毎月3日発売、絵本の情報をお届けする月刊誌「MOE」編集部のブログです。最新号の見どころ、最新刊のご案内をはじめ、展覧会・イベント告知、編集部員の日記など、ここでしか読めない情報を発信します。
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ニイムの読書日記

2009年03月11日

ニイムの読書日記 第9回

花粉の飛散厳しき折、
皆様におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。
MOEスタッフのニイムです。

もうとっくにお忘れだと思いますが(もしくは全く知らない)、
以前このブログの穴埋めに読書日記を書いていた者です。
このたび、スタッフが全員持ち回りでブログを書くことになり、
ほかに芸もないので、また読んだ本の感想でも書かせていただこうと思います。

ご無沙汰の間、ぼくの身の上に起こったことといえば、
重度の睡眠時無呼吸症候群を宣告されたことぐらいでしょうか……。
(※別に死んだりしません)
昼は花粉で鼻水鼻づまり、
夜は随時呼吸ストップ、
四六時中脳にまんぞくに酸素がいかず、
いつも以上に茫然としている日々ですが、
こんなぼくでも生きている証として、
せめてささやかに読んだ本の感想でも書こうと思います。

たとえ特に誰からも求められていなくとも。

まずは『八番筋カウンシル』(津村記久子/著、朝日新聞出版)。

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先日芥川賞を受賞した俊英の、いわゆる受賞後第一作というやつですね。
小説の新人賞受賞をきっかけに会社をやめ、
関西の小さな商店街「八番筋」にある実家に戻ったタケヤス。
彼を中心に中学時代の同級生ホカリ、ヨシズミ、カジオら
それぞれの、三十歳前のなかなかにしんどい現実を描きます。
彼らはそれぞれに家庭、特に親との問題をかかえていたという点で
共通していますが、それとともに、この商店街を舞台とした
中学時代のある苦い体験をも共有しています。
交互に描写される、現在の状況と過去の「事件」の巧みなリンクが一つの読ませどころ。
ですが、個人的には彼らのキャラ立ちと負けず劣らずの
商店街の人々の俗物ぶりの描写が、おみごとだと思いました。
微妙に利己的な主張と、なまぬるい人情、
自分だけ抜け出すのがむずかしい人間関係のしがらみ。
このリアルさこそ、アラウンド30の主人公たちが、
大人として生きることを引き受けた時に襲ってくる、
この時代、この世間の息苦しさの象徴なのでしょう。
この商店街の人たちは、はたから見れば、ごく普通の庶民です。
でもその「普通さ」のなかにひそむ
底知れぬ得体の知れなさが、なんとも怖いと思ったことでした。

もう一冊、『悶々ホルモン』(佐藤和歌子/著、新潮社)を。

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これは、週刊マンガ誌に連載された、20代女子ライター、
人呼んで「ホルモンヌ」のホルモン食べ歩き記です。
いくら肉の本当の旨さは内臓にありといわれても、
毎週毎週欠かさずホルモン。
香ばしいオヤジが集まる飲み屋や焼肉屋で、
時に仲間と、時に一人(!)で
レバ・ハツ・ガツ・シロ・コブクロ、
はては脳みそやMOEでは書きづらい部位にまでも喰らいつく。
確かにおいしそうなのですが、
読んでるだけで尿酸値が上がりそうです。
それでも読み進めるうちに、ホルモンを焼く煙の陰に見え隠れする、
著者の自画像(どんな自画像だ)がしぜーんと浮かんできて、
近しい友人と気兼ねなく飲み食いしている気分になってくるのがいいですねえ。
ついでに酔いにまかせて
人生について語り合っちゃったりして、という気分にも。
食と人生を重ね合わせて語るなんて、
モノによっては自意識過剰が鼻についたりしますが、
この本はそんな鬱陶しさとは無縁。
「自分」を書き連ねてもちっとも嫌みにならない、
著者のエッセイストとしての天分が感じられました。
はじめ脂っこく(ホルモンが)、のち、ちょっぴりしみじみしてくる
異色の食物エッセイでした。

