花粉の飛散厳しき折、
皆様におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。
MOEスタッフのニイムです。
もうとっくにお忘れだと思いますが(もしくは全く知らない)、
以前このブログの穴埋めに読書日記を書いていた者です。
このたび、スタッフが全員持ち回りでブログを書くことになり、
ほかに芸もないので、また読んだ本の感想でも書かせていただこうと思います。
ご無沙汰の間、ぼくの身の上に起こったことといえば、
重度の睡眠時無呼吸症候群を宣告されたことぐらいでしょうか……。
(※別に死んだりしません)
昼は花粉で鼻水鼻づまり、
夜は随時呼吸ストップ、
四六時中脳にまんぞくに酸素がいかず、
いつも以上に茫然としている日々ですが、
こんなぼくでも生きている証として、
せめてささやかに読んだ本の感想でも書こうと思います。
たとえ特に誰からも求められていなくとも。
まずは『八番筋カウンシル』(津村記久子/著、朝日新聞出版)。

先日芥川賞を受賞した俊英の、いわゆる受賞後第一作というやつですね。
小説の新人賞受賞をきっかけに会社をやめ、
関西の小さな商店街「八番筋」にある実家に戻ったタケヤス。
彼を中心に中学時代の同級生ホカリ、ヨシズミ、カジオら
それぞれの、三十歳前のなかなかにしんどい現実を描きます。
彼らはそれぞれに家庭、特に親との問題をかかえていたという点で
共通していますが、それとともに、この商店街を舞台とした
中学時代のある苦い体験をも共有しています。
交互に描写される、現在の状況と過去の「事件」の巧みなリンクが一つの読ませどころ。
ですが、個人的には彼らのキャラ立ちと負けず劣らずの
商店街の人々の俗物ぶりの描写が、おみごとだと思いました。
微妙に利己的な主張と、なまぬるい人情、
自分だけ抜け出すのがむずかしい人間関係のしがらみ。
このリアルさこそ、アラウンド30の主人公たちが、
大人として生きることを引き受けた時に襲ってくる、
この時代、この世間の息苦しさの象徴なのでしょう。
この商店街の人たちは、はたから見れば、ごく普通の庶民です。
でもその「普通さ」のなかにひそむ
底知れぬ得体の知れなさが、なんとも怖いと思ったことでした。
もう一冊、『悶々ホルモン』(佐藤和歌子/著、新潮社)を。

これは、週刊マンガ誌に連載された、20代女子ライター、
人呼んで「ホルモンヌ」のホルモン食べ歩き記です。
いくら肉の本当の旨さは内臓にありといわれても、
毎週毎週欠かさずホルモン。
香ばしいオヤジが集まる飲み屋や焼肉屋で、
時に仲間と、時に一人(!)で
レバ・ハツ・ガツ・シロ・コブクロ、
はては脳みそやMOEでは書きづらい部位にまでも喰らいつく。
確かにおいしそうなのですが、
読んでるだけで尿酸値が上がりそうです。
それでも読み進めるうちに、ホルモンを焼く煙の陰に見え隠れする、
著者の自画像(どんな自画像だ)がしぜーんと浮かんできて、
近しい友人と気兼ねなく飲み食いしている気分になってくるのがいいですねえ。
ついでに酔いにまかせて
人生について語り合っちゃったりして、という気分にも。
食と人生を重ね合わせて語るなんて、
モノによっては自意識過剰が鼻についたりしますが、
この本はそんな鬱陶しさとは無縁。
「自分」を書き連ねてもちっとも嫌みにならない、
著者のエッセイストとしての天分が感じられました。
はじめ脂っこく(ホルモンが)、のち、ちょっぴりしみじみしてくる
異色の食物エッセイでした。