水無月さらら/作
笠井あゆみ/イラスト


2013年8月21日
両性具有純愛
シリーズ名 花丸文庫BLACK
作品名 もう翼はいらない
巻数 全1巻
作家名 水無月さらら/作 笠井あゆみ/イラスト
判型 文庫判
内容 「き、嫌い…あなたなんか、大嫌い──」「私の妻になるんだ。これは……命令だ」親友を殺した、敵国の将校に与えられる、淫らな愉悦。嫌悪しながらも、囚人ナインbは男の鮮烈な魅力の虜となるが……!?
ISBN ISBN978-4-592-85109-7


P29〜32.より抜粋

「なにを怯える? わたしは無慈悲ではないよ、お嬢さん」
 ナインbはレースのカーテンを握り締めた。
「……ぼ、僕は、お嬢さんじゃないよ」
 不覚にも、声が震えた──ただでさえ赤みの強い唇をぎゅっと噛む。
「今、なんと?」
「僕は女じゃない」
 今度はきっぱりと言って、ナインbはレースの寝間着の前を左右に破った。
「こんなのを着せるなんて…悪趣味だ」
「アァァ」
 驚きの声を上げたのはロボットのほうだった。
 伯爵はスッと顔を背けた。
「悪趣味と言われたのは生まれて初めてだ……でもね、男だろうと女だろうと、他人に肌を晒すものではないな」
 なにを体裁ぶっているんだろうとナインbは怪訝な顔をする。
「減るものじゃないし、僕はぜんぜん気にしない」
「気にしない…か」
 伯爵は静かに笑い、顔をこちらに向けてきた。
 顎をしゃくる。
「どちらにせよ、そのささやかな胸ではわたしを誘惑出来まいが」
「え?」
 ナインbは自分の身体の変化に気づいた──そこに胸の小さな膨らみを見て取るや、慌てて寝間着の前を掻き合わせた。
「こ、これって…──」
「勘違いしないでくれたまえ。それは新たに創ったものではない。どうやら身体が女性化しないよう、定期的に男性ホルモンを投与されていたらしいな。覚えはないか?」
 ない…と首を横に振ったものの、毎朝必ず飲まされていたサプリメント類にそういったものが含まれていたとしたら、ナインbに気づけるはずもない。
(そうだったのか……)
 女性パイロットは体調によって波があるから、扱いが難しいと言われる。意図的にナインbの身体は男性寄りに保たれてきたらしい。
 半ば茫然としたナインbを伯爵は軽々と抱き上げ、ベッドの上に運んだ。
「分かったかい、お前は女の子だ」
「……違う」
「手術したわたしは知っている。お前は男の子でもあるが、どちらかと言えば女の子だと思うね」
「違う」

続きは文庫で読んでくださいね。