花丸WEB新人賞発表
小説部門 優秀賞……7千円

※掲載はペンネームのあいうえお順です。

明日はきみと笑うシャラララ【20字×8000行】東京都・くもはばき

あらすじ
元コンビ芸人の放送作家・片山は、亡き相方・中本のことが忘れられず、荒んだ日々を送っていた。そんな片山の元に派遣されたハウスキーパー・広川はどこか不思議なマイペースさで片山を翻弄したが、料理上手な彼と穏やかな日々を過ごすうちに、広川は片山にとって無くてはならない存在になっていく。ある晩片山は自暴自棄を起こした末、広川と体の関係を持ってしまう。広川は頑なにそれをなかったことにしようとして、二人での生活は妙に歪になり――。
批評
亡くしてしまった相方への想いに囚われて苦しみ、けれど最後にはそれを乗り越えて新たな一歩を踏み出す主人公・片山の姿や、その片山の心を動かす広川の、過去のトラウマゆえのその健気さに胸を打たれ、涙なしには読めない作品です。感動しました。ストーリー、キャラ、構成、文章等、すべてにおいて高いレベルで仕上がっていましたが、ボリュームがありすぎるのが気になりました。主人公が元漫才コンビの片割れで、周辺もお笑い芸人やマネージャーが固めているので、関西弁を多用するツッコミの利いた会話は面白いのですが、盛り込まれたエピソードの多さもあって、万事それでは回りくどく長く感じてしまうこともあります。広川の生い立ちの一人語りとドン・キホーテとの夕食の場面は、読むには楽しいのですが、中心になる広川との恋の印象が薄まってしまうため、もう少し端折ったほうがバランスがよいと感じました。タイトルももう一考必要。

恋愛プログラム【20字×4973行】東京都・月里有希

あらすじ
一企業のトップにいたシステムエンジニアの久藤悠里は、仲間に裏切られ転落人生を歩んでいた。唯一の癒しは篠村文哉のカフェでコーヒーを飲むことだ。彼に片想いをしていた久藤だが、篠村が多額の借金を抱えカフェも経営危機にあると知ってしまう。そんな時、篠村の元上司であり、大企業グループの社長である津嶋から篠村のカフェには行くなと理不尽な牽制をされる。要求を無視すると、津嶋は篠村に貸付している借金の返済期限を突然切ってきた。抗議する久藤に、津嶋はある企業の企業データを盗めば借金をチャラにしてやると言ってきて―――。
批評
BL小説初投稿ということでしたが、文章も読みやすく、伏線の処理が非常にきれいでうまくまとまった作品に仕上がっています。悠里も津嶋も少しアクの強いキャラで、篠村の優しいけれど底を見せない感じなど登場人物にもきちんと個性がありました。社長の立場を追われて平社員に墜ちた主人公が、能力を切り札に逆転し、恋も仕事も手に入れるというストーリーは非常に読後感がよかったです。ただ、ラストにかけて書き込みが足りず、駆け足に感じるところがありましたので、もっとバランスを考えて。瑞希が都合のよいキャラになっていたのも気になりました。またタイトルがありがちすぎるのが残念。そのタイトルをラストだけに絡める手法は、少し古さを感じてしまいました。冒頭からきちんと絡めてきたほうが、もっと完成度があがったのではと思います。
第9回花丸WEB新人賞・小説部門の審査結果を発表します。今回は、優秀賞として2本の作品が選ばれました。11月から、作品をWEB上で公開する予定ですので、投稿者の方は自分の作品と読みくらべてみてくださいね。

今回は、まとまりのよい作品が多く寄せられ、とても楽しく読ませていただきました。いやまて、その割には優秀賞の数が少ない。とお思いの方がいらっしゃるかもしれません。そうなのです。よくまとまっていて読みやすいし、読後にある程度の満足感はあるその一方で、でもやっぱりなんだか物足りない、あともう一歩踏み込んでほしかった、という作品が多く、結局優秀賞は2本ということになってしまいました。

物足りなかったあと一歩とは何かといいますと、「キャラクターの成長」だったり「物語の盛り上がり」だったりいろいろなのですが、最終的には目的意識を持って作品を書いているか、ということに集約されるかと思います。
小説を書こうという時点で、誰でも伝えたいことがあるのだと思いますが、それが無意識の中にあり、「これを書く!」というところまで意識を持って書かれた作品が少なすぎるように感じました。
作品を書く際、テーマを明確に持っていますか? テーマといっても、それは決して高尚である必要はありません。ただ少し意識するだけで、キャラクターの配置や動き、物語の展開、構成などが非常に明快になります。
今回、内容はそんなに悪くないのに、タイトルが致命的につまらない作品が多かったのも、このテーマを意識することが欠けているためだと感じました。タイトルは作品の顔です。タイトルを考えるときにも重要なことだと思いますので、今後作品を書く際には気をつけてみてください。


お知らせ

花丸WEB新人賞は今回で募集を終了いたします。これまでたくさんのご応募をいただき、たくさんの素晴らしい作品と出会うことができました。本当にありがとうございました。
花丸編集部は、文庫・電子版雑誌などを通して、常に新しい作品を生み出していきますので、今後ともよろしくお願いいたします!!

第3回の花丸WEB新人大賞は行いますので、それまではお付き合いいただけますと幸いです。

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