2008年08月27日

ニイムの読書日記 第8回

夏休みスペシャル(うそ)
「私の好きな食べ物本」

こんにちは。ようやく少し涼しくなってきたようですが、
みなさま、元気にお過ごしでしょうか。MOEスタッフのニイムです。
実はわたくし、食物関連の本が好きで、
いつしか拙宅の本棚には、「グルメコーナー」ができてしまったほどです。
でも、実際は料理を作ったり、美味しい店を訪ねるのにはあまり熱心でなく、
何というか、脳内限定食いしん坊という感じです。
ちなみに本棚にはもうひとつ「スピリチュアルコーナー」もあるのですが、
これについて語り始めると、なぜか周りから人がサーッと引いていきそうな
予感がするので、今回は割愛させていただきます。
そんなわけで、今回はおすすめ食べ物本を3冊紹介させていただきます。
なお、今回に限り、取り上げる本は新刊ではありませんので、あしからず。

では、1冊目、『ごくらくちんみ』(杉浦日向子/著、新潮社)。

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杉浦日向子さんが、思いがけぬ若さで亡くなられたときは、
市井の一ファンとしてもショックで、しばらくは大好きな彼女のエッセイやマンガを、
淋しさで胸がつかえるようで、読むことができませんでした。
しかし、しばしの時を経て、今読み返すこの本の、
お酒と食べ物の描写の芳醇なことといったら。
珍味佳肴の一品を、一話のテーマにした掌編物語集なのですが、
もうヨダレが止まりません(笑)。
とうふようと泡盛、ふなずしになぜかカルバドス、このこに白ワイン。
定番あり、冒険ありのお酒とつまみの組み合わせが、
舌の上で溶け合ったときの表現の闊達さ、豊かさ。
その美味を夢想しつつも、あらためて、お酒をこよなく愛した杉浦さんの、
短くも充ちたりていたであろう「隠居」の日々に思いが至るのです。

2冊目は、『小林カツ代はこんなにいろいろ食べてきた』
(小林カツ代/著、文藝春秋)です。

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意外にも純正大阪育ちの、カツ代さん。
やさしい両親のもと、あたたかい家庭料理で育った少女時代。
商家だったので、街のお店での外食もけっこう楽しんでいたみたい。
その両方の味のエッセンスを身心に吸収して、
今の彼女の料理研究家としての結実があるようです。
だって出てくる関西の食べ物全部、すっごく美味しそうなんですもん。
ぼくのような東京者にとっては、関東であまり見かけないビフカツサンドだとか、
きざみうどんだとか、蒸し寿司だとか、そういったものの描写に、
特に食指をそそられてしまいます。読んでいるだけで幸せになる、
とびきり上等な味わいの「食の個人史」です。

そして3冊目は、『私の作ったお惣菜』(宇野千代/著、集英社文庫)。

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文庫になる前の単行本の刊行が1986年だそうですから、
宇野先生御歳88か89の頃の作品となる勘定です。
しゃっきり元気な調理時のお写真とともに、
美味しそうな自慢料理の作り方を、伝授してくださっています。
その「自慢料理」の天心爛漫、のびやかな自慢ぶりがとても愛らしいというか。
すてきなおばあちゃま、という感じで、
まわりから大切にされているというオーラが伝わってきます。
林檎の白和えも鰯の天ぷらも、梅干入りのチャーハンも、
みんな美味しそうですが、特筆すべきは「極道すきやき」。
100グラム3千円はする和牛にブランデー、卵黄、割り下をかけまわし、
胡麻油で焼いてたべるそうです。野菜等は一切ナシ。肉だけ。
でも「みなさんが作るときは、100グラム千円くらいの肉でも、結構おいしい」そうです。
当時米寿を迎えていた宇野千代……いろんな意味ですげー!!
長寿の秘訣が、もしかしてここに!?
以上、今回おすすめの3冊でした。

2008年07月15日

ニイムの読書日記 第7回

こんにちは。お暑うございますが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
MOEスタッフのニイムです。
この編集部ブログも段々内容が充実してきたようで、
どー考えてもこの「日記」は、まわりから浮いている模様。
そろそろさりげなくフェイドアウトを……と更新をサボっていたら、
早く埋め草用に書けとの指令が。
お目汚しですが、よかったら暇つぶしに、流し読みをお願いいたします。

