あのパタリロが、孫悟空になって大暴れ!  『パタリロ西遊記!』も絶好調、もちろん本家本元の『パタリロ!』そして『親バカ日誌』も大人気の魔夜先生。 クールに!! ステキに!! 痛快ギャグを生み出すその秘密にググッと迫ったスペシャルインタビューです!


(C)魔夜峰央/白泉社 禁無断転載


ハチャメチャ加減が彼らの共通項!?

コミケイト(以下Q):『西遊記』のような中国の物語は以前からお好きだったんですか?
魔夜先生(以下M):普通におとぎ話や童話で読む程度で、特別 に中国に興味があったわけではないんですが、吉川英治さんの『三国志』※1(↓解説へ)は読んでましたし、雰囲気は好きですね。

Q:『パタリロ!』のキャラクターを『西遊記』の登場人物に当てはめるのは大変でしたか?
M:最初はどうなるのかわからなかったんですよ。でもいざやってみたら、もうぴったりハマりましたね! ぜんぜん違和感がないんですよ。孫悟空とパタリロは、ムダに騒ぎを起こして、それで平気なタイプ。そういうところがものすごく共通してるんですよ。それに、孫悟空のすごく強いところは、パタリロの国王として権力を振りまくところに似ていると思うんですよ。絶対的なパワーを持っている。その上でハチャメチャだから、まわりがひっかき回されるんですよね。後で考えてみると。

Q:「やってみたらぴったりだった。」というところがスゴいですね。パタリロの孫悟空はまさにハマり役!
M:そうですね。最初はいろいろ考えたんですよ。いっそのことバンコランを孫悟空にしてみようかとか(笑)。でもそうなると、1本だけ読みきりだったら面白いんでしょうが、ずっと描いていくとなるとかなりきついかなと。

Q:バンコランの悟空(笑)! 見てみたい気もしますねぇ。新たに『西遊記』だけのキャラクターを作ることについては?
M:結局物語が出来上がってますからね。猪八戒(ちょはっかい)とか沙悟浄(さごじょう)を『パタリロ!』のキャラでとも思ったんですが、ちょうど合うキャラがなかったので、新たに作ってみようかなと。まあ、三蔵のマライヒはあれでよかったと思いますけど。

Q:マライヒのかわいいところがよく出てますよね。『パタリロ西遊記!』を描くにあたって、資料集めでのご苦労などはありますか?
M:基本的にあまり資料は使わないんですが、本屋さんに行ったら、10冊セットの『西遊記』※2(↓解説へ)があったので購入しました。それはかなり詳しいもので、漢詩の部分がすごく多いんですよ。景色を表現したり、心情を表現してあったりして、多分中国語で読むとすごくいいんでしょうけど、日本語訳だと読みづらい。面白いことは面白いんですけど。だから、まあ『パタリロ西遊記!』では大筋のところだけ取り上げてってかんじで。それから白泉社の前社長さんが、中国旅行の時に見つけてきてくれた『西遊記』の本や、昭和20年代、30年代に描かれたおとぎ話としての『西遊記』も参考になりました。あと、たまたまデパートで中国展をやっていて、中国的な絵のスケッチのやり方だとか、美人画の画集もあって、そんなものも参考にしました。中国らしさを出そうと。

Q:確かに背景や服装などは普段の『パタリロ!』とはまた違った雰囲気で楽しめますね。調べているうちに"これは面 白かった!"という文献はありますか?
M:物語自体楽しいものなんですけど、文庫本で10冊読む人はなかなかいないですから、まずはおとぎ話から読み始めると、結構楽しめるんじゃないでしょうか。

Q:読み進めていくと、いろいろなエピソードがありそうですね。先生が『西遊記』の中で、一番好きなキャラ、また、好きなエピソードなどがありましたら教えてください。
M:実はまだ、全部読んでないんですよ。読んでも忘れちゃうんで(笑)。少し先まで読んで、その話をかみくだいて漫画で描くっていう形なんで。ただ、金角・銀角は面 白いですよ。すごく醜い妖怪なんですけど、実際は悪人じゃないんです。初めは天界で孔子様の弟子ですから。でもまあ、説明がましいのもなんですから、下界に降りて悪さをしてやっつけられたっていうわかりやすいストーリーにしていこうとは思ってますけどね。

Q:これから『パタリロ!』のキャラが登場する予定はありますか?
M:今のところはないですけど、ヒューイットやタマネギなんかは、どこかで出していきたいですね。ただ、無理に出すとかではなくて、必然性が出てきたら。

Q:楽しみにしててね。ってかんじですか?
M:ええ、まあ。でも、ホントに出るかどうかはね。先のことはわかんないですよ(笑)。

 
パタリロは最初三つ子だった!?

