員同じバスまたは電車で目的地へ向かうわけですが、乗り遅れた場合は…夕食時までに来る。
それでも間に合わない場合は……社員かくし芸が始まるまでに来る(真偽は不明)。
それでも間に合わない場合は……就寝までに来る(真偽は不明)。
参加することに意義がある。

OMGな旅行幹事の選出


往きの車内はすでに一次会。
用意したつまみとビールその他を幹事がクイックパス。
早くも、プシュ!の快音があちこちから。
少女マンガ編集部も、社員旅行は他の会社と同じ。
車内のアルコール度数は急上昇。
呼吸だけで酔拳。

だいぶ盛り上がっているので、このまま目的地折り返しで帰ってきても皆満足なのでは、と思うこと、一度ではない。

ちなみに、旅行幹事は各部署から選出。
本来の業務ではありませんから、任命されると大抵は天を仰ぐ。
OMG。
オーマイガッ。

が、ごくたまに、本来の業務より張り切るお調子者が現れる。
幹事は旅行日程や部屋割りなどをまとめた冊子を作成するわけですが、ここに全精力を注ぎ込む。
よせばいいのに、社員と似ている有名人リストを写真入りで作成するため、徹夜で会議室に籠り、酷似写真をネット・雑誌・教科書(?)などから選び出したり。
その熱量、仕事に活かせるよね?

でもね、気持ちは分かる。
楽しいっ…!
学園祭の準備時間と一緒。
「結果が全て」の社会人が、束の間、ただただ「過程」を楽しむ。
たとえ、そのランキングが読まれずに終わってもいい。
今、この瞬間が楽しければ。

でも、一次会の車内を見ても、その後の宴会を見ても、ノリは何年ぶりかの修学旅行。
飲酒・喫煙が可なオトナの修学旅行。
天国か。
今夜は枕投げだ、無礼講。

もっとも、「無礼講」の裏の意味は知っているよね?
社会人なんだから。
調子乗ると、違う部署に飛ばされちゃうよ。

【強肩】…物を遠くまで投げられること

彼岸まで投げられたりして。

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ファミレスがレスです。


秋ってさぁ、靴下にホッとしますよねえ。
ヒデキです。

秋ってさぁ、日暮れが早くなりますよねえ。
秋の日は釣瓶落とし(つるべおとし)。
家族に乾杯。
正しくは「鶴」やけどな。
足元は冷やしたらアカンでぇ。

すぐに日が沈む、つまり、夜長。
となると出番です。
ファミレスです。
え?

近年は深夜営業も少なくなったファミレス。
ファミレスがレスです。
ファミレスレス。
夜型のヒデキには寂しい現状。
懐かしく思い出す、24時過ぎのあの空気…。
ヒマそうな店員、終電を逃した酔いどれサラリーマン、お喋りの学生たち、ノートPCと睨めっこの青年起業家、絶対起きないおじさん…。
みんな勝手でみんなイイ。
地上の無重力空間です。

24時間働けますか?


そんなフワついたファミレスは、作家さんとの打ち合わせに最適。
ボックスシートは落ち着いてお話が出来ますし、長丁場対応のドリンクバーも有難い。
お酒からデザートまで揃えているのも助かります。
モーニング、ランチ、ティータイム、ディナー、バータイム。
24時間どんな顔もできまっせ。

ということは、お店の都合で打ち合わせを切り上げることは起こらない。
都内だったりすると「23時開始・終了時刻未定」も発生。
24時制を意識していないと、うっかりお昼頃に到着です。
あれ、早すぎた?遅すぎた?

話が混み入るとエンドレス。
気合を入れ直して作家さんに向き合わねばなりません、はい。
朝日が眩しい。
24時間働けますか。

深夜のファミレスは全部見ていた!?


