日生水貴/作
一馬友巳/イラスト


2010年2月18日
シリーズ名 花丸文庫
作品名 妖、レンタルします。
巻数 全1巻
作家名 日生水貴/作 一馬友巳/イラスト
定価(税込) 680円
判型 文庫判
内容 めったに動じない男・御岳清士郎。その彼が20歳にして人ならざる者が見えるという大困惑の事態に陥った。母から教えられた最後のよすがは『アヤカシ協会』。果たして清士郎の悩みは解決するのか!?
ISBN ISBN978-4-592-87617-5


P134−135.より抜粋

 舌に蕩けるような甘い味を感じた瞬間、咲耶は何を思う間もなく、それを啜っていた。
 ───なんて美味い。こんなに美味い気は初めてや。
 十日間、ほぼ絶食状態だったから、ではない。これは咲耶が初めて知った、最上級……いや、最高の気だった。
 あまりにも美味すぎて、眩暈がしそうだ。
 夢中でその味を貪っていると、ふいに甘露が遠のいた。
 もっと。
 もっと欲しい。
 咲耶はそれを追いかけて、舌を突き出した。するとすぐにまた、甘露を与えられる。
 嬉しくて、美味しくてたまらなくて、縋りつくように両手を伸ばした。
 ぎゅう、と温かいそれにしがみつきながら、咲耶は溢れる唾液ごと甘露を飲み続けた。



 レンジが貸してくれた浴衣を着た咲耶は、布団の上でぐったりと意識を失っている。
 咲耶をそっと腕の中に囲うと、清士郎はゆっくり顔を近づけた。
 青ざめた頬に、目の下にできた薄い隈に、長い睫毛に、わずかに寄せられている眉間に、唇を押し当ててゆく。
 そうして血の気を失っている唇に、己のそれを触れさせた。
 少し荒れているがやわらかい感触の唇に触れた途端、腕の中の身体が、微かに跳ねた。

続きは文庫で読んでくださいね。