●秘密を知ってしまったときは

　やたら無口な辛島の誕生日に、告白を決意した佐和。恋心から、偶然見かけた辛島のあとを追いかけ、彼の秘密を知ってしまう。彼が無口な理由は、その不思議な力を秘めた声にあった。繊細でピュアなラブストーリーを読みたい人はぜひ手にとって欲しい一冊。独特の透明感に満ちた画面に、ふわりと引き込まれ心地よさは格別。

●近未来のアメリカを舞台に、記憶が交錯する

　クローン、ESP、ＮＹ市警、近未来のアメリカ。道具立ても、事件も、そこに放り込まれる登場人物たちも、これでもかとばかりにドラマチック。「ぼくの地球を守って」の世界観に連なるシリーズは、まるで映画の迫力。超能力者だって力及ばず泣くこともある。そんなときも、しっかりご飯を食べる前向きな生命力が最高だ。

●出会いは必然　力は宿命

　望みもしないのに、備わってしまった力のせいで失うものの大きさを知るカズヤは、人に幻を見せ、命をも奪う力を瞳に宿し、ＮＹで生き抜いてきた。もうひとりの、化け物と呼ばれる力を持つ、野犬のような少年との出会いは、最強の殺し屋コンビを生む。だが、なにも感じないはずの心は、ある日動きだして、日常を変えてゆく。