Q:ご存じ『パタリロ!』について。超長寿連載作品ですが、このまま100巻、200巻と続けちゃいますよね?
M:あのー、単純計算で、コミックスが年に2冊出るんですよ。だから、100巻まであと15年。それができたらスゴいですよね。200巻だったら、プラス50年ですか。私、幾つになってるんだってかんじですね(笑)。連載当初は10年続けようっていってたんですけど、もう23年! まあ、描かせてもらえるなら、描くつもりで、100巻はいきたいです!

Q:連載23年ともなると、いろいろなことがあったのでしょうね
M:実は連載始まってから、2回しか休んだことがないんですよ。それも、編集の方から休んでくれって言われて。だから、自分からは休んだことがない! 遅れたこともないし。

Q:それは本当にすごい! では23年もの付き合いになるパタリロについてはいかがでしょう。 やはり先生と似ている部分もあるのでしょうか?
M:自分の中にないものは描けませんから、自分の個性をカットグラスとすると、いろんな面 があるわけですよ。パタリロ的側面もあれば、バンコラン的側面もあると。そこをチョイスしていって描く。ですから、自分でこういうものを描きたいと思っても、自分の中になければゼッタイ描けないし、描けるからにはどっかにあるんだろうなと。ただ私自身、こんなにセコくはないと思いますが(笑)。

Q:先生の中の「パタリロ的側面」とは具体的にどんなところですか?
M:ユーモアは欠かさないっていうか、何かジョークが言える状況であれば言いますね。いわゆるオヤジギャグじゃなくて。上手くつっこめるところは突っ込むみたいな。家族の中でもやってます。息子とは感性が似ているので、ふたりで何かやっていると、ワイフと娘がうけて笑ってます。

Q:楽しそうなご家庭ですね!
 パタリロやバンコランなど、キャラクターのビジュアル的なモデルはいるのですか? バンコランはやっぱり先生ご自身がモデル?

M:いやー、そこまでいっちゃうとねぇ(笑)。でも、かっこよくありたいとは、思いますけどね。これは石ノ森章太郎先生※3(↓解説へ)がおっしゃってたんですが、「漫画家っていうのは、常にかっこよくなければいけない。かっこよくないと、かっこいい主人公は描けない」と。それは確かだなぁと思って。石ノ森先生も自分なりの美学みたいなものを持ってらして。だから、ああいった、鮮烈なキャラクターができたんだと思うし。あと、モデルというわけではないんですが、キャラの名前の由来はありますね。

Q:由来!? ぜひ、お聞きしたいですね。パタリロにはどんな意味があるのですか?
M:パタリロはね、最初、この顔の三つ子の兄弟を考えてたんですよ。パタリロ、ヨタリロ、マッタリロって(笑)。ヨタリロっていうのは、別 のキャラクターで出しましたけど。三つ子だと絵描くのが大変だなぁと思ってひとりにしました。彼の名前は当初「パタ」だけだったんですけど、なんとなくゴロがいいからって「リロ」がついたんです。バンコランはディクスン=カーの推理小説に出てくる「ヴァンコラン警視」っていう名前がかっこよかったんで拝借しました。マライヒはもっと複雑で、最初は殺し屋としてバンコランに殺される役だったんですよ。殺し屋だから、おどろおどろしい名前にしようと思って『ルパン』の「マルライヒ」っていうのと『レンズマン』シリーズの「アイヒ族」っていう不気味な宇宙人とを混ぜてマライヒと。

Q:パタリロが三つ子! すごそうですね。では、タマネギたちにも何か由来があるんですか?
M:タマネギはねぇ、途中から出てきて。ひとりかふたりだったのが、どんどん増えて、部隊になって、今400人ぐらいですか(笑)。これだけやってるとねぇ、だんだんつじつま合わなくなってくるんですよ(笑)。とにかく1本描いたら忘れないと次のが描けないですから。昔こういうストーリー描いたかなとかぜんぜん覚えてないんで、最近は娘に聞いてますね。娘が全部読んで覚えててくれるんですよ。「こういうセリフがあったよ」とかね。

Q:娘さんも漫画を描いてらっしゃるとか。そうなると先生はやはり漫画の師匠ですか?
M:いや、訊いてくれば教えますけど、特に何か言うわけではないです。漫画っていうのは実際、自分で開拓していくべきものであって、人から教わることができない作業ですよ。ただ、仕事場に来てネーム描いてるのを見たりしてますけどね。

Q:父親の仕事姿を娘さんに見せられるというのはうらやましいですね。

 
根付とタロットとミルクコーヒー!