今回は売れっ子女性作家の作品3冊をご紹介いたします。
1冊目は『ほのエロ記』(酒井順子/著、角川書店)。

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タイトル通り、日本人ならではの、繊細かつ情趣豊かなエロ心について、
春夏秋冬四季別に、おなじみ酒井順子さんが綴ったエッセイです。
小見出しをランダムに挙げてみると、「鶴光」「タイのオカマショー」
「チャイナドレス」「混浴」「スポーツ新聞」等々……。
男女を問わず、誰しも一度くらいは、ちょっぴりエッチな好奇心を
いだいたことがあるであろうアイテムについて、
著者独特の、一歩引いた客観的かつ的確、
ややシニカルな視点で語られるのがたまりません。
昼ひなかのカフェなどで持ちだすのがはばかられるようなネタを、
旧友との一泊温泉旅行の夜に、こっそりクスクス喋りあってるような
気分にさせられる一冊でありました。

さて2冊目は『男性不信』(池松江美/著、太田出版)です。

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辛酸なめ子さんの本名名義での、半自伝小説だそうですが、
それにしても直球なタイトルですね……。
読んでみると、思春期初期からの絶えることない男性からの受難の歴史が、
これでもかこれでもかと、たたみかけるように語られてゆきます。
といっても、ネットアイドルを目指して、オフ会まで開いてみたり、
日本人男性に絶望した挙句、フランス人との交際を画策したりと、
意外とアグレッシブなのが、なんともオカシイ。
ただの妄想に終わらない行動的なキャラクターが、この著者を著者たらしめ、
現在の文筆業者としての成功を導いているのでしょう。

ラスト、3冊目は、『47都道府県女ひとりで行ってみよう』(益田ミリ/著、幻冬舎)。

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マンガ、エッセイ、川柳と、多方面で活躍する著者の、
5年間に渡る地道な国内旅行記です。
毎月1県、47回。これ、けっこうたいへんですよね。
しかも特別旅好きでもない女性が、自発的にひとりで行くって。
その固い意志とはうらはらに、文章は(併載された4コママンガも)、りきみがないのに、
どこか一片ふっと心に残るようなところがあって、とてもよかったです。
共感したのは、旅を重ねるにつれて、無理に土地土地の名物を摂取するのを
やめていくくだり。ぼくはわりと旅行好きのほうだと思うのですが、
行った先で課題のように、有名店に行ったり、
あまりほしくない名産土産を買うのが苦手なので、
その気持ちがすごくよくわかりました。

以上、おススメの3冊でした。

2008年05月28日

ニイムの読書日記 第6回

こんにちは。MOEスタッフのニイムです。
だんだんと夏めいてきて、カレーの美味しいシーズンとなってまいりました。
編集部のある淡路町から、お隣りの本の街神保町にかけては、
美味しいカレー屋さんが多い地域です。
買った本を片手にスプーン一本で食べられるカレーが、この辺りの客層に合い、
次第にカレー専門店が増殖したという説を聞いたことがありますが、
真偽のほどは……まあ詮索しないでおきましょう。
ぼくも昼食などによく利用するのですが、
辛いもの好きゆえ、つい大辛や辛さ○倍などという好事家メニューを頼んでしまい、
口内火事状態に目がかすんで、読書どころではなくなるのが常です。
汗もボトボトしたたり落ちますしね。

さて、今回もおすすめの本を勝手に3冊ご紹介させていただきます。
1冊目は『役にたたない日々』(佐野洋子/著、朝日新聞出版)。

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佐野洋子さんは『100万回生きたねこ』の作者として
あまりにも有名ですが、エッセイも非常にかっこいいです。
ここ5年ほどの雑感を季節ごとに綴ったものをまとめてあり、この間、
韓流ドラマにハマったのとガンに罹患したのが彼女の2大事件、だと思われます。
その2つを平気で並列で語るところがすごい。
相変わらず他人にも世間にも、自分に対してもきっちりシニカル。
グサッとくることドキッとすることが、これでもかと書いてありながら、
読後、胸のつかえがおりるような、一種独特の爽快感が残るのが不思議です。
特にすんごい死生観をサラッと語る終盤数章は、
「100万回」の大ファンの方なら今すぐ必読でしょう。

続いては、『薔薇は生きてる』(山川彌千枝/著、創英社発行、星雲社発売)。

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昭和初期にわずか16歳で、結核により亡くなった少女が遺した文集です。
今までに何度か版元を変えて出版され、ひそかに読み継がれてきた作品なのだとか。
短歌、日記、手紙、その他の散文からなる一冊で、作品の発表を全く前提としていない、
病床の少女の心が、とても高い純度で写し取られています。
肺を病んだ自分自身をじっと見つめ、その想いを凝縮した短歌が、特に印象的です。
穂村弘さんの解説もすばらしいです。

