西野 花/作
DUO BRAND./イラスト


2015年10月20日
背徳複数攻め
シリーズ名 花丸文庫BLACK
作品名 エンジェルヒート〜vacances〜
巻数 全1巻
作家名 西野 花/作 DUO BRAND./イラスト
本体価格(税別) 657円
判型 文庫判
内容 多忙を極める主人たちの帰りを待ち、長らく続いた独り寝の日々。その罪滅ぼしのように七瀬は休暇へと連れ出された。開放的な異国の地で、箍が外れたように愛し合う三人。激甘のシリーズ第6弾!!
ISBN ISBN978-4-592-85135-6


P78〜80より抜粋

 タラップを上り、二人について乗船口から乗り込むと、そこは広々としたホールだった。左右に螺旋階段がふたつついており、上のフロアへと行けるようになっている。正面には大きな彫像が飾られていた。美しい少年が、逞しい青年に半裸で抱かれている姿だった。
「ようこそ、プリンス・アメジスト号へ」
「お待ちしておりました」
 左右に並んだ燕尾服を着た乗務員が、にこやかに英語と日本語で歓迎の言葉を述べてくる。肌の色も髪の色も様々だったが、皆一様に優れた容姿を誇っていた。
「────やあ、景彰、漣。待っていたよ」
 その時前方から、ひときわ親しげな響きが聞こえる。見ると仕立てのいいスーツを着た長身の男が、二人と握手を交わしていた。
「久しぶりだな、ライネル」
「ちっとも変わってないね。いや、また男前になったかな?」
 ライネルと呼ばれた男は、浅黒い肌をした美丈夫だった。外国人の年齢はよくわからないが、その纏う雰囲気から、景彰と同じくらいのように見える。どうやら三人の間には親交があるようだった。
「────彼が?」
 その時、ライネルが七瀬に視線を向け、うっすらと微笑む。その鳶色の瞳は一見優しげだが、目の奥に油断ならない、隙のない光が瞬いた。間違いない。この男は景彰たちと同じ世界に生きる人間だ。
「ああ。七瀬という。俺たちのエンジェルだ」
「おいで、七瀬」
 漣に呼ばれ、七瀬は戸惑いながらもライネルの前に立った。彼は七瀬の全身を素早く検分するように視線を走らせると、にっこりと人好きのする表情を浮かべる。
「初めまして七瀬。私はライネルといいます。このプリンス・アメジスト号のオーナーです」
「宗谷七瀬です。初めまして。よろしくお願いします」
 流暢な日本語で挨拶され、七瀬は求められるままに握手した。大きな手は少しひんやりとしている。
「なるほど、これは美しい。それに、とても淫らな匂いがする。さぞかし彼らに可愛がられているのでしょうね」
「っ……」
 いきなりそんなふうに言われて、七瀬の目元が赤らんだ。ライネルはそんな七瀬を見下ろしてから手を離し、「────後で、部屋にお邪魔しても?」と景彰たちに訊ねる。
「ああ、よろしく頼む」
「七瀬に、この船のことを説明しなくちゃならないしね」
 彼らは当然のように答えた。そしてライネルが手近にいる乗務員に合図をすると、恭しく近づいてきた金髪の男が礼儀正しく案内を申し出た。
「部屋に行くよ」
 漣に抱き寄せられ、階段を上がる男について船の中を進んでいく。ちらりと後ろを振り返ると、ライネルが白人の男性客に丁寧に挨拶をしているところが見えた。

続きは文庫で読んでくださいね。