Q:デビュー以来、常に漫画を描き続けていらっしゃる先生ですが、そのパワーの秘訣は何ですか?
M:うーん、淡々とやってるからですかね。「作家は1本の芸術作品を描くのでなく、呼吸をするように描き続けなければならない」これはフランスの文豪が言った言葉。1本すごいものを描こうっていうのではなく、常に描いていく。それが本当の作家であると。私自身も毎日少しずつ描き続けているのが秘訣だと思います。

Q:プライベートでも、常にギャグを連発しているのですか?
M:お笑い芸人みたいですけど、そうじゃないですねぇ。別にギャグを考えてないです。ギャグっていうのは反射神経なんですよ。たとえば、セリフを描いてて、そのつながりの中で自然に、ぽーんと出てくるんですよ。面 白いと思ったギャグを普段の会話の中で意識して使おうとしても、ゼッタイ無理が生じますしね。そういう意味では『パタリロ!』なんかは常にその場、その場で作っていくんです。その中で「エッ、こんなこと言うの?」っていうのもありますよ。それがギャグになったり、思いがけない反応になったりするんですよね。パタリロっていうのは、ポンとたたくとスパーンと飛んでいくような、そんなキャラなんですよね。おい、どこまで行くんだみたいな(笑)。だいたいのレールを決めて後は勝手にやってくれってかんじですかね。自分の中のパタリロというワケではなくて、誰かいて私を通 して何か出してくるみたいな。多重人格というのではないんですけど。何でしょうね。これは私にもよくわからないんですが。

Q:もう、才能というしかないですね! 先生から見た最近のお笑い芸人なんかはどうでしょう…?
M:やっぱり、さんまさんとかたけしさんっていうのはスゴいなと思います。彼らは自分だけの芸で出てきて、今は他の人の面 白さを引き出すことでますますビッグになっている。そこがスゴいんですよね。

Q:そういえば、先生は落語もお好きだとか…。
M:ええ、志ん生師匠※4(↓解説へ)はこういう漫画を描きたいっていうお手本ですね。融通 無碍で、計算してるんだかしてないんだかわかんない。その代わり当たり外れも大きくて、つまんないときはホントつまんないんですけど、面 白い時はもう、世界中が吹っ飛ぶくらい面白かった。あと、生きてる人だと談志※5(↓解説へ)さんですか。

Q:志ん生に談志。先生の漫画のルーツがわかるような気がしますね。その他に、最近ハマっていることがあったら教えてください。
M:モノ集めが好きでね。今は根付(ねつけ)※6(↓解説へ)とか。これは若い人は知らないかなぁ。日本人より外国人の方がよく知ってます。古いのは高いんですけど現代根付はちょこちょこ集めてます。なんか集めてないと落ち着かないのかなぁ。集める過程が面 白いんですかね。次はアレを狙おうみたいなのが。

Q:では、唐突ですが、朝起きて一番最初に何をしますか?
M:まず、コーヒー飲みますね。それで、本読みます。すいません、フツーですね(笑)。今はタロットカードの本。これも調べてみるとすごい面 白い。人によっていろいろ順番が違うんですよ。なぜなんだろうって不思議ですね。なんか流派があるんじゃないかってね。表千家、裏千家みたいな。そういうことを考えながら本を読んでると面 白いですよ。

Q:常にアンテナを広くはっていらっしゃるのですね! ちなみにコーヒーはどんなものがお好きですか?
M:最近はペットボトルのミルクコーヒーが好きで(笑)。自分で入れるならインスタント。別 にこだわりはないです。コーヒーだとか、ワインだとか、ウンチク述べるやつは嫌いですね。そんなことやる暇があったら、もっと他に生産的なことやれってかんじですかね(笑)。

Q:では21世紀に向けて、ファンのみなさんへひとことお願いします。
M:まあ、とにかく、描きつづけますんで、よろしくお願いします!

 
※1:『三国志』全8巻 吉川英治著(講談社) 読んでいた場所に戻る
※2:『西遊記』全10巻 中野美代子訳(岩波文庫) 読んでいた場所に戻る
※3:1954年デビュー、『仮面ライダー』、『サイボーグ009』など多くの代表作がある。 読んでいた場所に戻る
※4:落語家・五代目古今亭志ん生。没後四半世紀を過ぎたが、いまだその人気は衰えない。 読んでいた場所に戻る
※5:落語立川流の家元・立川談志。 読んでいた場所に戻る
※6:「水戸黄門に印籠が出てきますけど、あの印籠を帯に挟みますよね。でも、ヒモだけだとスグ抜けちゃう。だから、クルミぐらいの大きさの彫刻を施した、おもりというか、滑り止め飾りというか、それを帯に挟んで引っかけておくと落ちないっていう。これは江戸時代に発達した、触ってますます面白味が出てくる彫刻ということで、世界的には非常にユニークなんです!」(魔夜先生談)
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