最後は、息抜きの一冊をば。
『女番編集長レナ』(URA EVO/著、文藝春秋)。

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ナンセンス実写ネコマンガの第2弾です。
某社社長から、突然某女性誌編集長へと抜擢されたネコ、レナの奮戦記。
ネコといえば優美な仕草と、ミステリアスな瞳が魅力的……
などという賛美とは無縁の、レナのおまぬけ編集長ぶりがいい味出しています。
KYというよりも、KM(空気を無視)なネコ気質が、トホホ的笑いを誘います。
お仕事でぐったり疲れた晩などに読むと、さらに脱力できて、よく眠れそうです。
以上、今回も駄文、失礼いたしました。

2008年05月08日

ニイムの読書日記 第5回

こんにちは。
読書と足裏マッサージが好きな、小市民MOEスタッフのニイムです。
あとの趣味は飲酒と散歩です。
過日、足裏を押されに行ったところ、いつもは胃だの腸だの、
肩や腰のツボ(反射区っていうんでしょうか)が割と痛むのですが、今回は違ったのです。
この春いちやく№1に躍り出た注目の痛みスポット、それは目!(のツボ)。
ほんとうに目の玉が飛び出るくらい痛かったので驚きました。
他の部分はすべて脆弱ですが、目だけは元来丈夫で、
今までいくら本を読んでもネットを見続けても、疲れを感じたことなどありませんでした。
しかし考えてみると、確かに最近、眼球付近の筋肉が、
「もう動くのに疲れました……」という感じでどよーんと重くなることが多かったのです。
おそるべし足裏のツボ(反射区)。ひそかに不調を教えてくれていたのに、
気づかなくてごめんなさい。ツボに謝ってもしょうがないか。
でも、編集者の商売道具でもある目は、もっと大切にせねばと反省した次第です。
ああ……また無駄なひとりごとが長くなってしまってすいません。
今月もおすすめの本3冊を。

1冊目は『タイマ』(嶽本野ばら/著、小学館)。

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乙女のカリスマの大麻事件は、まだ記憶に新しい、
彼の作品の愛読者にとってショッキングな事件でした。
あえて、その読者や世間のショックが覚めないうちに発表するため、
尋常ならざる集中力で一気に書きあげたと思われるような、強いうねりを感じさせる物語です。
一連の逮捕劇と、ストリッパーの少女との激しい恋を交互に描きつつ、
やっと光が差し込んだところでの、どんでん返し。
もちろん、フィクションである以上、事実そのままではないのでしょうが、
これほどまでに「切実な」小説を、というか文章を、言葉を、久々に読んだ気がします。
作者の覚悟のメッセージに満ちたラストは、泣けましたです!

続いて、『ウツボカズラの夢』(乃南アサ/著、双葉社)。

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母親の死と父親の再婚により、東京の遠縁の家の世話になるという形で、
体よく実家を厄介払いされてしまった、少女未芙由。
こわごわ訪れたそこは、あっと驚く高級住宅地でした。
しかしその豪邸に住まう家族の実態とは……。
というなんか昼ドラにでもありそうな出だしなのですが、
もう、あっちでグルグル、こっちでグルグル、
鳴門海峡のごとくうずまく悪意の描き方がお上手!
いやーんと思いつつも決してページをめくる手を止められないのです。
そしてラスト、主人公の未芙由は、この家の○○○○になるんですってよ! 奥様。

と、傑作ながら息の詰まるような作品が続いたので、最後は気楽に楽しめる
『ちゃぶニチュード! 日本全国マズイ店列伝』(野瀬泰申/著、幻冬舎文庫)。

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タイトル通り、著者の出合った、巷のマズイ店、とんでもない店の渾身レポートです。
マズイマズイといいつつも、その怒りを含んだ過程そのものを愛してしまっている著者は、
味覚界のドMと言えるでしょう。故中島らも氏をしのぐマズイものマニアの出現に、
心からの声援を送りたいです。

