●男子と女子だったあのころ

　大人になる前だけしか味わえない恋があるのだとしたら、それは友達と過ごした日々や、学校という居場所が用意されていた頃の想い出と切り離せないものだと思う。蒼紫の森という名前の丘の風景は、男子と女子だった頃の気持ちと共にあるに違いない。男子校と女子校の春夏秋冬は、そのまま拙い恋の想い出でもあるのです。

●王子様、青年実業家、モデル、
　裏社会の実力者（全員美形！）

　誰より凛々しい少女・花鹿と、彼女の花婿候補、三人の美青年セレブ。そして、同じく見目麗しいお目付役のめくるめく伴侶探しの恋物語なのですが。実は最初からお目付役と少女の、長い両思いへの成就の道のりでもあるのが感じられるのに、切ない。つまるところ三人の男の一途で強烈な片想いの物語でもあるわけなんです。

●おじさまが好きで何が悪い!?

　ひとも羨む美貌・頭脳・育ちの良さを両手にがっちり握って生きている「倉橋さんちの数子さん」は、ばりばりのお嬢さん。でも、実は譲叔父さんに絶賛片想い中。しかも己の品行方正な外面のおかげでストレスフルな日々。食えない女に、愛する譲叔父さんをかっさらわれて、黙って涙にくれている玉じゃないところがあっぱれ。

●いつかじゃなくて、今すぐに

　「いつかきっと、いい人がみつかるよ」そうかもねと思えたとしても、納得いかないのが片想いというやつだ。美人女子高生の久美子ちゃんの恋人は、小学四年の真吾くんでなくてはならない。たしかにお似合いカップルのロマンスは物語の魅力のひとつだ。でも相思相愛の彼らに恋をするひとだっているんです。その切ないこと×２。