水戸 泉/作
yoshi/イラスト


2015年4月21日
複数攻めリーマン
シリーズ名 花丸文庫BLACK
作品名 双子の供物
巻数 全1巻
作家名 水戸 泉/作 yoshi/イラスト
本体価格(税別) 676円
判型 文庫判
内容 有名企業に就職が決まった和貴は、美しくも謎めいた社長・桐島の秘書として抜擢された。ある日、桐島の様子が日ごとに少しだけ違うことに気づき、それを口にしてしまったことから、運命が狂い始め…
ISBN ISBN978-4-592-85130-1


P144〜P147より抜粋

「浮気してただろう」
「え……?」
 突然言われて、和貴は目を瞬かせる。桐島の躰が、和貴の上に覆い被さってくる。
「ずっと見てたよ。あの男と、随分親しそうだったね」
「何を、言って……」
 意味がわからない、と和貴が否定しようとすると、不意に、桐島は和貴の鎖骨の辺りに顔を伏せた。そして。
「痛っ!?」
 ガリッ、と強く、皮膚を噛まれる痛みが和貴を襲った。歯が鎖骨に当たる鈍い音とともに。
「何、を……」
「お仕置き」
 戸惑い、反駁する和貴に、桐島は微笑みかける。花弁が開くような優しさで。
「正直に言わないと、もっと強くするよ?」
「あ……あん、た……」
 違う。桐島じゃない。桐島は、こんなことはしない。第一彼が、千歳と呑んでいた自分を尾行できたはずがないのだと、和貴は叫びたかった。
 桐島は今日、絶対に外せない会食のために、都内を出ていた。手の者を使ったというのならともかく、桐島本人が新宿に現れるはずはないのだ。そんなことをしたら、重要な取引に穴があく。
「あんた、誰なんだ! なんで、こんな……!」
「答えないならいいよ。躰に聞いてあげる」
 和貴の反論など、彼は最初から聞くつもりがあったかどうか、怪しいものだった。『桐島によく似た男』は、ゆっくりと、プレゼントにかけられたリボンを解くように、和貴の着衣を脱がせていく。
「あ、よ、せ……っ」
 少しずつ肌が露出させられていく感触に、和貴の肌がぞくりと粟立つ。今日は休日だから、和貴はスーツではなく私服を着ていた。グレーのパーカーに、ジーンズ。ラフな私服を着ると和貴は、いまだ大学生に間違えられる。そのことを『桐島』は揶揄した。
「私服も可愛いな。あの男のために着た?」
「そんな、わけ……ただ、偶然……あ、やめっ、て、下さい……っ!」
 男があまりにも桐島に似ているせいで、和貴は咄嗟に、敬語を使った。桐島に対して話すのと同じように。
 ジーンズが下着ごと引きずり下ろされていく。これが桐島でないのなら、蹴り飛ばすことだってできる。それができないのは、たとえ『別人』であったとしても、彼が桐島の顔をしているからだ。桐島の躰。桐島の声。刷り込まれてしまった本能のように、和貴はそれに逆らえない。
「あ……」
 下肢を曝された瞬間、和貴は息を詰めた。低い含み嗤いが、耳に触れた。
「なんだ」
 そこを撫でられながら囁かれ、和貴の肌がぞくりと震える。
「勃ってるじゃないか」
「ちが、ぅ……ッ」
 否定しても無駄であると知りつつ、和貴は言葉だけでも否定したかった。実際、和貴のそこは甘く勃起していた。
 ゆるりと勃ち上がったそこに、『桐島』の指が絡みつく。
「あ、ゥ………」
 食いしばった奥歯が、きりりと鳴った。歯を食いしばることで、和貴は耐えようとした。こんなふうに、自分の意思とは無関係に躰を弄ばれるのは嫌だった。それも、『桐島』ではない男に。
(どっち、なんだ……!?)
 本当にこれは、桐島ではないのか。それともやはり、自分の勘違いで、桐島本人なのか。杳として知れぬまま、行為は進んでいく。
「可哀想に。暫くしてなかったから、こんなに硬くして。ほら……」
「い、ゃ、だッ……」
 濡れ始めている先端を指でぬるぬると弄られ、和貴の雄蘂はますます大きく、硬くなった。
  「和貴がいけないんだよ。僕を疑ったりするから」
 すっかり勃ち上がったものを愛しげに撫でながら、桐島が囁く。
 その声は甘く、優しい。まさしく桐島そのものの声だ。彼の存在自体が和貴にとっては砂糖菓子のように甘い。
 なのに愛撫は、全身を痺れさせるほど、苛烈だった。

続きは文庫で読んでくださいね。