以上、今回も乱文失礼しました。
 

2008年04月08日

ニイムの読書日記 第4回

こんにちは。MOEスタッフのニイムです。
みなさんはお気に入りの読書スポットがありますか?
ぼくの場合、それは「風呂」(もちろん自宅のに限る)。
ぬるめのお湯につかって、
身体も本もふやけるまで読書にいそしむのが快感です。
ただそのせいか、蔵書に謎のシミやごわつきが多発。
とくに花粉舞いくるう今の時期は、
つねに鼻水を一条たらしながら読んでいるので、
気のせいかなんとなく書物全体がシットリしています。
人に勧めたい本があっても、貸すのがはばかられるのが残念です。

と、くだらない前フリはこの辺で、
今回も誰に頼まれたわけでもないけれど、
お勧めの本を3冊、勝手にご紹介させていただきます。

1冊目は『カルトの島』(目黒条/著、徳間書店)。

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舞台は、出産数が極度に減って、人工生殖に頼らざるを得なくなった近未来。
生命倫理に関する意見対立の軋轢から逃れるため、日本国民全員が、
どこかの宗教団体に所属しなければいけなくなる、というビックリ設定ですが、
これがゾッとする面白さでした。
昨今問題になりつつある「格差社会」を思い切りデフォルメした描写は、
最初は突拍子もなく思えるものの、読み進めるうち、
そのあやしく歪んだ世界のなかにぽっかり嵌まり込んでしまうのです。
微妙に不条理な展開も、背中のゾクゾク感をおおいに煽ります。
「絵皿の家」という一篇やラストの「ドリンク・ミー・ノット」など、
カフカや安部公房すら想起させる引力がありました。

そして2冊目は、打って変わって、揺れ動く少年少女たちを、
さりげなくも凛とした筆致で描いた
『花が咲く頃いた君と』(豊島ミホ/著、双葉社)です。

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4つの短編の主人公は、良い子悪い子普通の子(古い)、みなそれぞれ。
そしてそのそれぞれを襲う青春期のちいさな嵐の描きかたが、
この作者はじつに上手いと思います。
そのなかでも、「椿の葉に雪の積もる音がする」という一篇。
同居している祖父のひっそりとした死、という数多くの人が通過するであろう、
非日常的でありながら、物語にするにはごく平凡な体験を、
こんなにも鮮やかに切り取ることのできるその才能をリスペクトします。

3冊目は昨夏発行で、最新刊ではないのですが……
『谷川俊太郎質問箱』(谷川俊太郎/著、東京糸井重里事務所)。

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いわずとしれた詩壇の巨匠が、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」に寄せられた、
何の縛りもない自由な読者からの質問に答えた問答集です。
「なんで人は死ぬの?」といった根源的な問いから、
こんなことよく天下の大詩人に訊くなあ、みたいな下世話な質問まで、
たいへんフラットな態度で含蓄たっぷりに答える著者のすがすがしい温かさ!
人柄がにじみでて、すばらしいです。
ふと気がめいった時など、手にとって何度も湯船で(←個人的に)
読み返したくなるような一冊でした。

以上今回のお勧めでした。
 

2008年02月22日

ニイムの読書日記 第3回

みなさまこんにちは。MOEスタッフのニイムです。
弊社内事情で恐縮ですが、このたび異動により、
編集長が女性から男性に替わりました。
今まで女性スタッフばかりの中で、
気高く一輪咲いていた谷間の黒百合(それは私)。
でもこれからは、めでたく二輪です。
新編集長と、手に手を取り合い枯れないよう、
女性スタッフにのされないよう、ひっそりとがんばっていきたいと思います。

では今回も、おすすめの本を、3冊ご紹介させていただきますね。
まずは小説『阪急電車』(有川浩/著、幻冬舎)。

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兵庫県は宝塚市と西宮市を結ぶ阪急今津線を舞台に、
さまざまな人間模様を描いた、オムニバス形式の作品です。
各章のタイトルは路線の8つの駅名で、
宝塚と西宮を一往復する間にいくつかのドラマが生まれ落ちるという、
なかなかオシャレな(?)構成であります。