念のためですが、作家さんとの打ち合わせは仕事です。
スーツ姿のビジネスマンとビジネスマンが相対するのと同じです。
が、マンガ編集では、Tシャツ+ジーンズ+スニーカーで一年を過ごす人は珍しくありません
。 加えて、作家さんも私服。
周囲にはどう映るか。
20代同士なら学生・バイト仲間ともいえますし、30代なら夫婦、もしくは同僚にも辛うじて見えるでしょう。
が、年上のベテラン女性作家さんと若い男性編集の組み合わせになりますと、ふたりの関係はパっと見、

(1)母と子
(2)叔母と甥
(3)恩師とその教え子
(4)年の差不倫


となります。
なるのか。

(1)の関係にしてはやたら敬語で距離感が。
(2)にしても妙によそよそしい、これは(3)かな?…と店員ヒデコは妄想。
これこれ、(4)を期待するでない。

打ち合わせはそれぞれ。
作品内容について話したあと、担当編集の目の前でネームを作る方もいらっしゃいますし、朝ドラの感想やら恐い話やら、ほぼ雑談に終始する方も。
食事を召し上がる方からドリンクバーで終わる方まで。
ファミレスは一次会で、カラオケにハシゴする方も。そして、やはり朝日は眩しい。
24時間働きました。

そんなやり取りの中、創作の悩みを聞いては励まし、時には盛り上がり、時には険悪な空気になったり。
深夜のファミレスは全部見ていたことでしょう。
現在はオンライン打ち合わせでしょうか。
今や昔の物語。

もし、ファミレスで、それっぽい二人を目撃されたら、お勧めのドリンクバーカクテルを教えてあげて下さい。
次の作品のキッカケになるかもしれません。
仮タイトルは「無重力」。

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雑誌付録のウラ側!?


手元のカレンダーは11月ですよ、奥さん。
ヒデキです。
息も継げない早さ。
マスクで覆われていただけに。

ちなみに、ヒデキが使う卓上カレンダーは雑誌の付録で……何、カレンダーの付録…?
これ、日にちと曜日と祝日のチェックが大変な代物。
ヒデキも作ったことあります。
少女マンガ誌の付録のカレンダー、奥さんもご存知でしょう。
キャラがサンタの恰好をしたり、浴衣着たり、海水浴行ったり。
季節ネタに合わせて描き下ろし。
特別感満載の豪華付録ですわ。

が、その裏では、いつもの苦労です。はい。
日にちは合っているか。閏年でもないのに2月に29日があるぞ。
祝日は合っているか。春分・秋分の日は変わるぞ。
そもそも、水曜日の英字のスペルが間違っているぞ。
カッコつけて英語なんか使うんじゃなかった。

逃げていいですか。

その前に、作家さんへの発注も大事。
誰に何を描いてもらうのか。
〇〇先生、着物のイラストは苦手なのでは…。
順番はこれでいいのか…あ、△▽先生の連載、春に終わるのではなかったっけ。
〇×先生、2年連続でサンタ…はマズいよなあ…。

逃げていいですか。

シールブックが来た日には……


付録というのは、ことほどさように神経を遣うものですが、仕様上の制約もまた多く。
サイズはここまで、厚さはここまで、コストはいくらまで、コストコはどこまで…ああ、幻聴が。

振り返れば、カレンダーなどはまだ良いほう。
シールブックが来た日には……逃げてい(略)。

シールはとにかく「数」。
スケジュール帳に貼りませんでしたか。
ちびキャラに「デート」「テスト」「バイト」などの文字が書かれたあのシール。
Googleカレンダーには貼れない、あのシール。
これを作るには、まずイラスト集めですよ。
何十というイラスト。
自分の担当作品ならともかく、先輩の担当分ですと「ごめんなすって」と手刀をきって、イラストを出して頂きます。
その後、膨大なイラストを紛失することなく印刷所へ回して、最大の難関:色味チェック、地獄のシール色校正です。
実物見ながら、赤味減らして…描線シャープに…ヨゴレ取って×100個…え、終電から3時間経ってた!?

