西野 花/作
雪路凹子/イラスト


2015年7月22日
双子儀式
シリーズ名 花丸文庫BLACK
作品名 淫獄 〜虜の双恋華〜
巻数 全1巻
作家名 西野 花/作 雪路凹子/イラスト
本体価格(税別) 657円
判型 文庫判
内容 古来、双子を不吉と忌避し、例外なく供物として山の神に捧げてきた神流村。ところが穢れを祓うために行われる儀式とは、苛酷で淫蕩な陵辱地獄だった。哀れな双贄の行く末は……。狂虐の因習物語。
ISBN ISBN978-4-592-85131-8


P72〜P75より抜粋

 圧倒的な膂力で腕を掴まれた乙夜は、床板に放り投げられた。倒れ込んだ衝撃に短い声を上げるのと、部屋の中が驚きでざわめくのはほとんど一緒だった。
「────敦さん!?」
「外で覗いていた。そいつの片割れだ」
 何が起こったのかわからなかった乙夜だったが、顔を上げてあたりを見回すと、たった今まで覗き見していた広間に連れ込まれたことが知れた。自分を囲む村人たちの中には、見知った顔も何人かいる。そして後ろを振り返ると、そこには昼間話をした敦がいた。あの時、乙夜を慰めるように抱き締めてくれた彼は、今は怒っているような、怖い顔をして乙夜を見下ろしていた。乙夜を捕まえたのは彼だったのだ。
「どうしてここまで来た。忘れろと言ったのが、わからなかったのか」
 乙夜は今になって震えてくる。だがそんなものより先に、確認すべきことがあった。顔を巡らせ、部屋の中央に敷かれた布団の上を見やる。
 燈里の身体から男たちは離れていた。そして裸の身体を起こした彼は、凍りついたような目で乙夜を見ている。その唇が微かにわなないていた。
「────燈里……っ」
 乙夜は転がるようにして燈里の側まで行くと、その身体をきつく抱き締める。
「……燈里、燈里……っ」
 涙交じりの声で弟の名を呼ぶ。会いたかった。生きていてよかった。いや、よくぞ生きていてくれた。
「……乙夜……」
 掠れた声が燈里の口から漏れる。乙夜は腕の力を緩めると、正面から弟の顔を見た。自分と同じ、三年分だけ成長した顔。
「乙夜……っ、なんで……? なんで、ここに……っ」
 燈里の声に、どこか非難めいたものを感じ取る。彼は乙夜がここに来ることを望んではいないようだった。
「おお、これは……、敦さん、やはり双つの器を揃えなさったか」
 その時、ふいに村の男の声が割って入る。
「いや、これはめでたい」
「俺はあの時、乙夜も捕まえて贄にすべきだと言ったんだがな」
 男たちが、抱き合う自分たちを取り巻いて、何か嫌な感じの笑みを浮かべていた。状況がよく呑み込めずにいる乙夜の腕を、今度は燈里が強く握り返す。
「なんで……、なんで来たんだよ!」
「燈里……?」
 乙夜は胸を鋭い錐で突かれたような痛みを味わった。自分は燈里にあんなに会いたいと思っていたのに、彼はそうではなかったのだろうか。だが、自分は一度燈里を見捨てたも同じだ。彼が自分を許してくれなくとも無理はないと思った。
「燈里、ごめん、俺────」
 だが燈里は目の前の乙夜の話を聞かず、背後に立っている敦に向かって懇願した。
「────お願いだ敦さん。乙夜は家に帰してやって。俺が、今まで通り二人分やるから……!」
 燈里が何を言っているのか、乙夜はよくわからなかった。だが、その時脳裏にある映像が浮かんだ。川に流された双子の兄弟。山に捧げられる双つの生け贄。
「────だめだ。ここに来て、そしてこれを見られた以上、こいつはもう家には帰せない」
 無情ともいえる声が広間に響く。ああ、と絶望的なため息が燈里の唇から漏れた。
「燈里、乙夜は自分からここに来たんだ。あの時のお前のようにな。双子は、贄になる運命だ」
 そして敦は燈里から乙夜に視線を移して告げる。
「教えてやろう。お前が村にいなかった三年間、燈里がここで何をしていたのか」
 敦が目で合図をすると、それまで控えていた男たちが乙夜を燈里から引き剥がし、床板に押し倒した。
「は、放せ! 何を……!」
「乙夜!」
 燈里の手が伸ばされる。だがそれは別の男に捕らえられ、彼の身体には再び村人たちが群がり始めた。
「さっきは途中だったろう。今度はイかせてやる」
「ああ……っ、い、いや、あ、乙夜の前でっ……」
「お前がどんな淫乱になったか、乙夜によく見せてやるんだ。なに、すぐに同じようになるさ。双子なんだからな」

続きは文庫で読んでくださいね。