読後、ほんのりとすがすがしさの残る、
いわゆる“ハートフル”なお話なんですが、
そこをキュッと締めるのが、作中をただよう、なんというか、関西テイスト。
失恋と結婚式にまつわる結構きっついエピソードとか、
辛辣なツッコミ精神を持つキャラクターなどが登場して、
そこはとっても関西っぽいのですが、
でもけっしてギスギスした気持ちにはならずに読めてしまう。
それは、大阪郊外という舞台に備わった、
どこか人をつつみこむようなやわらかなムードが、
全編を通し背景に流れているからかもしれません。

関西特有の風物が特別でてくるわけでもないのに、
なぜかその土地に行ってみたくなってしまう。
その昔、宮本輝の『青が散る』や『道頓堀川』を読んで、
舞台を訪ね歩きたい気持ちに駆られた(※そしてその後実際行った)
ときのことを、なんだか思い出しました。

2冊目も関西が舞台の作品です。『禁断のパンダ』(拓未司/著、宝島社)。

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神戸の、超美味と謳われるレストランをめぐるミステリー。
作者は大阪の有名調理師学校を卒業後、
実際にフランス料理店に勤めていたという人で、
シズル感溢れる美味しそうな食味描写にかけては、もうさすが! という感じです。
が、やがて、そんな垂れたヨダレもひっこむ、おっかなーい展開に。
タイトルや装丁のかわいさでジャケ買い(カバー買い?)した方はご用心ください。

第6回『このミステリーがすごい!』大賞ということで、
受賞作ならではのアラを感じる部分もないではないのですが、
「人間と食」というテーマに、ただならぬ迫力でせまったパワーに、
こまかい文句は吹っ飛んじゃいました。

3冊目は食べ物つながりで、
『空想キッチン!』(ケンタロウ・柳田理科雄/著、メディアファクトリー)。

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なつかしのアニメに出てきたあの料理、この料理、著者二人で検証の後、
作れそうなものは実際に作っちゃいましょうという、たのしいたのしい企画本。

とりあげる食物は、小池さんのラーメン、ハイジのチーズをのせたパン、
ハクション大魔王のハンバーグ、さらにはナウシカのチコの実ときたもんだ。
他にも、そうそうこれが食べたかったんだよな?! というものが続々と。
まあこれ以上のご説明は不要というかヤボでしょう。
アニメ好きのくいしんぼだった子ども時代を持つ方、ぜひお手に取ってみては。
関係ないけど、柳田理科雄さんって本名なんだそうですね。
親御さん、命名時に何かを予感していたのでしょうか。
ナイス柳田両親! 以上今回のおすすめ3冊でした。

2008年01月28日

ニイムの読書日記 第2回

みなさまこんにちは。
昨年末、不注意で右手中指の腱を切ってしまった
MOEスタッフのニイムです。
おかげで、お茶を飲む時や読書の際、
小指ではなく中指がピーンと立つ変な癖がついてしまいました。
見苦しいので、はやく直(治)したいと思います。

そんなことはともかく、今回も最近読んだおすすめの本を3冊、
とりとめなくご紹介させていただきます。

1冊目は『キュア』(田口ランディ/著、朝日新聞社)。

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ガンの執刀医が自らもガンになるという、かなり重い設定の小説ですが、
ガンという病、そして死というものについて、
読み手のさまざまな感情を揺さぶってくる作品です。
主人公の斐川は、幼い頃から自分が
ある種のサイキックな力を持つことを知りながら、
半ば封印し、だが時にはそれを患者の治療にも半ば無意識に利用し、
ガンを「切り取る技術」に長けた医師としての地歩を築きつつありました。
そんな彼が、自身肝ガンに冒されていることを知った時、選んだ道とは?
というシリアスなテーマに加え、スピリチュアル、人によっては
オカルトと呼ぶ領域の話にも、堂々正面から切り込んでいます。
しかし、次々と現れる奇怪な人物、事件、ひとつひとつが
エピソードとしてたいへん面白く、また物語を複合的に繋いでいて、
ぐいぐい引きずり込まれてしまいます。
この種の超常的なことに肯定的な人、懐疑的な人、
どちら派にも一読の価値ありの、この作者が追い続けてきた題材の
現時点での集大成という感もある、力作だと思います。

