英田サキ/作
yoco/イラスト


2015年3月20日
ノワール年の差
シリーズ名 花丸文庫BLACK
作品名 メメント・モリ
巻数 全1巻
作家名 英田サキ/作 yoco/イラスト
本体価格(税別) 741円
判型 文庫判
内容 日本人のアキは麻薬カルテルの幹部に養育され、暗殺の仕事をしていた。追っ手から逃げる途中、アメリカの元軍人に助けられ…!?
ISBN ISBN978-4-592-85129-5


P44〜P45より抜粋

「すまない。大丈夫か?」
 薄暗い路地の上で、相手が掴んでいた腕を放す。驚いた。相手はあの男だった。
 エル・ボラーチョで会ったアメリカ人、エディ・アッシャー。エディは相手がアキだと気づいていない。
「怪我はないか?」
「……ないわ。でも助けて。悪い男に追われてるの」
 英語で話しかけた。驚いているエディに「上着を貸して」と頼んだ。
「上着? なんで上着なんか──」
「いいから早くっ」
 アキに急かされたエディは怪訝な顔つきでジャケットを脱いだ。アキはそれを着て、建物と建物の隙間にエディを引っ張り込んだ。
「奴が来たわ。キスして」
 素早くエディの首に両腕を回した。アキの意図を察したエディは、男の足音を聞くなり口づけてきた。 アキの腰を抱き寄せ、いかにも恋人同士がいちゃついているように振る舞ってみせる。
 追いかけてきた男は一瞬、足を止めてふたりを見たが、暗がりで抱き合うカップルの片方がまさかアキだとは思わなかったらしく、すぐに走り去っていった。
「……行ったぞ」
 重ねていた唇を離し、エディが囁く。アキは頷いたが少しの間、そのままの体勢でいた。エディも動かない。すぐそこは大通りで車が行き交い、酔客が大声で喋っているのに、この場所は奇妙な静けさに包まれていた。
 まるで世界にふたりきり。そんな錯覚を覚える。馬鹿馬鹿しい。何を感傷的になっているんだろう。

続きは文庫で読んでくださいね。