樋口美沙緒/作
街子マドカ/イラスト


2013年1月22日
擬人化健気受け
シリーズ名 花丸文庫
作品名 愛の裁きを受けろ!
巻数 全1巻
作家名 樋口美沙緒/作 街子マドカ/イラスト
判型 文庫判
内容 ロウクラスでカイコガが起源の郁は、体も弱く口もきけないながら懸命に生きていた。ある日、ハイクラスばかりのパーティでからまれているところをタランチュラの陶也に助けられ恋に落ちるが!?
ISBN ISBN978-4-592-87697-7


P181−182.より抜粋

『わ、か、れ、ま、しょ、う』
 別れましょう──。
 陶也には、初め郁がなんと書いたか分からなかった。
「なに? なんて書いたんだ?」
 声が震えた。本当は分かっている。けれどそう言うと、郁はもう一度書いてくれた。
『別れましょう』
「分かんねえよ。なんだよ……」
『別れましょう』
「嘘だろ?」
 陶也の声はかすれた。郁は首を横に振っている。そしてまた、しゃくりあげた。
「俺のこと嫌いになったのか?」
 いいえ、と郁は首を振る。
「じゃあどうして。俺が怖いのか?」
 違う違う、と郁は首を振る。陶也は心臓が激しく鳴り出し、耳鳴りがした。今聞いた言葉を信じたくなくて、頭の奥が、痺れるように痛む。
 郁は泣きながら、枕の下からノートを出してくる。それは、いつも陶也と郁の間で会話に使っていたノートだ。後ろのほうからノートを開き、郁はあらかじめ書いてあったらしい文章を見せた。
 ボールペンで書いたために消しゴムで消せなかったらしく、何度も何度も書き直されて、ページには打ち消し線で抹消された文章がいっぱいだった。その中で消されていない文章だけを、陶也は拾い読みした。
『陶也さん、ごめんなさい。
 おれと、別れてください。
 陶也さんのことは好きです。
 でもおれは、篤郎からもうなにも奪えません』
 陶也は喉が震え、引きつるのを感じた。

続きは文庫で読んでくださいね。