2冊目のおすすめは、これも小説なんですが、
『立派になりましたか?』(大道珠貴/著、双葉社)。

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「自分の名前を書ければ入れる」という高校のなかの、
さらに特別な学級「トッキュウ」卒業26年ののち、
40代半ばとなったクラスメイト数名の近況を描いた連作集です。
登場人物たちにとって、かなり生き難いであろうこの世の中を、
あっぷあっぷと何とか泳いでゆくその姿が
ユーモラスで、エキセントリックで、ちょっといとおしい。
それなりに手堅い暮らしをしている人、けっこうとんでもない人、状況は色々。
でも根本的なところが、みんなゆるゆるなのです。
でもそれでもいい、生きてさえいれば。
なんて思ってしまう妙な魅力があるんですね、この人たちには。
作者の視点はあくまでシニカルですが、陽だまりの空き地のような、
のんきさのどかさが読後に残る不思議な作品でした。

ここで話は脈絡なくガラッと変わりますが、
MOE読者の多数を占めるであろう女子のみなさん、鉄道はお好きですか?
そう訊かれて、イエスという方は少ないと思います。
でも「電車(列車)に乗ること」なら、好きという人はけっこう多いのでは。
『女子鉄』(女子鉄制作委員会/著、横見浩彦/監修、
マーブルトロン・中央公論新社)はマニアックな方向に走り過ぎない、
女子ならではの鉄道の楽しみ方を教えてくれる一冊です。

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この本で知ったのは、鉄ヲタにも撮影好きの「撮り鉄」、
グッズ集めの好きな「収集鉄」などさまざまな分野があるということ。
「飲み鉄」…車内で名産品や駅弁をつまみに酒を飲む人。
 個人的には、ぜひこれになりたい!
 以上、今回のおすすめでした。

2007年12月27日

ニイムの読書日記 第1回

はじめまして、こんにちは。MOE編集スタッフのニイムと申します。
MOE編集部に来てまだ3年目ですが、もういい歳の編集部黒一点です。
でもおとめ座生まれで、動物占いではこじか、
MOE2月号鏡リュウジ先生のルネーション占星術では、
「ミステリアスな聖女」と出ましたので、
まだしばらくは乙女心いっぱいのMOE読者のみなさんと、
心の交流が可能かと思っております(根拠になっていませんね…)。

このたび、MOEweb担当スタッフからの厳命くだり、
このブログに読書日記なるものを書くことになりました。
ふだん、好きに読み散らかしている本のなかから、
MOE読者のみなさんにもおすすめしたい作品を毎回3冊ほどピックアップし、
紹介せよとのweb当局からの指令ですので、肩肘張らず気楽に、
最近読んで心に残った本の感想を書き込ませていただきたいと思います。
ちょこっとお時間があって立ち寄られた方、
もしよろしければお付き合いくださいませ。
どうにも表現の至らない部分につきましては、
しろうとのたわごとと読み流していただければ幸甚です。

ではさっそく今回のおすすめ本ですが、
1冊目は『カツラ美容室別室』(山崎ナオコーラ/著、河出書房新社)という小説です。
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舞台は、なぜかバレバレのカツラをかぶって店に出る
店長、桂孝蔵の経営する「桂美容室別室」。
著者名といい、設定といい、もしかしてギャグ話? と思ってしまいそうですが、
さにはあらず。これは、男女の微妙な友情の成り立ちについて描いた作品です。
高円寺の美容室を介して知り合った客の淳之介と美容師エリの、
恋になりそうでならない日々を、ちょっと突き放したようなクールな語り口で描いています。
主人公淳之介の、若いくせにやけに諦観を抱いたような人間観察ぶりに、
不思議と共感させられてしまいました。

2冊目は『ゴールデンスランバー』(伊坂幸太郎/著、新潮社)。
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こちらは一転スケールも大きく、
首相暗殺犯の冤罪に巻き込まれた男の、手に汗握る逃亡劇。
ハードすぎるほどハードな世界ですが、読み始めたら止まらない500ページ。
お正月のテレビに飽きて、何かがっつり読み応えのあるものを! と
活字に枯渇したときにおすすめです。
特に伊坂ファンにとっては、今までの作品のモチーフが
手を変え品を買え出てきて、刺激的ですよ。

そして、一息ついたらのんびり気分で、
旅エッセイコミック『ひとりたび2年生』(たかぎなおこ/著、メディアファクトリー)を。

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以前出た『ひとりたび1年生』の続刊ですが、
旅行中の適度なのほほん感と緊張感が絶妙にブレンドされていて、
おこたのなかで遠出気分になれます。


以上今回のおすすめでした!


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