女子は「いろんなモノをちびちびと」が好き


マンガを載せた小冊子もありますね。
昔、某少女マンガ誌の編集長が、小冊子付録をやめて、その分のマンガを雑誌本体に付けてみたところ、見事に売り上げが下がったと嘆き節。
マンガ自体の総量はむしろ増えたのに、あれですね、「お得感」の喪失。
女子は「いろんなモノをちびちびと」が好き。
450ページ「だけ」ではダメ。
400ページと50ページがある♪ ラッキー♪
乙女心は難しい。
だから付録も難しい。


しかし、こう見ていくと、付録はとにかく「量」との闘いで。
シールのイラスト数、カレンダーの日にち、小冊子のマンガ本数…。

いや、ひとつ違うものがある。

クリアファイル。

これは、使い勝手もいいし、制作もスムーズ!

よし、1年のうち10か月はファイルだ!

ちょっと待て。
それじゃ、ファイルのおまけにマンガが付いている印象になっちゃうよ。
携帯電話のカメラ性能が上がって「カメラ付き電話」から「電話できるカメラ」に認識変わったような。
え、そんな変化無い?

付録下剋上。
夜露死苦。

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フワちゃんサンタ現る!


じんぐるべー。
わるい子いねぇが。
なまはげサンタです。
ヒデキです。

サンタを検温したら、計測モニターが真っ赤だ!
入室禁止!
あ、服が赤いのか。
トナカイも!
あ、鼻か。

クリスマスは年末の前倒し進行の真っ最中か直後。
その分、終わった後の解放感たるや。
妙なテンションになったりするのです。
クリスマス前でも。

あれは、残業のクリスマスイブでした。
時計は24時過ぎ。
翌日が休みなので、終電後はむしろ腰を据えて仕事をするヒデキ(哀)。
ひとつ上の先輩も同様の様子(哀哀)。
気づけば深夜3時。
始発帰りだな…と思っていると、「なあ、今から〇〇の家に行ってみようか。プレゼント持って」と先輩。
〇〇とは後輩くんの名です。
残業の疲労と校了後の解放感とクリスマスがもたらすフワフワしたテンションのせいか、
「いいですね!」
フワちゃん即答。
で、深夜の移動手段は?

徒歩。

え。
後輩宅までは2時間ほどの道のり。
うお。
始発まで待つ?
違う、そうじゃない(by鈴木雅之)
フワちゃんたちは歩いていくことにすでに意義を感じてしまっているのです。
ワクワクしてきました。

徒歩のWサンタ、1時間も歩くと新宿です。
さすが不夜城。
朝6時まで営業している回転寿司で小休憩。
え、先輩は回転寿司で直接注文する派ですか。
好きなネタが来るのを待つのが良いのに~。
人の好みは分からない。
あ、僕、ウニはパスで。

安いヴァンパイアごっこ!?


ご馳走様。
さ、後半戦。
東の空が白み始めました。急がないと溶けてしまう!…などと安いヴァンパイアごっこをしているうちに到着。
コンビニで長靴にお菓子が詰まった子供向け商品も購入。
迷惑サンタです。
ほっほっほー。

時刻は6時半。
マンションのチャイムを押すと、寝ぼけ声で「…はい…?」
「メリークリスマス! サンタだよ!」
「……」
「プレゼント持ってきました」
「……ちょっと待ってもらえますか」
ようやく正体が判明した模様。
いや、あくまでもサンタなんだけどね。
ほどなく後輩登場。
あれ、部屋まで上がるつもりだったのに。
「…ちょっと彼女が…」
うん、それ知ってて来たんだけどね。
部屋はNGということで、駅前のバーガーショップに移動して長靴プレゼント。
ふう、良いことをした。
なんでも、注文した大型テレビが届いたと思ったそうです(こんな時間に)。
それは悪いことをした(本当に)。
でも、僕らの長靴も悪くないから。
彼女と召し上がれ。

