「あの……」
ここで怯んではいけないと自分を叱咤するものの、肝心の言葉が喉に引っかかったまま。
どんな決断を純がしようとしているのかを察しているのだろう。三船は短気を起こすこともなく、黙って事の次第を見守っていた。
「あの……」
もう、たいして湧いてきもしない唾を苦労して何度か飲み込み、懸命に言葉を搾り出す。
「キス……したら、本当に食べ物をわけてもらえますか?」
「ああ、わけてやるとも。嘘はつかないさ」
隣に腰をおろしてきた三船が、甘い声で囁くように誘い文句を口にした。
自分を納得させるように頷き、純は顔を上げる。すぐ間近に、妖艶な漆黒の瞳があった。
それを目の当たりにしたとたん、純の心臓は大きく跳ねた。絡め取られる恐怖から逃げ出したくて腰が浮きそうになるのを、自制心を総動員してどうにか耐えた。
「取引は成立ってことで、いいんだな」
最終確認への返答として、純はぎゅっと目を閉じる。
自ら閉ざした視界の先に、微かな気配を感じた。間もなく、柔らかな感触と熱が純の唇に押し当てられてきた。現実的な生々しさに驚かされ、反射的に身を引こうとするものの、後頭部を三船の大きな手で押さえつけられてしまう。
「ん、んぅ……」
唇よりさらに熱を帯びた舌が差し込まれてきて、歯列をなぞる。
キス一回で果実一個、キス一回で果実一個、キス一回で……。