2020年の微妙な存在感


この散歩で何を話したかはほとんど覚えていませんが、

(1)先輩は回転寿司で注文する派。
(2)後輩のクリスマスショッピングはTV
(3)長靴のお菓子は盛り沢山

が分かった聖夜なのでした。
知らなくていいことばかり!
ただ、リモートワークをしていると、知らなくていいことは本当に知らないままなんだ…とも思ったり。

後輩諸君、師走はここから剣ヶ峰。
越えたら長靴のお菓子です。
なまはげサンタがプレゼント。

しかし、2020年の微妙な存在感。
来年は2021年じゃなくて、2020+1年がしっくりくるような。
どこかによい2020年いねぇが。

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バトル勃発!? ~タクシー編~


セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ、ヒデキです。
危うく春の七草にカウントされるところでした。八草だ。
秋は覚えられないのに、春は語呂がいいんですよね。
奥さん、召し上がりましたか。

若い頃は「草、旨いの? 草w」な感じだったのに、最近は体が欲する。
そういう年頃。
加齢と比例して高まる健康意識。
タクシーより電車、電車より徒歩ですよ。
にしても、乗らなくなったタクシーですよ。

ちなみに、タクシーやエレベーターのような密室状態は苦手なヒデキ。
都知事の要請よりずっと前から、密回避。
断密。
名誉都民になれませんか。

それでも、編集部で深夜まで働いていると使うことも間々あり。
密室もさることながら、なるべく運転手さんとのトークは回避したい。
こちとらクタクタですから。
しかし、客に寝られるとあとあと面倒だから、定期的に世間話が差し込まれます。
床屋政談に「ああ」「ええ」と母音のみで防御。
車には乗っているのに、話には乗る気なし。
抵抗の意思表示。
「大丈夫ですよ、乗車時間は30分もないんだから起きてますよ、グー…え、ここどこ!?」は、残念ながら発生する。

トーク回避のため、眠くないのに「少し寝ます」と告げて薄目で起きていたら、「お客さん、神田に旨い店がありましてね…」ということも何回か。
なぜ、起きていることが分かったのだろう?……と、街灯の明かりを反射する我が眼球に気づく。
車内の闇の中では、微かな反射も目立つものです。
人間の顔に光るもの2つ。
そりゃ気づかれますわな。
瞳を閉じるのはキスの時だけではない。

「は、はい、それは何のお店で?…あ、ラーメンですか! 今度行ってみます~♪」
狼狽からの接待モード。
客はどっちだっけ。

僕はどうやってここまで来たんだっけ…


と、ヒデキの中では牧歌的な小バトルが勃発しているタクシーですが、いろいろお世話にはなっております、はい。
作家さんの宿泊するホテルへ段ボール詰めのミネラルウォーターを届ける時も、作家さんがカンヅメになる際に大量の身の回り品をトランクに運んだ時も(作家さんは同一人物だったりする)、嫌な顔せず手伝ってくれますし。
トーク不要を察してくれる人も少なくなく。
社で契約しているタクシー会社でもなく、都内だから大した距離でもないのにサービスが良かったのは、運転手さんの性格か、ヒデキの人格か、天気が良かったからか。

そういえば、原稿を受け取りに、とある駅からタクシーに乗り込み、作家宅へ向かったことがありました。
「すぐに戻ります!」で10分くらい待っていてもらうのはよくあることで。
その日も、原稿を受け取り、作家さんとの業務連絡を済ませ、「運転手さん、お待たせしました!」となるところ、タクシーがない。
!?
!??

僕はどうやってここまで来たんだっけ…ああ、タクシーだよ!となるほどに。
どうも10分が待ち切れなかったようです。
せっかちな運転手さんだったんだな…で、気づきました。
お金払ってないけどいいのかな。